The Prophets - Conquering Lion (1975)
The Prophets『Conquering Lion』(1975)について
The Prophetsの『Conquering Lion』は、1975年にジャマイカでMicron Music Limitedから出たルーツ・レゲエ作品だ。アーティスト名義はThe Prophetsだが、中心にいるのはVivian Jackson、つまりYabby Youである。Roots reggae harmony trioとして知られるこのユニットは、1972年にJacksonを軸に結成され、この『Conquering Lion』がシングルとしての初登場になったとされる。のちに彼らの録音はJackson自身のデビュー・アルバム『Conquering Lion』にもつながっていくため、ここは単なる一枚のシングル以上に、Yabby You周辺の初期の輪郭をつかむうえで重要な位置にある作品といえる。
レーベルのMicron Music Limitedは、1971年にMichaelとRonnieの2人によって始まったジャマイカのレゲエ・レーベルで、のちに1972年から別の人物が加わったとされる。表記ゆれとしてMicronと書かれることもある。1970年代前半のジャマイカ・ルーツ・レゲエの現場を支えたローカル・レーベルのひとつで、こうした環境の中から『Conquering Lion』のような作品が出てきた流れは、当時のシーンの空気をよく示している。
作品の位置づけ
この曲は、The Prophetsの単独デビュー曲として知られている。アーティストプロフィールにもある通り、彼らはYabby Youのプロジェクトとして始まり、以後もいくつかのシングルを発表し、それらはJacksonの初期アルバムへと結びついていく。つまり『Conquering Lion』は、後年のまとまった作品群の出発点にある一曲で、Yabby Youの初期活動を追うときに外しにくい存在だ。
1975年という時期もポイントになる。ジャマイカのルーツ・レゲエは、70年代半ばにかけて、より重いベース、引き締まったドラム、宗教性や社会意識を帯びた表現へと傾いていくが、『Conquering Lion』もその流れの中にある。派手な演出よりも、声の重なりとリズムの骨格で押していくタイプの録音として理解しやすい。
『Conquering Lion』の聴きどころ
曲の核にあるのは、タイトルにもなっている「Conquering Lion」という言葉が持つ強い象徴性だ。レゲエ、とくにルーツ・レゲエの文脈では、精神性や信仰、抵抗のイメージと結びつきやすい語で、この作品でもそうした方向性が前面に出ている。The Prophetsの名義が示すとおり、ただのラブソングやダンス向けの曲というより、メッセージ性を持った録音として受け止めやすい。
実際の聴感としては、ハーモニー・トリオらしい声のまとまりが印象に残る。Vivian Jackson、Alric Forbes、George Vincent Hansonの3人による構成で、個々の声を目立たせるよりも、合わさったときの厚みで曲を進める作りだ。高音の伸びや派手なコーラスワークで押すというより、一定の温度で言葉を積み上げていく感じがあり、そこにジャマイカ産ルーツ・レゲエ特有の硬質なリズムが乗る。耳に残るのはメロディの派手さよりも、反復の強さと声の配置だ。
ルーツ・レゲエの文脈で見ると
同時代のルーツ・レゲエには、Third World、The Abyssinians、The Heptones周辺など、ハーモニーを軸にしたグループが多く存在したが、The Prophetsはその中でもYabby Youの制作感覚と結びついた存在として見やすい。宗教的な語彙やジャマイカの現実感を含みながら、音の作りは比較的ストレートで、過剰に飾らない。そのため、当時のレゲエが持っていた「歌うこと」と「語ること」の境目が、かなりはっきり感じられる。
また、Yabby YouことVivian Jacksonは、プロデューサーとしてもシンガーとしても独自の存在感を持つ人物だが、『Conquering Lion』はその初期像を示す一例になっている。のちにアルバムへつながる素材であることを踏まえると、この曲は単独のヒット曲というより、Yabby Youの表現がどこから始まったかを示す記録に近い。派手な成功譚よりも、1970年代ジャマイカの現場で、少人数の声と限られた編成からどのように強いメッセージを作っていたかを伝える一枚だ。
まとめ
『Conquering Lion』は、The Prophetsの初期シングルであり、Yabby Youのキャリア初期を語るうえで外しにくい作品だ。1975年のジャマイカ産ルーツ・レゲエらしい骨太さ、ハーモニー・トリオとしてのまとまり、そしてタイトルに込められた象徴性が、短い尺の中にきちんと収まっている。大きな装飾はないが、そのぶん当時の録音の輪郭が見えやすい。The Prophetsという名義の背後にある制作の流れまで含めて、70年代レゲエの初期重要作として記憶される一枚だ。
トラックリスト
- A1 Run Come Rally
- A2 Jah Vengeance
- A3 Conquering Lion
- A4 Convetious Men
- A5 Anti Christ
- B1 Carnal Mind
- B2 Jah Love
- B3 Love Thy Neighbour
- B4 Love Of Jah
- B5 The Man Who Does The Work
動画
- Run Come Rally
- Jah Vengeance
- Conquering Lion
- Covetous Men
- Anti Christ
- Carnal Mind
- Jah Love
- Love Thy Neighbour
- Love of Jah
- The Man Who Does The Work
- Rally Dub
- Tubby's Vengeance
- Conquering Dub
- Big Youth Fights Against Capitalist
- Jah Love Dub