The Lounge Lizards - The Lounge Lizards (1981)
The Lounge Lizards 1981

The Lounge Lizards - The Lounge Lizards (1981)

Jazz Avant-garde Jazz No Wave

The Lounge Lizards『The Lounge Lizards』(1981)

The Lounge Lizardsの1981年作『The Lounge Lizards』は、グループ名をそのまま冠した初期の重要作である。サックス奏者ジョン・ルーリーと、ピアニストのイヴァン・ルーリー兄弟を核に、ニューヨークの実験音楽、ジャズ、ノー・ウェイヴ周辺の人材が集まった時期の記録として位置づけられる。ここでは、ジャズの形式感を土台にしながら、演奏の組み立てや音色の置き方にひっかかりを作っていく姿が見える。単なる「変わり種のジャズ」というより、都市の空気感まで含めて設計された初期衝動のアルバムという印象が強い。

この時期のLounge Lizardsは、のちの洗練された室内楽的な側面へ向かう前段階にあたる。ジョン・ルーリーの作曲感覚が前面に出る以前の、少し粗い輪郭のまま突き進む感じがあり、バンドとしてのアイデンティティを固めていく途中経過がそのまま残っている。メンバーにはアート・リンゼイ、アントン・フィアー、スティーヴ・ピッコロ、マーク・リボー、スティーヴン・バーンスタイン、ダギー・ボウネ、エリック・サンコ、カーティス・フルフォードら、後年それぞれ別の現場で存在感を示す面々が並ぶ。ニューヨークの同時代シーンを知るうえでも、かなり密度の高い一枚である。

作品の輪郭と時代背景

1981年という年は、ニューヨークのダウンタウン周辺で、パンク以後の感覚と即興音楽、ファンク、フリー・ジャズが交差していた時期にあたる。The Lounge Lizardsは、その中心で「ジャズ」という言葉を引用しつつ、わざと整いすぎない編成と運動感を持ち込んだ。結果として、演奏の熱量よりも、フレーズの置き方や間の取り方に耳が向く作りになっている。ノー・ウェイヴの周辺で語られることが多いのも、その時代の空気と無関係ではない。

レーベルはEdtions EG。EG Records系の一連の動きの中にあり、当時の先鋭的な作品を扱っていた流れの延長にある。US盤として出たこのアルバムは、のちの再発で付加される要素に頼らず、1981年当時の姿をそのまま伝える初出盤として受け取れる。音の作りは、録音の生々しさとアンサンブルの配置がはっきりしていて、各楽器のぶつかり方が追いやすい。

注目曲について

このアルバムの聴きどころは、曲そのものの“完成度”よりも、バンドがどのようにズレを管理しているかにある。テーマを提示しては崩し、ソロに入っても予定調和に寄せない。そうした進行が、いかにもこのグループらしい。ジャズの文法を下敷きにしながらも、演奏の重心をわずかにずらし続けることで、普通のコンボとは異なる緊張感が生まれている。

とくにジョン・ルーリーのサックスは、流麗さを前面に出すというより、音の角を残したまま前へ出てくるタイプで、その輪郭がバンド全体の性格を決めている。そこにイヴァン・ルーリーのピアノが、和声を埋めすぎない形で入ることで、空間が開いたまま進む場面が多い。アート・リンゼイやマーク・リボーのギターが入る箇所では、ジャズの編成というより、ダウンタウンの実験音楽の手触りが前に出る。

代表曲として一曲を強く切り出すより、曲ごとの役割が連続しているタイプのアルバムである。ただ、その中でもテーマの反復がはっきりしている曲や、ホーンとリズム隊の噛み合いが明確な場面では、Lounge Lizardsの初期像がよくわかる。つまり、洒落た引用に見えて、実際にはかなり切迫した演奏でもある。その二面性が、この作品の核になっている。

アーティストにとっての位置づけ

『The Lounge Lizards』は、The Lounge Lizardsが単なる一発芸的なコンセプト・バンドではなく、継続的に独自の音楽を作る集団であることを示した初期作といえる。のちにジョン・ルーリーの作曲性がより前面に出ていくが、その出発点としては、この作品の持つ即興性と不穏さが重要である。兄弟を軸にしながら、周辺のミュージシャンたちを巻き込んでいく形も、この時点でかなり明確だ。

ジャズの歴史の中で見ると、フリー・ジャズ以後の解放感を受けつつ、ロック以後の感覚も取り込んだ地点に置ける。サム・リヴァース周辺の実験性や、ニューヨーク・シーンのノー・ウェイヴ的な断面と比較されることがあるのも自然だろう。ただし、このバンドは単純な反ジャズでも反ロックでもなく、どちらの言語も素材として扱っているところに特徴がある。1981年のこの一枚は、その姿勢がもっとも素直に出た記録として読める。

トラックリスト

  1. A1 Incident On South Street 3:27
  2. A2 Harlem Nocturne 2:08
  3. A3 Do The Wrong Thing 2:45
  4. A4 Au Contraire Arto 3:30
  5. A5 Well You Needn't 1:57
  6. A6 Ballad 3:30
  7. A7 Wangling 3:05
  8. B1 Conquest Of Rar 3:21
  9. B2 Demented 2:05
  10. B3 I Remember Coney Island 3:35
  11. B4 Fatty Walks 3:00
  12. B5 Epistrophy 4:21
  13. B6 You Haunt Me 3:45

動画

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