The Awakening - Hear, Sense And Feel (1972)
The Awakening『Hear, Sense And Feel』(1972)レビュー
The Awakeningの『Hear, Sense And Feel』は、1972年にUSのBlack Jazz Recordsから出た作品で、同レーベルのカタログの中でも、スピリチュアル・ジャズとソウル・ジャズの接点をはっきり示す1枚として知られている。参加メンバーはAri Brown、Steve Galloway、Ken Chaney、Frank Gordon、Reggie Willis、Arlington Davis, Jr.。Black Jazz Recordsは1971年にオークランドで始まったレーベルで、黒人ミュージシャンを前面に出しながら、ファンクやフリー・ジャズ、ソウル・ジャズまで含む幅を持っていた。その文脈の中でこの作品も、単なるモダン・ジャズの延長ではなく、時代の空気をまとった録音として位置づけられる。
アルバム全体を通して印象に残るのは、演奏の重心が低く、リズム隊が前に出すぎず、それでいて推進力は保たれている点。ホーンのフレーズは短く整理され、旋律は分かりやすい輪郭を持つ一方で、曲の進行にはモード的な開きがある。録音は1972年のUS盤らしく、音の芯が近く、各楽器の分離も比較的はっきりしている。聴き進めると、熱量で押す場面と、間を残して呼吸させる場面の切り替えが見えてくる。ジャズの中でも、知的な構成と身体的なノリが同居したタイプの作品と言えそうだ。
Black Jazzの中での位置づけ
Black Jazz Recordsの作品群は、1970年代初頭のソウル・ジャズやスピリチュアル・ジャズの流れを、より明確な黒人音楽として打ち出した点に特徴がある。『Hear, Sense And Feel』もその流れの中にあり、強いグルーヴを土台にしながら、即興の自由度を確保している。Pharoah SandersやLonnie Liston Smithのような大きな名前と比べると、よりコンパクトで、アンサンブルのまとまりを重視した作りに感じられる。レーベルの中では、政治性や宗教性を前面に出すというより、演奏そのものの推進力で聴かせるタイプの1枚として受け取れる。
また、メンバーにAri Brownの名前があることも興味深い。彼は後年のシカゴ・アヴァンギャルド周辺でも知られるが、この時期の演奏では、自由度を保ちながらも曲の骨格を崩さないバランス感が見える。そうした点は、同時代のより外向きなフリー・ジャズとも、洗練を強めたクロスオーバーとも少し違う立ち位置にある。
収録曲の流れと聴きどころ
トラックは全7曲で、レーベル表記でも通し番号順に並ぶ構成。曲ごとの性格ははっきりしていて、アルバムとしての流れが追いやすい。序盤ではテーマの提示が比較的明快で、ホーンのユニゾンや短いリフが曲の方向を決める。そこから徐々にソロへ移り、リズムの反復に乗って展開していく流れが多い。派手な転調や過剰な装飾より、同じ素材を少しずつ変化させる進め方が中心で、耳に残るのはその粘り強さだ。
特に注目したいのは、アルバムの核になる長めの展開を持つ曲群。ここでは、スピリチュアル・ジャズらしい高揚感が出る場面がありながら、演奏はあくまで整っている。ドラムとベースが一定の脈を作り、その上で管楽器がフレーズを重ねていく形なので、聴感としては激しさよりも持続感が強い。短い時間で強く印象を残すというより、曲が進むにつれて身体に残るタイプの作りだ。
音の質感と演奏の特徴
この作品の魅力は、各奏者が前に出て競い合うというより、ひとつのまとまった流れを作っているところにある。ピアノは和声を厚くしすぎず、必要なところで色を足す役回り。ベースは輪郭を明確に保ち、ドラムは拍を支えるだけでなく、曲のうねりを生む。ホーンは鋭さを持ちながらも、音数を絞って語るように進むため、聴き手はフレーズの一つひとつを追いやすい。録音年代を考えると、音圧で圧倒するというより、アンサンブルの温度をそのまま残したような仕上がりだ。
ジャンル分けとしてはソウル・ジャズ、モーダル・ジャズ、スピリチュアル・ジャズが並ぶが、実際の聴こえ方はその境界をまたいでいる。リズムの腰の強さはソウル・ジャズ寄り、ソロの進み方にはモード的な余白、全体の空気にはスピリチュアル・ジャズの静かな集中がある。どれか一つに収めるより、その中間にある感覚を記録したアルバムとして見ると、作品の輪郭がつかみやすい。
まとめ
『Hear, Sense And Feel』は、1972年のBlack Jazz Recordsらしさがよく出た作品で、アンサンブルのまとまり、反復の強さ、そして過度に崩さない即興のバランスが印象に残る。The Awakeningという名義のもとで、時代のスピリチュアルな気分とソウル寄りのグルーヴをつないだ1枚、と整理できそうだ。派手な逸話で語るより、演奏の組み立てそのものをじっくり聴きたい作品である。
トラックリスト
- A1 Awakening - Prologue Spring Thing 9:36
- A2 When Will It Ever End 7:16
- A3 Convulsions 6:37
- B1 Kera's Dance 10:05
- B2 Jupiter 7:33
- B3 Brand New Feeling 5:50
- B4 Awakening - Epilogue 1:06
動画
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Awakening - Prologue Spring Thing
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When Will It Ever End
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Convulsions
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Kera's Dance
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Jupiter
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Brand New Feeling
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Awakening - Epilogue