The Fevers - The Fevers (1973)
The Fevers『The Fevers』(1973)について
1973年にブラジルでリリースされたThe Feversの同名アルバムは、ロック、ラテン、ファンク/ソウル、ポップという複数の要素をひとつの作品の中に並べた内容になっている。バンド名をそのまま冠したタイトル作だけに、当時のThe Feversの輪郭をそのまま示す性格が強い。グループの公式サイトやブラジルの資料でも長く紹介されていることからも、彼らにとって節目の一枚として扱われていることがうかがえる。
The Feversはブラジルのポップ・ロック史の中で語られることの多いグループで、1960年代から活動を続けながら、時代ごとの流行を吸収してきたバンドとして知られている。この1973年盤も、単にロック一辺倒ではなく、メロディ重視の曲、ビートを前に出した曲、ソウル寄りのグルーヴを持つ曲が並ぶ構成で、当時のブラジルの大衆音楽とロックの接点を見やすい一枚になっている。
1973年という時代の空気
1970年代前半のブラジルでは、MPBの洗練とロックの大衆化が同時に進んでいた。The Feversのようなバンドは、その両方の要素を取り込みながら、ラジオ向きの分かりやすい曲作りを続けていた存在といえる。このアルバムでも、サイケデリック・ロック、バラード、MPBというスタイル名が示す通り、演奏の熱量だけで押し切るのではなく、曲の輪郭や歌のフックをきちんと立てる作りが見える。
同時代のブラジル・ロックと比べると、よりソフトで歌謡性の強い方向に寄っている場面が目立つ。Odeonからの発売という点も含め、いわゆるアンダーグラウンド寄りの作品ではなく、広い層に届くことを意識した制作だったことが想像しやすい。
サウンドの印象
この作品でまず目に入るのは、ジャンルの振れ幅の広さだ。ギター主体のロック・ナンバーがある一方で、ラテン的なリズム感や、ファンク/ソウル由来の押しの強さも顔を出す。そこにポップなメロディが通っているので、曲ごとの表情は変わっても、アルバム全体は散漫になりにくい。演奏が過度に複雑ではないぶん、歌のラインやコーラスの作りが前に出るタイプの作品として聴こえる。
タイトル作のアルバムにありがちな自己紹介的な性格はあるものの、単なる入門盤というより、バンドが当時どの方向へ進めるかを整理した記録のようにも受け取れる。ロックの勢い、バラードの抑制、ソウル寄りの粘りが同居していて、The Feversの持ち味が一枚の中で分かりやすく見える。
注目曲の聴きどころ
収録曲の中では、まずバラード系の楽曲に耳が向く。The Feversは派手な技巧よりも、メロディの流れと歌の運びで聴かせる場面が多く、この手の曲ではその持ち味がはっきり出る。過剰に感傷へ寄せるのではなく、フレーズを丁寧につないでいくタイプの進行で、70年代前半のブラジルらしい整ったポップ感がある。
一方で、リズムが前に出る曲では、ファンクやラテンの要素がアルバムの表情を変える。ギターのカッティングやベースの動きが曲の推進力になり、コーラスが入ることで一気に大衆性が増す。こうした曲は、The Feversが単なる歌謡バンドではなく、当時のダンス・ミュージック的な感覚も取り込んでいたことを示している。
バンドの位置づけ
The Feversにとってこの1973年作は、長く活動する中で積み重ねてきたポップな感覚と、同時代のロック/ソウルの要素をまとめた中核的な一枚として見やすい。メンバーは複数回の変遷を経ているが、バンドとしての核は歌を中心に置いたアンサンブルにある。この作品でも、その方向性はぶれていない。
ブラジルの70年代ポップ・ロックをたどるうえで、The Feversは大きな実験性で語られるグループではないかもしれない。ただ、このアルバムのような作品を聴くと、ラジオや大衆市場としっかり接続しながら、ロック、MPB、ソウルの要素を自然に混ぜていたことがよく分かる。派手な転換よりも、曲作りと歌の安定感で印象を残すタイプのアルバムとして位置づけられる。
ブラジル盤としての雰囲気
リリースはブラジルのOdeon盤で、1973年当時の現地リリースらしい空気を持つ。Odeonはブラジルを含む各国で使われた歴史あるレーベルで、この時期のブラジル盤には、国際的な流通を意識したロックやポップの作品が少なくない。The Feversのこのアルバムも、その流れの中にある一枚として見ると、当時のブラジル市場で求められていたサウンドの輪郭が見えやすい。
総じて、『The Fevers』は、バンドの歌ものとしての強さと、70年代前半ブラジルのポップ・ロックの空気を同時に感じられる作品だ。派手な逸話で語るタイプではないが、曲の並びと演奏の組み立てを追うだけでも、The Feversがどの地点にいたのかがつかみやすいアルバムになっている。
トラックリスト
- A1 Hey Girl 3:09
- A2 Se Você Me Quizesse = I'd Love You To Want Me 3:15
- A3 Rock Da Pesada 2:22
- A4 Don't Say Goodbye 2:51
- A5 Tudo Que Eu Quero Eu Tenho 2:16
- A6 Sem Você = The Flying Dutchman 3:29
- B1 Alguém Em Meu Caminho 2:35
- B2 Superman 2:39
- B3 Algo Errado Em Mim 2:57
- B4 Meu Desejo = I'm On Fire 2:42
- B5 Gás Neon 2:09
- B6 Vivo A Sonhar Com Você = Mademoiselle 2:36
- B7 Tudo Passa = Trop Belle Pour Rester Seule 2:30