やまがたすみこ = Sumiko Yamagata - エメラルド・シャワー = Emerald Shower (1978)
Sumiko Yamagata 1978

やまがたすみこ = Sumiko Yamagata - エメラルド・シャワー = Emerald Shower (1978)

Pop Funk / Soul Latin Vocal Ballad Bossa Nova Kayōkyoku City Pop

やまがたすみこ『エメラルド・シャワー』について

やまがたすみこ『エメラルド・シャワー』は、1978年に日本で発表された作品。フォークやポップの持ち味を土台にしながら、ラテン、ファンク/ソウル、ボサノヴァ、歌謡曲、シティ・ポップの感触を横断する内容で、70年代後半の日本のポップスの空気がよく出ている一枚だ。やまがたすみこは、シンガーソングライターとしての顔と、スタジオ・ミュージシャンとしての活動歴を持つ人物で、この時期の作品では歌声そのものの透明感と、アレンジの洗練が前面に出る。

本作は1977年11月から12月にかけて日本コロムビアのスタジオで録音・再ミックスされたとインサートに記されている。つまり、1978年という時代の空気を反映しつつ、制作の手触りは比較的具体的に追える作品でもある。オビとインサートが付属する盤で、当時の国内盤らしいパッケージングも含めて楽しめる内容だ。

作品の位置づけ

やまがたすみこは、1970年代の日本の女性シンガーの中でも、フォーク寄りの素朴さと、ポップスとしての整った歌唱をあわせ持つ存在として知られる。『エメラルド・シャワー』は、そのキャリアの中でも、より都会的な響きへ寄った印象のある作品だ。タイトルから受けるイメージどおり、軽やかさと艶のある質感が同居していて、同時代のシティ・ポップやライトメロウの文脈にも置きやすい。

ただし、単に都会派へ振り切ったアルバムというより、歌謡曲の親しみやすさや、ボサノヴァ的な揺れ、ファンク由来のリズム感が自然に溶け込んでいるところが特徴になる。派手に押し出すタイプではなく、声の輪郭と曲の設計で聴かせる作り。そこにこの作品の落ち着きがある。

サウンドの印象

聴き進めると、まず耳に入るのはやまがたすみこの声の抜けの良さだ。高音域に無理がなく、フレーズの置き方も丁寧で、メロディの起伏をなぞるだけで曲の表情が変わっていく。録音年代を考えると、音作りは過度に厚くなく、各楽器の役割が見えやすい。ベースやギターが前に出る場面では軽いグルーヴが立ち、バラードでは歌を邪魔しない空間が確保される。

この時期の日本のポップスにありがちな、洋楽要素の導入をわかりやすく見せる作りではあるが、そこに不自然さは少ない。ラテンやボサノヴァの感触も、リズムの引用というより、曲全体の呼吸として入っている印象が強い。結果として、耳当たりは柔らかいのに、単調にはならない。

注目したい曲の流れ

タイトル曲「エメラルド・シャワー」は、この作品の核として受け取られやすい。曲名のイメージに沿って、きらめきのある音像と、流れるようなボーカルが結びつくタイプの楽曲だ。ここでは、声の明るさだけでなく、語尾の処理や息の抜き方が効いてくる。メロディを大きく見せるのではなく、細かなニュアンスで印象を残すところが、この曲の聴きどころになる。

また、アルバム全体を見たときに、この曲は単独で立つというより、作品の方向性を示す役割が大きい。歌謡曲的なわかりやすさを保ちながら、同時に当時の都会的なポップスの感覚へ接続している。派手な展開で押すのではなく、音の配置と歌の温度でまとめる作り。やまがたすみこの魅力が、もっとも端的に伝わる曲のひとつと言えそうだ。

もうひとつ、バラード寄りの曲では、彼女の歌唱の安定感がはっきり出る。音数が少ない場面ほど、声の揺れや息づかいが目立つが、この作品ではその部分が崩れず、むしろ曲の輪郭を整える方向に働いている。感情を大きく誇張しないぶん、言葉の意味が前に出るのも特徴だ。

アップテンポ寄りの楽曲では、リズムの跳ね方が作品の表情を変える。ファンクやラテンの要素が入るといっても、強い主張ではなく、あくまでポップスの枠の中で機能している。ここでのやまがたすみこは、リズムに乗せて声を軽く運ぶタイプで、過剰なエモーションよりも、曲の流れを優先する歌い方が印象に残る。

同時代の文脈で見ると

1978年の日本では、フォークからポップス、そしてシティ・ポップへと接続する流れが広がっていた。『エメラルド・シャワー』はその中で、女性ボーカル作品としての品の良さと、都会的なアレンジ感を両立させた位置にある。山下達郎や大貫妙子、南佳孝といった同時代の洗練されたポップスと並べて語られることがあるのも、この作品が持つ空気感ゆえだろう。ただし、やまがたすみこの場合は、より歌謡曲との距離が近く、親しみやすいメロディの感触が強い。

その意味で、『エメラルド・シャワー』は、ジャンル名で切り分けるより、70年代末の日本のポップスがどのように洋楽感覚を取り込んでいたかを示す一枚として見るとわかりやすい。声、編曲、録音のバランスがきれいに揃った作品で、アルバム全体に統一感がある。

まとめ

『エメラルド・シャワー』は、やまがたすみこの歌声を軸に、ラテン、ファンク、ボサノヴァ、歌謡曲、シティ・ポップの要素が自然に組み合わさった1978年の作品だ。録音時期が明記されていることもあり、制作の時代性を掴みやすい。派手な一発で押すというより、曲ごとの表情と歌の置き方で印象を残すタイプのアルバムで、当時の日本のポップスの幅を感じさせる内容になっている。

やまがたすみこのキャリアの中でも、フォーク的な素朴さから都会的なポップスへと視線が広がる時期の一作として見てよさそうだ。タイトル曲を中心に、声とアレンジの距離感を楽しめる作品。

トラックリスト

  1. A1 ほろ酔いイヴ = Horoyoi Yve 5:15
  2. A2 にせドン・ファン = Nise Don Juan 3:50
  3. A3 雨上がりのサンバ = Ameagarino Samba 3:15
  4. A4 フォー・エバー = Forever 4:18
  5. A5 小さなヴァカンス = Chiisana Vacance 4:53
  6. B1 あの日のように微笑んで = Anohi No Youni Hohoende 3:19
  7. B2 イニシャルは”K" = Initial, "K" 3:45
  8. B3 渚のエピローグ= Nagisa No Epilogue 3:26
  9. B4 今からひとり = Imakara Hitori 3:57
  10. B5 マイ・ハート = My Heart 4:17

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