Stevie Nicks - Bella Donna (1981)
Stevie Nicks『Bella Donna』(1981) レコードレビュー
Fleetwood Macの顔として知られるStevie Nicksが、ソロ・アーティストとして最初に大きく存在感を示した作品が『Bella Donna』だ。1981年にUSのModern Recordsから登場したこのアルバムは、バンドの成功で培った知名度を背景にしながらも、Nicks自身の歌声、詞の視点、楽曲の並べ方を前面に出した一枚として聴ける。ロックを軸にしつつ、ポップ寄りの整理された音像が全体を支えていて、同時代のAORやポップ・ロックの空気もよく反映している。
この作品は、Stevie Nicksにとってソロ活動の出発点というだけでなく、Fleetwood Macの文脈から一歩離れて、自分の名前で成立する表現を示したアルバムでもある。プロデュース面ではJimmy Iovineが関わり、当時のロック作品らしい輪郭のはっきりした鳴りに仕上がっている。US盤としてのオリジナルは、Modern Recordsの流通盤らしい時代感を持ちながら、内袋やクレジットまで含めて1981年の制作物としてのまとまりが強い。
作品全体の印象
『Bella Donna』は、派手さで押し切るタイプではなく、曲ごとの役割が明確な構成に聴こえる。ギター、キーボード、コーラスの置き方が整理されていて、Stevie Nicksの声が常に中心に残る。低めの声域で言葉を置く場面と、サビで広がる場面の差がはっきりしていて、その抑揚がアルバム全体の流れを作っている。ロック作品でありながら、歌の細部を聴かせる作りという印象が強い。
レコードとして見ると、Specialty Records Corporationのプレスで、センター穴まわりのエンボスやランアウトの刻印など、当時のUS盤らしい仕様も興味深い。インナーには歌詞とクレジットが収録され、曲ごとの著作権表記も確認できる。アルバム単位で曲の由来や書かれた時期の差が見えやすく、ソングライターとしてのStevie Nicksを追う楽しさがある盤でもある。
「Stop Draggin' My Heart Around」
このアルバムの代表曲としてまず挙がるのが「Stop Draggin' My Heart Around」だろう。Tom Petty and the Heartbreakersの演奏を土台にしたこの曲は、Stevie Nicksのソロ作の中でも特に外向きの強さを持っている。リズムの刻みが明快で、ギターの応酬もはっきりしているため、アルバムの中ではかなりロック寄りの推進力を担う。
デュエットという形も含めて、Nicksの声が単独で完結するのではなく、相手の存在を受けながら輪郭を出していく曲になっている。Fleetwood Mac時代の人間関係の濃さをそのまま音にしたような緊張感があり、ポップな聴きやすさと、少し引っかかる感触が同居している。シングルとしての強さが、そのままアルバムの顔になっている。
「Leather and Lace」
もう一つの重要曲が「Leather and Lace」だ。こちらはTom Pettyとの共演曲ではなく、より内省的で、声の温度をそのまま聴かせるタイプのバラード。Hype stickerにも収録曲として大きく挙げられている通り、この曲はアルバムの中核に置かれている。男性的な強さと女性的な柔らかさ、という単純な対比では収まらず、関係の距離感を歌で追うような作りになっている。
演奏は控えめに整えられていて、メロディの伸びとフレーズの間が印象に残る。Stevie Nicksのソロ作では、こうした直線的すぎないラブソングが、感情を説明しすぎないまま残ることが多いが、この曲もその系譜にある。アルバム全体の中で、勢いよりも余韻を担う一曲だ。
「Edge of Seventeen」
「Edge of Seventeen」は、『Bella Donna』を語るうえで外せない代表曲だ。ギターの反復フレーズが印象的で、曲が進むほどに推進力が増していく。詞の内容は個人的な喪失の記憶に根差しているとされ、タイトルのフレーズとともに、感情の輪郭が少しずつ立ち上がる構成になっている。
この曲の特徴は、サビで大きく開くというより、同じモチーフを繰り返しながら熱量を積み上げる点にある。Stevie Nicksの声も、最初から強く張るのではなく、言葉を重ねるうちに強度を増していく。1980年代初頭のロックに多い華やかさとは少し違い、反復と持続で押す作りが、今聴いてもはっきり残る。
アルバムの中で見える曲の背景
収録曲には、クレジット面でも背景が見えるものが多い。たとえば「For Christine」はタイトルからしてChristine McVieへの献辞として知られる一曲で、Fleetwood Macの関係性を思わせる位置にある。「Think About It」はJane Pettyに触れた曲としてクレジットされ、「Kind of Woman」はWaylon JenningsとJessi Colterのために書かれた曲とされる。こうした個別の由来が並ぶことで、『Bella Donna』は単なるソロ・デビュー作以上に、周囲の人間関係や時代の空気を映した記録のようにも聴こえる。
また、インナー・スリーブには歌詞とクレジットがまとまっていて、曲ごとの出版情報も確認できる。A面とB面で曲調の振れ幅がありつつ、全体としてはStevie Nicksの歌を中心に据えた統一感がある。1981年のUSロック作品として、派手な演奏技術よりも、歌の個性と曲の配置で聴かせるタイプのアルバムだ。
まとめ
『Bella Donna』は、Stevie Nicksがソロでどこまで自分の世界を作れるかを明確に示した一枚だ。Fleetwood Macの延長線上にありながら、声の置き方、詞の距離感、代表曲の強さで、個人名義の作品として成立している。ロック、ポップ・ロックの枠の中で、歌い手としての輪郭がよく見えるアルバムとして受け取れる。
USオリジナル盤は、1981年当時のModern Recordsのリリースとしての資料性もある。『Stop Draggin' My Heart Around』『Leather and Lace』『Edge of Seventeen』という核になる曲を軸に、Stevie Nicksのソロ初期を知るうえで重要な位置を占める作品だ。
トラックリスト
- A1 Bella Donna 5:18
- A2 Kind Of Woman 3:08
- A3 Stop Draggin' My Heart Around 4:02
- A4 Think About It 3:33
- A5 After The Glitter Fades 3:27
- B1 Edge Of Seventeen 5:28
- B2 How Still My Love 3:51
- B3 Leather And Lace 3:55
- B4 Outside The Rain 4:17
- B5 The Highwayman 4:49
動画
- Stevie Nicks & Don Henley - Leather And Lace (Official Audio)
- Stevie Nicks - Stop Draggin' My Heart Around (Official Music Video)
- Bella Donna (2016 Remaster)
- Kind of Woman (2016 Remaster)
- Think About It (2016 Remaster)
- How Still My Love (2016 Remaster)
- Outside the Rain (2016 Remaster)
- The Highwayman (2016 Remaster)