The Christians - The Christians (1987)
The Christians 1987

The Christians - The Christians (1987)

Pop Funk / Soul Soul

The Christians『The Christians』(1987)

1980年代後半のUKソウルを語るうえで、このデビュー・アルバムは外せない作品だ。リヴァプール出身のThe Christiansが1987年に発表した本作は、兄弟のハーモニーを軸にした歌声と、ソウル、ポップの要素をすっとまとめた作りが印象に残る。派手に押し切るタイプではなく、曲そのものの輪郭と歌の運びで聴かせるアルバムで、当時の英国らしい洗練と、ゴスペル由来のコーラス感が同居している。

バンドは1984年に結成され、Garry Christian、Russell Christian、Roger Christianの兄弟を中心に、ソングライターのHenry Priestmanらが加わっている。もともと声のまとまりに強みがあるグループで、この1枚目でもその特長がはっきり出ている。後年のヒット曲「Harvest For The World」で知られるバンドだが、その土台はすでにこのアルバムの時点でかなり固い。

作品の位置づけ

本作はThe Christiansの最初のフル・アルバムであり、バンドの基本形を示した1枚だ。UK盤はIsland Recordsからのリリースで、カタログ番号はILPS 9876。アルバムはゲートフォールド仕様で、内側に歌詞が掲載されている。盤面にはEMI Recordsによるプレスの特徴が見られ、ランアウトには「-1-1」の表記がある。レコードとしての作りも、80年代UK盤らしい丁寧な仕上がりだ。

音楽的には、同時代のUKソウル・グループや、ポップス寄りのソウル・アンサンブルと並べて語られることが多いタイプだ。Shakatakのような軽快さとも、Simply Redのような都会的なソウル感とも少し距離があり、The Christiansはもっと合唱的で、曲の構成とメッセージを前に出す印象がある。演奏の隙間を埋めるより、歌を立てる作り。そこがこのバンドの個性になっている。

「Forgotten Town」

アルバムの入口として機能する「Forgotten Town」は、The Christiansを初めて聴くときの基準になる曲だ。リズムはきっちり整理されていて、ベースとドラムが前に出すぎない。その上で、複数の声が重なりながら進む展開が、バンドの性格をはっきり示している。タイトル通り、都市や社会の空気を思わせる言葉が置かれているが、音の作りは重苦しさに寄り切らず、むしろ整った推進力がある。

この曲では、メロディの運びとコーラスの配置が大きな役割を持つ。ソウルのグルーヴを土台にしながら、ポップソングとしての聴きやすさを保っている点が重要だ。単に“良い声のバンド”というだけではなく、曲の中で声をどう積むかまで含めて設計されていることが伝わる。

「Ideal World」

「Ideal World」は、このアルバムの中でも特に広く知られる代表曲のひとつだ。伸びのあるメロディと、はっきりしたフックが前面にあり、The Christiansの持つポップ感覚がよく出ている。ソウル・グループとしての重心は保ちながら、サビでの開け方はかなり親しみやすい。ラジオ向きの明快さと、コーラスの厚みが両立している。

この曲の良さは、派手な展開がなくても印象が残るところにある。音数をむやみに増やさず、歌の流れをきちんと聴かせる作りで、アルバム全体の中でも輪郭がくっきりしている。The Christiansが“ソウル・グループ”としてだけでなく、“曲を書くバンド”としても成立していることを示す1曲だ。

「Born Again」ほか、アルバム全体の流れ

本作はシングル向きの曲だけで押し切る作りではなく、アルバムとしての流れも意識されている。テンポを大きく振り回すわけではないが、曲ごとにコーラスの置き方やリズムの重ね方が変わり、同じ系統の音に聞こえにくい。声が主役であることは一貫しているものの、その表情は単調ではない。

「Born Again」のような楽曲では、メロディの伸びとアレンジの整理された感じがより前に出る。派手な装飾より、歌のフレーズが自然に耳に残る構成で、アルバムの中でバンドの“整った強さ”を確認できる。全体として、ハーモニー主体のソウル・ポップを、UKの1987年という時代に合わせてきれいに仕上げた印象がある。

録音と盤の特徴

このUK盤は、EMI Recordsのプレスによるバリエーションで、ランアウトにはスタンピングされた刻印が中心だが、「TOWNHOUSE DMM」だけはエッチング表記になっている。レーベル面には1.117インチのプレスリングが見られる。こうした仕様からも、当時の英国盤らしい製造情報が読み取れる。Island Recordsのアルバムとしては、フル・プライス帯の品番ILPSを持つ、いかにも本流の扱いの1枚だ。

音としては、コーラスの分離感と中域のまとまりがポイントになるタイプで、歌の重なりがきちんと前に出る。演奏の派手さより、声の層と曲の構造を味わうアルバムといえる。The Christiansの出発点として、そして1980年代UKソウルのひとつの形として、今見ても輪郭のはっきりした作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Forgotten Town 5:13
  2. A2 When The Fingers Point 3:32
  3. A3 Born Again 5:18
  4. A4 Ideal World 4:35
  5. A5 Save A Soul In Every Town 4:35
  6. B1 ... And That's Why 5:17
  7. B2 Hooverville 4:45
  8. B3 One In A Million 4:42
  9. B4 Sad Songs 4:25

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