The Clash - The Clash (1977)
The Clash / The Clash(1977)
The Clashのデビュー作『The Clash』は、1977年に登場したバンド初期の出発点であり、英国パンクの空気をそのまま刻んだような一枚だ。ロンドンの南西部と西部を拠点にしたこのバンドは、同時代のパンク・シーンの中でも特に政治性と切迫感を前面に出した存在として知られている。本作では、後年のようにレゲエやダブへ広く踏み込む前の、より一直線な勢いがまず耳に入る。とはいえ、ただ速く荒いだけではなく、演奏の押し引きや歌の置き方にすでに個性があるところが面白い。
このアルバムは、The Clashにとって単なるデビュー盤ではなく、バンド像を決定づけた作品でもある。のちに『London Calling』で世界的評価を得る前段階として、すでに「The Only Band That Matters」と呼ばれる土台がここにある、という位置づけだろう。1977年という年は、Sex PistolsやBuzzcocksなどと並んで英国パンクが一気に可視化された時期でもあり、その中でThe Clashはより社会性の強い語り口を持ち込んだバンドとして記憶されている。
作品全体の印象
聴き進めると、まず印象に残るのは音数の少ない構成と、前へ前へと押し出す演奏だ。ギター、ベース、ドラムの基本形に、必要最小限の装飾で曲を成立させる作り。録音も派手な処理は少なく、ライブの熱をそのまま切り取ったような質感がある。実際に通して聴くと、曲ごとの温度差よりも、1枚を通した緊張感の持続がこの作品の核に感じられる。
その一方で、The Clashらしいのは、単調になりきらないことだ。荒いコード進行の曲もあれば、リズムの抜き差しで引っ張る曲もあり、歌詞の視点もかなり具体的だ。単に怒っているだけではなく、都市の閉塞感や若者の居場所のなさを、短い曲の中で切り出していく作業が見える。パンクの初期衝動を持ちながら、すでに「何を歌うか」を強く意識しているアルバムといえる。
注目曲「White Riot」
代表曲としてまず挙がるのは「White Riot」だろう。The Clashの初期像を象徴する曲で、短い尺の中に当時の切迫した空気を詰め込んでいる。速いテンポ、鋭いギター、前のめりのボーカルが一直線にぶつかってくる構成で、パンクの初期衝動を端的に示す1曲になっている。
この曲は、ライブでの勢いを想像しやすいタイプでもある。スタジオ録音でも十分に荒々しいが、曲の骨格がかなり明快なので、演奏が前に出たときの破壊力が大きい。The Clashが単なるノイジーなバンドではなく、メッセージを短く切り出す手つきに長けていたことがよくわかる。
注目曲「Career Opportunities」
「Career Opportunities」は、当時の若者が置かれていた就労環境や社会の息苦しさを、かなり直接的に扱った曲だ。タイトルだけでも内容が伝わるが、実際にはその言葉通りの軽さではなく、選択肢の狭さを皮肉っぽく叩きつけるような作りになっている。The Clashの社会観が、初期の段階からかなり明確だったことを示す1曲でもある。
この曲の良さは、主張の強さと、演奏の簡潔さが噛み合っているところにある。言葉数を増やしすぎず、反復の中で圧をかける構成なので、聴き手に説明しすぎない。パンクの中でも、The Clashが「怒り」をそのまま出すだけでなく、状況の描写として曲に落とし込んでいたことが見えてくる。
注目曲「Police & Thieves」
本作にはカバー曲「Police & Thieves」も収録されている。原曲はジャマイカのレゲエ/ルーツ寄りの曲として知られるが、The Clash版ではバンドの解釈がはっきり出ている。ここで重要なのは、のちのThe Clashが広げていくレゲエやダブへの関心が、すでにこの時点で見えていることだ。
デビュー作の段階で、パンク一辺倒に閉じず、別のリズム感や空気を取り込んでいる点は見逃しにくい。後年の多様化を知ってから聴くと、このカバーは単なる収録曲以上の意味を持っているように感じられる。The Clashが最初から外へ向かう耳を持っていたことの証拠のような位置づけだ。
収録曲まわりのポイント
本作のクレジットには、A面は面単位で著作権表記が置かれ、B面は曲ごとの表記になっている。紙面上の細部まで含めて、当時のレコードらしい作りだ。なお、B4「Police & Thieves」はスリーヴ上でMurvin/Perry表記になっており、A6ではLevineが作曲者表記から外れているなど、初期盤ならではのクレジット差も確認できる。
また、このヨーロッパ盤は、裏ジャケットとレーベルで表記の仕方が少し異なり、裏面には「Shorepak by Shorewood Packaging / Printed in Holland」、レーベル面には「Made in Holland」とある。CBSのヨーロッパ展開の中で出た盤として見ても、1977年当時の流通事情がそのまま残る仕様だ。
1977年という位置づけ
1977年の『The Clash』は、The Clashの長いキャリアをたどるうえで最初の基準点になる作品だ。ここには、のちの大作主義や多国籍な音楽性はまだ全面には出ていないが、政治性、都市感覚、短く鋭い曲作りはすでに揃っている。同時代の英国パンクの中でも、The Clashは「怒り」をそのまま反復するだけではなく、曲の中に社会の景色を入れ込む方向へ進んでいた。その出発点として、このアルバムはかなり重要な一枚といえる。
盤として見ると、CBSの欧州盤らしい体裁の1977年リリースで、初期The Clashをその時代の空気ごと持っているタイプのレコードだ。演奏の粗さも含めて作品の一部になっており、のちの洗練された作品群とは別の角度からバンドの輪郭を示している。
トラックリスト
- A1 Janie Jones 2:05
- A2 Remote Control 3:00
- A3 I'm So Bored With The U. S. A. 2:24
- A4 White Riot 1:55
- A5 Hate & War 2:04
- A6 What's My Name 1:40
- A7 Deny 3:03
- A8 London's Burning 2:10
- B1 Career Opportunities 1:51
- B2 Cheat 2:06
- B3 Protex Blue 1:45
- B4 Police & Thieves 6:00
- B5 48 Hours 1:34
- B6 Garageland 3:13
動画
- The Clash - I'm so Bored with the U.S.A. (Official Audio)
- The Clash - Janie Jones (Official Audio)
- Career Opportunities (Remastered)
- The Clash - Gates of the West (Vinyl)
- Groovy Times , The Clash , 1979 Vinyl 45RPM
- The Clash - The Clash (US Version) (1979) [Full Album]