Suzanne Vega - Solitude Standing (1987)
Suzanne Vega 1987

Suzanne Vega - Solitude Standing (1987)

Rock Pop Rock

Suzanne Vega『Solitude Standing』について

Suzanne Vegaの『Solitude Standing』は、1987年にA&M Recordsから出た2作目のアルバムである。ニューヨークを拠点に活動していた彼女のソングライターとしての輪郭が、前作よりもはっきり見えてくる作品で、アコースティック寄りの編成と都会的な視点を持つ歌詞が全体を通して続いていく。ジャンル表記としてはRock、スタイルとしてはPop Rockに分類されているが、実際にはフォークの語り口や室内楽的な静けさも強く感じられる内容だ。

この盤は1987年4月27日にアメリカで初回プレスされたもので、A&M RecordsのUS盤。高品質の半透明ビニールでプレスされており、強い光にかざすと透けて見える仕様になっている。録音はBearsville Sound StudiosやRPM Sound Studiosを中心に、A&M Recording Studiosなど複数のスタジオで行われ、最終的にはA&M Recording Studiosでミックスされている。Direct Metal MasteringがPrecision Lacquersで施されている点も、この時期のUS盤らしい記録だ。

作品の位置づけ

『Solitude Standing』は、Suzanne Vegaの名前を広く知らしめた作品として語られることが多い。前作で示した静かな語りと観察眼を保ちながら、ここでは曲ごとの輪郭がより明確で、アルバムとしての流れもよく整っている。ニューヨークの街を歩くような感覚、個人の内面を淡々と見つめる視線、その両方が同居しているのが印象的だ。

同時代の女性シンガーソングライターと比べると、メロディの押し出しよりも言葉の配置が前に出るタイプで、Joni MitchellやJoan Baezの系譜を思わせる面がある一方、80年代後半の制作感覚もきちんと入っている。派手な演出に寄らず、曲そのものを積み上げていく作りで、そこがこのアルバムの持ち味になっている。

注目曲「Luka」

このアルバムを語るうえで外せないのが「Luka」だろう。穏やかなメロディで進むが、内容はかなり重い。曲は一人称の語りで進み、日常のなかにある痛みを、説明しすぎないまま伝えていく。アレンジは抑制が効いていて、歌詞の言葉が前に出るように組まれている。

実際に聴くと、サビで感情を大きく開くというより、同じ温度のまま話し続けるような歌い方が印象に残る。そこがこの曲の強さで、悲劇を劇的に見せるのではなく、静かな距離感のまま届かせる。ポップソングとして成立しながら、内容はかなり切実で、Suzanne Vegaの作家性を広く知らしめた代表曲として扱われるのも納得できる。

注目曲「Tom's Diner」

もうひとつの代表曲が「Tom's Diner」。もともとはアカペラで書かれた曲として知られ、このアルバムでは短い断片のような形で収録されている。日常の風景を切り取るだけのようでいて、何気ない観察の積み重ねが曲の芯になっている。歌詞の中の小さな動きや視線の置き方が、そのまま街の空気を作っている。

この曲はのちに別の形で大きく注目されるが、アルバム本編で聴くと、あくまで『Solitude Standing』という作品全体の中の一曲として機能しているのがわかる。派手な展開はないが、耳に残るのはメロディよりも言葉の運びで、Suzanne Vegaの書き手としての特性がよく出ている。

収録曲とエピソード

収録曲には、A面に1982年から1987年にかけて書かれた曲が並び、B面にも1978年の作品を含めて幅広い時期の素材が入っている。A5「Gypsy」はPaul Eluardの詩「Juan Gris」に着想を得た曲で、詩と音楽の距離が近いこのアルバムらしい一曲だ。こうした背景を見ると、『Solitude Standing』は単なるヒット作ではなく、Suzanne Vegaが蓄えてきた曲の断片を、ひとつのアルバムとして整理した記録でもある。

演奏にはMitch Easterが参加しており、彼はI.R.S.側のクレジットで記載されている。さらに、Suzanne Vega本人はGuildのギター、D'Addarioの弦、Beyerのマイクを使用していたことが明記され、バンド側もYamaha、Akai、Zildjianなどの機材協力に感謝を示している。制作の細部まで含めて、当時のUSポップ・ロック作品の実務的な空気が伝わってくる。

聴きどころ

このアルバムの聴きどころは、歌詞の情報量と音数の少なさのバランスにある。音を詰め込みすぎず、声とギター、そして必要なだけの伴奏で曲を保たせる作りなので、各曲の輪郭が崩れにくい。派手さは控えめだが、曲の配置や語りの密度で最後まで引っ張る構成で、1987年という年のポップ・ロックの中でもかなり個性がはっきりした作品になっている。

US初期盤という点でも、A&Mの品質管理が見える1枚だ。レーベル表記やプレス工場の記録まで残っているため、作品そのものだけでなく、当時のリリース環境を含めて楽しめる。Suzanne Vegaの初期キャリアを知るうえで、そして「Luka」や「Tom's Diner」の原点をたどるうえで、重要な位置にあるアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Tom's Diner 2:08
  2. A2 Luka 3:51
  3. A3 Ironbound / Fancy Poultry 6:17
  4. A4 In The Eye 4:12
  5. A5 Night Vision 2:45
  6. B1 Solitude Standing 4:34
  7. B2 Calypso 4:12
  8. B3 Language 3:54
  9. B4 Gypsy 4:01
  10. B5 Wooden Horse (Caspar Hauser's Song) 5:09
  11. B6 Tom's Diner (Reprise) 2:39

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