Suede - Coming Up (1996)
Suede『Coming Up』――バンドの顔つきが一段と前に出た1996年作
Suedeの『Coming Up』は、1996年にUKのNude Recordsからリリースされた3作目のスタジオ・アルバムだ。ブレット・アンダーソンの歌と、楽曲の輪郭をはっきり描くギター・ロックを軸にした作品で、前2作で強かった陰影のある感触から、より直進的で、曲そのものの強さを前に出した内容として知られている。いわゆるブリットポップ期の空気の中で登場しつつ、単なる時流への便乗ではなく、Suedeらしい芝居がかった歌と、鋭いメロディ、都市的な感触を保っているのがこの盤の大きな特徴だ。
バンドにとっては、ギタリストのバーナード・バトラー脱退後、リチャード・オークスを迎えた編成で作られた最初のアルバムでもある。つまり、グループの体制が変わったあとに、どこまでSuedeらしさを維持できるかが問われた時期の作品でもある。結果としては、過去作の延長線にありながら、よりポップで、より輪郭のくっきりしたアルバムとしてまとまっている印象だ。
作品の位置づけ
1990年代半ばの英国ロックは、OasisやBlurを中心とするブリットポップの大きな流れがあったが、Suedeはその中でも少し別の場所にいた存在だ。大衆性のあるメロディを持ちながら、歌詞や歌い方にはグラム・ロック的な演劇性が残り、音の作りもどこか冷たい質感を持っている。『Coming Up』は、そのSuedeの個性をより分かりやすい形に整えたアルバムといえる。
実際に聴くと、アルバム全体のテンポ感が速く、曲の立ち上がりが早い。前作までにあった緊張感は残しつつも、サビに入ったときの抜けのよさがはっきりしていて、ライヴで鳴らしたときの像が見えやすい作りだ。ブレット・アンダーソンのボーカルも、ささやくような部分から、急に感情を押し出す場面まで振れ幅が大きい。スタジオ盤としての精密さと、バンドとしての勢いが同居している。
「Trash」――アルバムを代表する入口
冒頭を飾る「Trash」は、このアルバムを語るうえで外せない曲だ。軽快なギターのフレーズで始まり、すぐにサビのフックへ入る構成で、Suedeの中でもかなり親しみやすい部類に入る。歌詞の細部は皮肉を含みつつも、音のほうは明快で、アルバム全体の方向を最初の数十秒で示している。
この曲はシングルとしても大きく機能していて、『Coming Up』が前2作より広い層に届いたことを象徴する一曲になっている。Suedeの持つ退廃感や都会的な空気を残しながら、リフとコーラスの勢いで押し切る作りで、当時の英国ロックの中でもかなり前に出た存在感がある。
「Beautiful Ones」――跳ねるリズムと鋭い言葉
「Beautiful Ones」も、このアルバムを代表する重要曲だ。リズムの跳ね方がはっきりしていて、ギターとボーカルの噛み合いがよい。曲の進行はシンプルだが、ブレット・アンダーソンの歌い回しが細かく変化するため、単純なポップソング以上の緊張感が出ている。
タイトルから受ける印象よりも、実際にはかなり切れ味のある楽曲で、華やかさの裏にある攻撃性が前に出る。アルバムの中では、Suedeがグラム・ロック由来のきらびやかさを、90年代的なギターバンドの文法へ落とし込んだ例として聴ける。
「Saturday Night」――ヒット曲としてのわかりやすさ
「Saturday Night」は、アルバムの中でも特にシングルらしい推進力を持つ曲だ。タイトル通りの即効性があり、メロディの運びも分かりやすい。夜の街を歩くような感覚と、少し焦りを含んだ高揚感が同時にある。
この曲が入っていることで、『Coming Up』は単に勢いのあるギターロック盤というだけでなく、ポップ・ソング集としての性格も強く見えてくる。アルバム全体の中では、リスナーを引っ張る役割がかなり大きい。
音の作りと盤としての仕様
このUK盤はNude RecordsのNUDE 6LPで、ジャケットはThe Apartmentによるデザイン。内袋には歌詞が印刷されたグロッシーな仕様で、Made in EEC表記がある。新しい個体のシュリンクには「trash」「beautiful ones」「saturday night」を収録していることを示すハイプ・ステッカーが付く場合がある。盤としては、当時のオリジナル・リリースらしい素直な作りで、作品の性格をそのまま伝えるタイプだ。
Suedeのディスコグラフィーの中では、初期の緊張感を保ちながらも、楽曲の強さをはっきり前に出した中核作と見られることが多い。バンドの体制変化を経たうえで、ポップさと鋭さの両方を残した点に、このアルバムの意味がある。ブリットポップ期の一枚としてだけでなく、Suedeというバンドの輪郭を再確認できる作品としても印象に残る。
トラックリスト
- A1 Trash 4:06
- A2 Filmstar 3:25
- A3 Lazy 3:19
- A4 By The Sea 4:15
- A5 She 3:38
- B1 Beautiful Ones 3:50
- B2 Starcrazy 3:33
- B3 Picnic By The Motorway 4:45
- B4 The Chemistry Between Us 7:04
- B5 Saturday Night 4:32
動画
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Suede - Beautiful Ones (Official Video)
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Suede - Lazy (Official Video)
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Suede - She (Live in Germany 1997)
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She (Remastered)
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Suede - Trash
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Suede - Saturday Night
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Suede - Filmstar