The Runaways - The Runaways (1976)
The Runaways『The Runaways』(1976)レビュー
The Runawaysの記念すべき1stアルバム『The Runaways』は、1976年にUSのMercuryから登場した作品だ。10代の少女たちだけで構成されたハードロック・バンドが、メジャー・レーベルの看板でデビューしたという事実だけでも強いインパクトがある。のちにパンク、グラム、メタルの文脈でも語られるグループだが、この時点ではまだ、粗削りな勢いとロックンロールの直球勝負が前面に出ている。
制作面では、プロデューサーのKim Fowleyの存在が大きい。バンドのイメージ作りを含めて強い主導権があったことはよく知られていて、このアルバムにもその時代特有の“売り出し方”がはっきり表れている。とはいえ、ただの企画盤では終わっていない。Joan Jett、Lita Ford、Cherie Currie、Sandy Westという個々の個性が、すでに音の段階でぶつかっているのが面白いところだ。
作品の立ち位置
『The Runaways』は、バンドにとって最初の正式なアルバムであり、後の象徴的な存在感の出発点でもある。The Runawaysは短い活動期間のなかで、女性だけのハードロック・バンドとして注目を集めたが、このデビュー作では、その「珍しさ」だけでなく、演奏そのものの勢いが前に出ている。後年の評価では、Joan Jettがソロで大きく花開く前史として、またLita Fordがギタリストとして存在感を強めていく入口としても重要な一枚と見られている。
同時代の文脈で見ると、グラム・ロックの派手さ、初期パンクの荒さ、ハードロックの骨太さが同居している。完全にどれか一つに収まる作品ではなく、そこがこのアルバムの輪郭になっている。後のThe Runawaysが「先駆的」と語られるとき、その起点はまさにこのデビュー盤にある。
サウンドの印象
実際に聴くと、まず感じるのは録音の生々しさだ。音は整いすぎておらず、むしろ勢いを残したまま押し切るタイプ。ギターは鋭く、リズム隊は前へ前へと進み、ヴォーカルは若さゆえの切迫感を伴っている。完成度で圧倒するというより、バンドの輪郭がそのまま盤に刻まれている印象が強い。
また、当時のメンバーが全員まだ10代半ばだったという背景を踏まえると、演奏の荒さも単なる未熟さとして片づけにくい。むしろ、その年齢だからこそ出せる直線的な熱量がある。大人のロック・バンドが作る“若さの演出”ではなく、実際の若さが音にそのまま入っている感じだ。
注目曲:代表曲「Cherry Bomb」
このアルバムを語るうえで外せないのが「Cherry Bomb」だ。The Runawaysの代名詞として扱われることの多い曲で、バンドのイメージを決定づけた代表曲でもある。曲の立ち上がりからして勢いがあり、短い尺のなかに攻撃性とキャッチーさが詰め込まれている。
この曲の面白さは、単に激しいだけではない点にある。ボーカルの押し出し、コーラスの引っかかり、ギターの切れ味が噛み合っていて、ロックンロールの単純明快な快感に直結している。のちに多くのアーティストやリスナーがThe Runawaysを思い浮かべるとき、まずこの曲の印象が来るのも自然だろう。
注目曲:アルバム全体を支える楽曲群
『The Runaways』は、特定の大ヒット曲だけで引っぱる作品というより、全体の勢いで聴かせるアルバムだ。収録曲はどれも、ハードロックの骨格を持ちながら、パンク的な速度感やグラム寄りの派手さをにじませている。Joan JettのギターとLita Fordのリード、そしてSandy Westのドラムが前に出る場面では、バンドの基礎体力が見えやすい。
一方で、Cherie Currieのヴォーカルは、単に可憐さや若さを強調するだけではなく、曲によっては攻撃的な質感も持ち込んでいる。アルバムを通して聴くと、まだ役割分担が固まりきっていないぶん、各曲でバンドの表情が少しずつ変わるのがわかる。その揺れが、この作品の初期衝動らしさにつながっている。
盤としての特徴
USオリジナル盤はMercuryの1976年仕様で、いわゆるスカイスクレーパー・レーベルの時代に入る。ゲートフォールド仕様で、歌詞インサート付きという点も当時のアルバムらしい作りだ。レーベル表記は大きめのMercuryロゴと小さめのThe Runaways表記が入るバリエーションで、初期プレスらしい仕様として知られている。
こうした物理的な作りも含めて、このアルバムはThe Runawaysというバンドが最初に世に示した「名刺」のような一枚だ。後の活動を知ったうえで聴くと、ここにはまだ多くの可能性がそのまま残っている。荒削りで、直線的で、しかし確かな輪郭を持つデビュー作として、1976年という年の空気をよく映している。
トラックリスト
- A1 Cherry Bomb 2:20
- A2 You Drive Me Wild 3:20
- A3 Is It Day Or Night? 2:43
- A4 Thunder 2:35
- A5 Rock And Roll 3:14
- B1 Lovers 2:10
- B2 American Nights 3:15
- B3 Blackmail 2:40
- B4 Secrets 2:47
- B5 Dead End Justice 7:00
動画
- The Runaways - Rock N Roll
- The Runaways - Cherry Bomb
- Dead End Justice
- Thunder
- Is It Day Or Night?
- Lovers
- American Nights
- Blackmail