Stereolab - Chemical Chords (2008)
Stereolab 2008

Stereolab - Chemical Chords (2008)

Electronic Rock Experimental Indie Rock Synth-pop Space Rock

Stereolab『Chemical Chords』レビュー

Stereolabの『Chemical Chords』は、2008年にUKとUSでリリースされたアルバムで、4ADから出た作品だ。レーベル表記はCAD 2815。Stereolabは1990年にロンドンで結成されたグループで、Tim GaneとLaetitia Sadierを軸に、電子音楽、ロック、実験性、そしてポップなメロディを行き来してきた。2000年代後半のこの作品は、活動後期のまとまりを持った一枚として位置づけられる。

本作は、2007年にInstant Zeroで録音・ミックスされ、ベルリンのCalyx Masteringでマスタリングされた。ライナーノートにはBill Jones、Marc Fitoussi、Delphine Demilly、Emmanuel Marioへの謝辞が記されている。印刷インナー・スリーヴ付きで、デジタル・ダウンロード用クーポンも封入された2枚組LP仕様。さらに、各面のランオフ部分には削られた痕跡があり、物理盤としての作り込みも目を引く。

作品の輪郭

Stereolabの作品は、一般にリズムの反復、シンセの配置、英語とフランス語を行き来する歌、そして60年代以降のポップスやクラウトロックの要素が一つの流れにまとめられている点で知られる。『Chemical Chords』でも、その基本線は変わらない。だが、初期のラフさや長尺の展開よりも、曲ごとの輪郭がはっきりしていて、アルバム全体がコンパクトに進む印象が強い。

2008年という時期を考えると、Stereolabはすでに独自の語法を確立していた段階にある。新しさを競うより、積み重ねてきた要素を整理しながら提示する作りで、4ADのカタログの中でも比較的落ち着いた手触りを持つ。初期からのファンにとっては、グループの文法を再確認する一枚として聴こえるはずだ。

「Neon Beanbag」

冒頭を飾る「Neon Beanbag」は、この作品の性格を早い段階で示す曲だ。軽く跳ねるようなリズムと、整ったコーラスの重なりが先に立ち、メロディは細かく区切られながら前へ進む。Stereolabらしい反復の感覚はあるが、音の密度は過度に高くなく、各パートの役割が聴き取りやすい。

この曲では、Tim Ganeの編曲の組み立て方と、Laetitia Sadierの歌の直線的な運びが噛み合っている。大きく煽るのではなく、一定の速度で積み上げていくタイプの曲で、アルバムの導入として機能している。派手なフックで押すというより、細部の配置で引き込む構成。

「Three Women」

「Three Women」は、本作の中でも歌ものとしての印象が強い。旋律の流れが明快で、演奏はあくまで歌を支える方向に置かれている。Stereolabの作品では、しばしばリズムや音色のほうが前面に出るが、この曲ではフレーズの運びがはっきりしていて、アルバムの中で耳に残りやすい位置にある。

Laetitia Sadierのボーカルは、ここでも感情を大きく押し出すというより、一定の温度で言葉を置いていく。そのため、曲全体の印象は穏やかだが、構造はきちんと組まれている。Stereolabがポップソングの形式を保ちながら、自分たちの語法に寄せていくやり方がよく見える一曲だ。

「Kronos Quartet vs. Kronos Quartet」

タイトルからして目を引く「Kronos Quartet vs. Kronos Quartet」は、アルバムの中で少し実験寄りの視点を担う。とはいえ、露骨に前衛へ振れるのではなく、全体の流れの中に違和感なく置かれているのがStereolabらしい。音の組み合わせや間の取り方に、少しずらした感覚がある。

こうした曲が入ることで、『Chemical Chords』は単なる整ったポップ集に留まらず、グループが長く扱ってきた実験性も保持していることがわかる。ジャンル名で言えばElectronicやExperimentalに寄る側面だが、実際にはロックのバンド編成の上で、シンセとギターをどう噛み合わせるかという発想が中心にある。

アルバムの位置づけ

『Chemical Chords』は、Stereolabのディスコグラフィーの中では、活動後期の整理された一枚として見られることが多いタイプの作品だ。1990年代の代表作に比べると、楽曲の構造がより明快で、演奏の輪郭も整っている。反復とメロディのバランスという、彼らの長年の特徴が、比較的コンパクトな形でまとまっている。

同時代のインディー・ロックやシンセポップの文脈で見ても、Stereolabは単純に懐古的でも、流行追随でもない。クラウトロックやソフト・ロック、実験音楽の要素を、バンドの形式に落とし込んできた点で独特だ。『Chemical Chords』は、その方法論が成熟した段階の記録として読むことができる。

2008年のオリジナル盤は、4ADとDuophonic UHF Disksの関係のもとで出た作品で、UK盤・US盤ともに同年リリース。後年の再発と比べると、まずは当時の制作とパッケージングをそのまま伝える初出盤としての意味が大きい。Stereolabの音楽を、後期の一到達点として確認できるアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 Neon Beanbag
  2. A2 Three Women
  3. A3 One Finger Symphony
  4. B4 Chemical Chords
  5. B5 The Ecstatic Static
  6. B6 Valley Hi!
  7. C7 Silver Sands
  8. C8 Pop Molecule
  9. C9 Self Portrait With Electric Brain
  10. C10 Nous Vous Demandons Pardon
  11. D11 Cellulose Sunshine
  12. D12 Fractal Dream Of A Thing
  13. D13 Daisy Click Clack
  14. D14 Vortical Phonotheque

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