The S.O.S. Band - S.O.S. (1980)
The S.O.S. Band 1980

The S.O.S. Band - S.O.S. (1980)

Funk / Soul Soul Disco

The S.O.S. Band『S.O.S.』(1980)レビュー

The S.O.S. Bandのデビュー作『S.O.S.』は、1980年にUSのTabu Recordsから登場したアルバムである。グループ名をそのまま冠した作品だけに、まずはバンドの出発点をはっきり示す一枚として捉えやすい。The S.O.S. BandはアメリカのR&B/エレクトロ・ファンク・バンドで、もともとのバンド名は「Santa Monica」だったが、録音の過程でSigidi Bashir Abdullahによって現在の名称に改められたとされる。タイトルの“S.O.S.”は「sounds of success」の略として語られている。

このアルバムが出た1980年は、ディスコの余韻が残りつつ、R&Bの中でファンクやダンス志向のサウンドが整理されていく時期でもある。Tabu RecordsはClarence Avantが立ち上げたUSレーベルで、のちにThe S.O.S. Band、Alexander O'Neal、Cherelleらを抱える重要なR&Bレーベルとして知られるようになる。そうしたレーベルの初期を支える存在として、この作品はかなり早い段階から位置づけが見えやすい。

作品の輪郭

『S.O.S.』は、ソウルとディスコの要素を軸にしたダンス指向のアルバムで、リズムの輪郭がはっきりしている。ベース、ドラム、シンセの役割分担が明快で、ボーカルも前へ出すぎず、ビートの上に気持ちよく乗る構成になっている。聴感上は、後年の洗練された80年代R&Bよりも、まだ生演奏の手触りが残る。とはいえ単なるファンクの延長ではなく、当時のクラブ感覚に寄った整った作りが印象に残る。

この時期のThe S.O.S. Bandは、のちのヒット期に比べると、まだグループの輪郭を固めている段階にある。だが、すでに「踊れるR&B」を中心に据える方針は明確で、曲の展開も過度に複雑ではない。結果として、グルーヴの持続とメロディの分かりやすさが両立している。80年代初頭の同系統の作品、たとえばアーバンなダンスR&Bを志向するバンド群と並べると、こちらはより直線的で、歌とリズムの結びつきが強い印象がある。

注目曲「Take Your Time (Do It Right)」

このアルバムを語るうえで外せないのが「Take Your Time (Do It Right)」である。The S.O.S. Bandの代表曲として知られ、グループの名前を広く浸透させた楽曲でもある。ゆったりしたテンポの中で、リズムが細かく揺れ、歌がその上を滑るように進む作り。派手な展開よりも、同じフレーズの反復で身体を動かすタイプの曲で、ダンスフロア向けの設計がはっきりしている。

実際に聴くと、曲の中心は「急がないこと」にある。タイトルどおり、せかさずに進む感覚がそのまま音になっている。ボーカルの掛け合いも含めて、熱量を上げすぎずに盛り上げるバランスがうまい。80年代R&Bの初期形として見ても、ファンクの硬さとソウルの滑らかさの中間に置かれたような位置にあり、のちの彼らの方向性を決める一曲になっている。

アルバム全体に通じるダンス感覚

『S.O.S.』の魅力は、ヒット曲だけでなく、アルバム全体にダンス志向が通っている点にもある。曲ごとの温度差はあっても、どの曲もリズムの推進力が前提にあり、聴き進めるうちに自然と体が反応する。ディスコの明るさをそのまま引きずるのではなく、もう少しタイトに絞った感触でまとめているところが特徴的である。

また、この作品はThe S.O.S. Bandにとって、後年の成功へつながる入口としても重要である。グループはこの後、より洗練された80年代R&Bの文脈で存在感を強めていくが、その土台にはこのデビュー作で示された、シンプルなグルーヴの強さがある。Tabu Recordsにとっても、看板アーティストの原型がここで立ち上がっている。

同時代の文脈

1980年前後のUS R&Bは、ディスコ以後の整理が進む時期で、ファンク、ソウル、ダンス音楽が互いに近い場所にあった。The S.O.S. Bandの『S.O.S.』は、その交差点にある作品として聴きやすい。後のシンセ主体の80年代R&Bほど機械的ではなく、かといって70年代ソウルほどラフでもない。この中間的な質感が、アルバム全体の輪郭を作っている。

Tabu Recordsの初期カタログを見ても、このグループの存在感は大きい。レーベルがR&Bのヒットを積み上げていく流れの中で、The S.O.S. Bandは中核的な役割を担っていく。その意味で『S.O.S.』は、単なるデビュー盤ではなく、レーベルとグループの両方の方向性を示した出発点として記憶される一枚である。

まとめ

『S.O.S.』は、The S.O.S. Bandの原点をそのまま封じ込めた1980年作であり、ソウルとディスコをつなぐダンスR&Bの初期形として見どころが多い。代表曲「Take Your Time (Do It Right)」を軸に、グループの持つリズム感と、Tabu Recordsが担った80年代R&Bの立ち上がりが同時に見えてくる。派手に語るより、まずはこの時代の空気をそのまま伝える作品として受け止めやすいアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 S.O.S. (Dit Dit Dit Dat Dat Dat Dit Dit Dit) 5:43
  2. A2 What's Wrong With Our Love Affair? 4:51
  3. A3 Open Letter 4:29
  4. A4 Love Won't Wait For Love 5:11
  5. B1 Take Your Time (Do It Right) 7:30
  6. B2 I'm In Love 3:36
  7. B3 Take Love Where You Find It 5:55
  8. B4 S.O.S. (Reprise) 1:50

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