Tangerine Dream - Flashpoint (Original Motion Picture Soundtrack) (1984)
Tangerine Dream『Flashpoint (Original Motion Picture Soundtrack)』について
Tangerine Dreamの『Flashpoint (Original Motion Picture Soundtrack)』は、1984年に登場した映画音楽アルバムである。作品名のとおり、同名映画のために制作されたサウンドトラックで、電子音楽を軸にしながらも、劇伴としての機能が前面に出た内容になっている。Tangerine Dreamといえば、ベルリン・スクールの代表格として知られ、シーケンサーを使った反復的な構成や、映像と結びついた音作りで評価されてきたグループだが、この時期にはすでに映画音楽の仕事が重要な活動の柱になっていた。『Flashpoint』も、その流れの中にある1枚である。
このアルバムはUS盤で、EMI Americaからのリリース。録音はドイツで行われている。レーベル面では、EMI Americaの1980年代前半らしい時期の作品として位置づけられ、同社が英国系アーティストの米国展開を担っていた流れの中にある。盤としては1984年のオリジナル期のものなので、後年の再発盤とは切り分けて考えたいタイトルだ。
1980年代前半のTangerine Dreamの位置づけ
Tangerine Dreamは、1970年代中盤の『Phaedra』や『Rubycon』のような作品で、長尺のシンセサイザー・サウンドを広く知られる存在になった。その後、編成や作風は少しずつ変化し、1980年代に入ると映像作品との関わりがさらに増える。『Thief』『Risky Business』『Firestarter』など、映画音楽の仕事はバンドの重要な顔になっていくが、『Flashpoint』もその系譜にある。バンドのアルバムというより、映像の時間軸に沿って組まれた音の記録として聴く性格が強い。
同時代の電子音楽やサウンドトラックと比べると、ここではシンセの質感を前面に出しつつ、リズムやフレーズを明確に置いていく作りが目立つ。クラフトワークのような機械的な厳密さとも、アンビエント寄りの静けさとも少し違い、場面転換に合わせて推進力を持たせる書法が中心である。Tangerine Dreamの映画音楽が持つ実用性と、独立した楽曲としての聴き応え、その両方が見えるタイプの作品だ。
音の印象
全体を通して、シンセのレイヤー、反復するリズム、短く区切られたモチーフが軸になる。大きく展開していくというより、場面ごとに必要な温度や速度を保ちながら進む構成で、映像がなくても曲の切り替わりが追いやすい。Tangerine Dream特有の、冷たさだけに寄らない電子音の扱いもここでは確認できる。無機質なだけではなく、メロディの輪郭を残したまま場面を支える感触である。
また、1980年代前半の彼ららしい、シーケンスを土台にした推進力もきちんとある。派手なロック編成に寄りすぎず、かといって完全な環境音楽にも傾かない。その中間にある立ち位置が、このサウンドトラックの特徴と言えそうだ。映画音楽としての機能性と、Tangerine Dreamらしい電子音の個性が同居している。
注目曲について
この作品でまず目を向けたいのは、映画の主題に関わる主要モチーフ群である。Tangerine Dreamのサウンドトラックでは、単独で大きく主張する代表曲というより、繰り返し現れるフレーズが作品全体を統一する役割を担うことが多い。『Flashpoint』でも、その考え方がはっきりしている。短いフレーズを反復しながら、音色やリズムの密度を少しずつ変えていく作りで、映像の緊張感を保つための設計が見える。
もうひとつの聴きどころは、静かな場面を支えるアンビエント寄りのトラック群である。ここでは前面に出るビートよりも、背景を埋める持続音や和声の移ろいが重要になる。Tangerine Dreamはこうした場面で、空間の広がりを演出するのがうまい。音数を増やしすぎず、必要な情報だけを置くことで、映像の余白まで含めて聴かせる。サントラとしての役割がそのまま作品の印象になっている。
盤の情報とコレクション面
このUS盤はEMI AmericaのST-17141規格で、ラベルは1980年代前半の同レーベルらしい時期のものにあたる。リリースノートには、プロモーション用と思われる金色のスタンプ付き個体があること、またランアウトにはエッチングとスタンパー刻印が混在していることが記されている。こうした点からも、当時の米国市場向けの流通盤として扱われていた様子がうかがえる。
オリジナル期の盤として見ると、『Flashpoint』はTangerine Dreamが映画音楽の領域で存在感を固めていった時代の1枚である。70年代の長大な電子組曲とは少し違い、映像に寄り添うための明確な構成が中心だが、その中にも彼ららしい反復の美学とシンセサイザーの設計感が残っている。Tangerine Dreamのディスコグラフィーの中では、サウンドトラック路線が本格化した1980年代前半を示す作品として捉えやすい。
トラックリスト
- A1 Tangerine Dream Going West 4:10
- A2 Tangerine Dream Afternoon In The West 3:35
- A3 Tangerine Dream Plane Ride 3:30
- A4 Tangerine Dream Mystery Tracks 3:15
- A5 Tangerine Dream Lost In The Dunes 2:40
- B1 Tangerine Dream Highway Patrol 4:10
- B2 Tangerine Dream Love Phantasy 3:40
- B3 Tangerine Dream Mad Cap Story 4:00
- B4 Tangerine Dream Dirty Cross Roads 4:20
- B5 The Gems Flashpoint 3:47