Strawbs - From The Witchwood (1971)
Strawbs『From The Witchwood』解説
Strawbsの『From The Witchwood』は、1971年に発表されたアルバムで、英フォーク・ロックからプログレッシブ・ロックへと歩みを進めていた時期の作品だ。バンドは1964年にデイヴ・カズンズを中心に結成され、もともとはブルーグラス寄りの編成から始まり、その後フォーク、フォーク・ロック、そしてプログレッシブ・ロックへと音楽性を広げていった。そうした流れの中で聴くと、この作品は「変化の途中」にあるStrawbsの姿をよく示す1枚として見えてくる。
このUS盤はA&M RecordsのSP 4304。A&Mはハーブ・アルパートとジェリー・モスによって設立されたレーベルで、1970年代初頭にはフォーク、ロック、ソフトなポップスまで広く扱う大手として存在感を持っていた。Strawbsのような英国のバンドがA&Mから米国盤を出していた事実も、この時代のレーベルの守備範囲の広さを感じさせる。
作品全体の位置づけ
『From The Witchwood』は、Strawbsがフォーク的な語り口を保ちながら、より構築的なロックへ踏み込んでいく段階の作品として捉えやすい。バンドの後年を代表する大きなヒット「Part Of The Union」はまだ先だが、ここにはすでに、メロディを前に置きつつ楽曲展開で聴かせる姿勢がある。英国のフォーク・ロックの流れを引き継ぎながら、同時代のプログレッシブ・ロックとも接点を持つ、その中間地帯の記録といえる。
Strawbsは後にRick Wakemanが在籍していたことでも知られるが、この時期の作品を聴くと、まだバンド全体の色合いが強く、個々の演奏が過度に前面へ出るというより、曲の流れの中で役割を果たしている印象がある。フォーク寄りの語りと、ロック・バンドとしての推進力が同居しているところが、このアルバムの核だろう。
注目曲: “The Hangman And The Papist”
このアルバムを語るうえでまず触れたいのが“The Hangman And The Papist”だ。Strawbsらしい物語性のある書き方が前に出る曲で、楽曲の進み方にも緊張感がある。フォーク由来の題材を扱いながら、単純なアコースティック作品に収まらず、ロック・バンドとしての厚みを加えていく作りが目立つ。歌詞の内容を追いながら聴くタイプの曲で、演奏はその語りを支える役回りに徹している。
実際に聴くと、派手な転調や技巧で押す曲ではないが、節ごとの空気の切り替えがはっきりしている。静かな導入から、曲が進むにつれて音の密度が増していく感触があり、Strawbsがこの時期にどこへ向かっていたのかが伝わりやすい。フォーク・ロックの文脈に置いても、プログレッシブ・ロックの文脈に置いても、どちらでも読める曲だ。
注目曲: “Benedictus”
“Benedictus”は、このアルバムの中でも特に知られやすい楽曲だ。宗教的な響きを持つタイトルどおり、曲全体に厳かな雰囲気があり、Strawbsのレパートリーの中でもやや重心の低い位置にある。フォーク・ロックの柔らかさだけではなく、プログレッシブ・ロックで重視される構成感や、楽曲のドラマ性が強く出るタイプの曲といえる。
聴きどころは、歌と演奏が拮抗しながら進むところだろう。メロディは耳に残りやすい一方で、曲の空気は軽く流れていかない。音数をむやみに増やさず、各パートが必要な分だけ置かれているため、全体の印象が締まっている。Strawbsが単なるフォーク・バンドではなく、1970年代初頭の英国ロックの中で独自の重さを持っていたことがわかる一曲だ。
アルバムの聴こえ方
『From The Witchwood』は、派手な即効性よりも、曲ごとの語り口や配置で引き込むアルバムだ。フォーク・ロックの親密さと、プログレッシブ・ロックの組み立ての両方が見えるが、どちらか一方に振り切ってはいない。そのため、全体としては落ち着いた印象を保ちながら、ところどころで緊張感のある場面が顔を出す。
1971年という年は、英国ロックの中でフォークとプログレが近い距離にあった時期でもある。Fairport ConventionやJethro Tullの一部作品、あるいは同時代の多くの英国バンドと比べても、Strawbsは歌を中心に据えたまま構成を広げていく点に特徴がある。このアルバムもその延長線上にあり、のちのヒット曲へつながるバンドの基礎が見える作品として整理できる。
US盤としてのポイント
今回のUS盤はA&M Recordsからのリリースで、1971年当時の同社のカタログの中に置くと、英国ロックの輸入作品としての性格がはっきりしている。ラベル番号SP 4304という表記も、当時のA&Mのアルバム群の中での位置を示すものだ。オリジナルの1971年作として扱うと、この時期のStrawbsの音楽的な立ち位置を確認できる盤でもある。
『From The Witchwood』は、Strawbsのキャリアを追ううえで、フォーク・ロックからプログレッシブ・ロックへ移る途中の輪郭が見える1枚だ。ヒット曲中心のアルバムではないが、バンドの語り口、構成、静かな緊張感がまとまっていて、1970年代初頭の英国ロックの空気をよく映している。
トラックリスト
- A1 A Glimpse Of Heaven 3:50
- A2 Witchwood 3:20
- A3 Thirty Days 2:50
- A4 Flight 4:25
- A5 The Hangman And The Papist 4:10
- B1 Sheep 4:15
- B2 Canon Dale 3:40
- B3 The Shepherd's Song 2:50
- B4 In Amongst The Roses 3:45
- B5 I'll Carry On Beside You 3:10
動画
- A Glimpse Of Heaven
- Witchwood
- Thirty Days
- Flight
- The Hangman And The Papist
- Sheep
- Cannondale
- The Shepherd's Song
- In Amongst The Roses
- I'll Carry On Beside You