The Roys - Kicked Off The Train (1986)
The Roys 1986

The Roys - Kicked Off The Train (1986)

Rock Soft Rock

The Roys『Kicked Off The Train』について

The Roysの『Kicked Off The Train』は、1986年にリリースされたソフトロック寄りのロック作品で、日本盤も同年に登場している。レーベルはStiff Records、カタログ番号はVIL-28046。Stiff Recordsといえば、パンクやニューウェイブ期のイメージが強いレーベルだが、この作品ではそうした看板の印象とは少し違う、より歌を前に出した作りが目につく。作品全体としては、派手な技巧で押すというより、曲の輪郭をきちんと見せるタイプの一枚という印象がある。

アーティスト情報は多く残っていないが、少なくともこのアルバム単体で見ると、1980年代半ばのロックの中でも、硬質さよりもメロディの流れを重視した方向にある。Stiff Recordsが持っていた英国的なセンス、軽さと皮肉っぽさを含む空気感は、レーベルの歴史を思い浮かべると意識されやすいが、この盤ではそこに加えて、もっと穏やかな聴感が前に出る。タイトルの『Kicked Off The Train』も、直訳的な強さより、何かの流れから外れた感触を思わせる言葉で、作品の雰囲気をうまく示しているように見える。

1986年のStiff Records盤という位置づけ

Stiff Recordsは1970年代のパブロック、パンク、ニューウェイブの文脈で語られることが多いレーベルだが、1986年時点ではすでに歴史のある存在だった。いったん大きな流通体制の変化を経て、1986年には再び独立性を取り戻している時期でもある。その年に出たこの作品は、レーベルの初期イメージだけでは捉えきれない、80年代半ばのカタログとして見るのが自然だろう。

日本盤として出ている点も興味深い。国内では洋楽ロックの輸入盤需要がある程度定着していた時期で、こうしたレーベル色の強い作品が日本仕様で流通していたこと自体、当時の洋楽受容の幅を感じさせる。ジャケットや帯の印象も含めて、レコードとしての佇まいを楽しむ余地がある一枚だ。

サウンドの印象

実際に聴くと、まず耳に入るのは曲の流れの素直さだ。過度に装飾を重ねるタイプではなく、リズム、ギター、歌の位置関係がわかりやすい。ロック盤としての骨格は保ちながら、音の当たりは比較的やわらかく、ソフトロックのタグが付く理由も理解しやすい。音圧で押すというより、曲の進行を追いやすい作りで、歌詞やメロディを軸に聴ける感触がある。

また、1980年代中盤らしい録音の空気も感じられる。楽器が密集しすぎず、各パートの居場所が見えやすいので、派手な一発よりも、反復やフレーズの積み重ねで聴かせる場面が印象に残る。耳当たりは軽めでも、ただ薄いわけではなく、曲ごとの起伏はきちんとある。レーベルの持つポップな感覚と、ロックの基本形が同居した内容といえる。

曲ごとの聴きどころ

タイトル曲「Kicked Off The Train」は、この作品の顔としてまず意識される一曲だろう。曲名の持つ少し投げ出されたような感覚に対して、実際の演奏はむしろ整っていて、歌のメロディを軸に前へ進む構成になっている。サビに向かう流れがわかりやすく、アルバムの方向性を短い時間で示す役割を担っているように感じられる。タイトルの印象と曲の運びの間にある距離感も、この盤の面白さのひとつだ。

もうひとつ注目したいのは、アルバム中で比較的メロディの印象が残りやすいタイプの楽曲群だ。The Roysのこの作品では、特定の曲だけを大きく誇張するより、曲ごとの輪郭を揃えながら全体を聴かせる作りが目立つ。そのため、いわゆる代表曲を一発で強く押し出すというより、何曲か聴き進めるうちに、歌の置き方やコーラスのまとまりが印象に残っていく。派手な転調や過剰な演出に頼らないぶん、繰り返し聴いたときの安定感がある。

同時代の文脈で見ると

1986年のロックは、ギター主体のバンドサウンドがまだ強い一方で、ポップスとの距離が近い作品も多かった時期だ。この『Kicked Off The Train』も、その流れの中で理解しやすい。パンク以降のレーベルでありながら、音楽性としてはもっと広い層に届くような、メロディ重視の作りが見える。Stiff Recordsのカタログの中でも、初期の尖ったイメージだけでは片づけられない一枚として位置づけられそうだ。

比較対象を挙げるなら、同時代の英国ロックや、メロディを大切にするポップ寄りのバンドが思い浮かぶ。ただし、この作品はそうした文脈に無理に寄せる必要はなく、あくまでThe Roysのアルバムとして、曲のまとまりとレーベルの時代性を感じる盤として受け取るのがしっくりくる。1986年という年の空気を、そのままロックの形に置いたような存在感がある。

まとめ

『Kicked Off The Train』は、Stiff Recordsというレーベルの歴史を背負いながらも、パンク的な荒さを前面に出すのではなく、ロックとソフトロックの間を行くような聴きやすさを持った作品だ。アーティスト情報は多くないものの、盤そのものは1986年の洋楽ロックの一断面として見やすい。タイトル曲を中心に、曲の流れ、歌の置き方、レーベルの時代背景を合わせて眺めると、この一枚の輪郭がだいぶはっきりしてくる。

トラックリスト

  1. A1 Kicked Off The Train
  2. A2 Little Nam
  3. A3 Hard Time
  4. A4 Mediacs
  5. A5 Serious
  6. B1 Dog Day
  7. B2 Rise Up Youth
  8. B3 Don't Go With Strangers
  9. B4 Cabbage Town
  10. B5 Who Shot That Man
Share
記事一覧に戻る
toast