The Allman Brothers Band - Win, Lose Or Draw (1975)
The Allman Brothers Band 1975

The Allman Brothers Band - Win, Lose Or Draw (1975)

Rock Blues Rock Southern Rock

The Allman Brothers Band『Win, Lose Or Draw』

The Allman Brothers Bandの『Win, Lose Or Draw』は、1975年に発表された通算6作目、スタジオ・アルバムとしては5作目の作品。アメリカ南部のロックとブルースを土台にしてきたバンドが、70年代中盤の時点でどこにいたのかを示す一枚で、Macon, Georgiaを拠点に育ったこのグループの歩みを追ううえでも重要な位置づけにある。日本盤はCapricorn RecordsのSWX-6208で、歌詞は英語と日本語を併記したダブル・リリック・シート仕様。国内で聴くには親切な作りになっている。

The Allman Brothers Bandは、デュアン・オールマンとグレッグ・オールマンを軸に1969年に始動したバンドで、サザン・ロックの代表格として語られることが多い。ツイン・ギターの絡み、長めの展開、ブルースの語法を軸にした演奏は、この時代のロックの中でも独特の立ち位置にある。『Win, Lose Or Draw』が出た1975年は、デュアンの死後しばらく時間が経ち、バンドが編成面でも曲作りでも再編を続けていた時期。そうした背景を踏まえると、このアルバムは単なる中期作ではなく、グループの体制が変わったあとに残された“現在地”の記録として聴ける。

作品の輪郭

このアルバムでは、これまでの作品にあった長尺の即興性だけでなく、曲の構成を引き締めた印象がある。とはいえ、演奏の芯にあるのはあくまでバンドならではの合奏感で、ギター、オルガン、リズム隊が前へ出たり引いたりしながら、曲の流れを作っていく。Southern Rock、Blues Rockという分類がそのまま当てはまる内容だが、単純なジャンルの並列では収まりきらない、演奏主体のアルバムという印象が強い。

Capricorn Recordsからのリリースという点も、この時代の空気をよく伝える。Capricornはアメリカ南部のロックを支えたレーベルで、Allman Brothers Bandとの結びつきは非常に深い。1975年当時の同レーベル作品群を見ても、同系統のバンドやシンガー・ソングライターが多く、いわば“南部のロックの拠点”として機能していた。その中で本作は、レーベルの顔役にふさわしい存在感を持つ。

注目曲「Crazy Love」

よく知られている曲としてまず挙げやすいのが「Crazy Love」。この曲は比較的コンパクトな作りで、バンドの中にあるメロディ志向が前に出る。派手な展開で押し切るというより、歌とリフのまとまりで聴かせるタイプで、アルバム全体の中では入り口として機能しやすい。オールマン・ブラザーズといえば長いジャムを思い浮かべる人も多いが、この曲ではそのイメージを少し横に置いて、曲そのものの輪郭をはっきり見せている。

演奏面では、各パートが過不足なく配置されていて、前に出る音が次々と入れ替わる。ブルース由来の粘りは残しつつ、過度に引っ張らない進行が印象的で、1975年時点のバンドが“曲をまとめる”方向にも意識を向けていたことがうかがえる。ライヴでの伸縮を思わせる部分はありながら、スタジオ録音としての整理も効いている。

注目曲「Can't Lose What You Never Had」

もう一つの重要曲が「Can't Lose What You Never Had」。タイトルどおり、感覚的な強さよりも、言葉の持つ重みで引っ張るタイプの曲だ。グレッグ・オールマンの声質と相性がよく、淡々と進むようでいて、要所でしっかり熱を帯びる。サザン・ロックの中でも、リズムの揺れやコードの動きで聴かせる作りが目立ち、派手さよりも持続力のある1曲になっている。

この曲を聴くと、The Allman Brothers Bandが単なるギター・バンドではなく、歌の重心を持ったロック・バンドでもあったことがよくわかる。ブルース・ロックの文脈に置くと、感情を露骨に押し出すのではなく、演奏の密度で気分を作るあたりがこのバンドらしい。収録曲の中でも、アルバムの空気を象徴する一曲として挙げやすい。

アルバムの位置づけ

『Win, Lose Or Draw』は、初期の代表作に比べると、即興の大きさで圧倒するタイプではないが、そのぶん1975年のバンドの輪郭が見えやすい。デュアン・オールマン在籍時の伝説的な熱量をそのまま追うのではなく、残されたメンバーが曲と演奏をどう組み直すかに目が向く。そういう意味で、全盛期の延長線上というより、変化を受け入れながら続いていくバンドの記録として読むほうが自然だろう。

同時代の南部ロックを並べて考えると、Lynyrd Skynyrdのような直線的なロック感覚とも、Marshall Tucker Bandのようなカントリー色の強さとも少し違う。The Allman Brothers Bandは、どちらかといえばブルースの含みを保ったまま、演奏の呼吸で曲を組み立てる側にある。本作でもその特徴は変わらず、派手な看板曲だけでなく、アルバム単位での流れに耳を向けたくなる内容になっている。

日本盤としての見どころ

日本盤は1975年リリースのオリジナル時点での作品をそのまま国内に紹介したもので、歌詞カードが英日併記になっているのが実用的だ。サザン・ロックは歌詞の言い回しや語感も重要なので、こうした仕様は曲の理解に役立つ。レーベル面ではCapricornのロゴが時代性をはっきり示し、70年代アメリカ南部ロックの空気をそのままパッケージした一枚として眺められる。

『Win, Lose Or Draw』は、The Allman Brothers Bandの歴史の中で、勢いだけではない成熟と再編の時期を映したアルバム。代表曲を中心に聴いても、アルバム全体で追っても、バンドの演奏の組み立て方が見えてくる作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Can't Lose What You Never Had 5:46
  2. A2 Just Another Love Song 2:40
  3. A3 Nevertheless 3:28
  4. A4 Win, Lose Or Draw 4:43
  5. A5 Louisiana Lou And Three Card Monty John 3:47
  6. B1 High Falls 14:22
  7. B2 Sweet Mama 3:30

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