The Treacherous Three - The Treacherous Three (1984)
The Treacherous Three 1984

The Treacherous Three - The Treacherous Three (1984)

Hip Hop Electro

The Treacherous Three『The Treacherous Three』(1984)

Harlem出身のオールドスクール・ヒップホップ・グループ、The Treacherous Threeが1984年に発表したセルフタイトル作。Sugar Hill Recordsからのリリースで、グループ名そのものを冠したアルバムとしては、彼らの初期の動きをまとめて確認できる1枚になっている。Kool Moe Dee、LA Sunshine、Special Kを中心に、DJ Easy Leeを加えた編成で知られる彼らは、1970年代末から1980年代初頭にかけて、ラップの言葉数やフロウの組み立てを大きく前へ進めた存在として語られてきた。

このアルバムを置くべき場所は、まさにSugar Hill Records全盛期の空気の中にある。Grandmaster Flash & The Furious FiveやSugarhill Gangと並んで、初期ヒップホップを広く知らしめたレーベルの看板アクトとして、Treacherous Threeも重要な役割を担っていた。1984年という年は、ヒップホップが12インチ・シングル中心の時代から、アルバム単位でも整理されていく時期に重なる。この作品も、その流れの中でグループの持ち味をまとめた内容として受け取れる。

グループの立ち位置

The Treacherous Threeの名前が特に強く残るのは、Kool Moe Deeの高速で細かいライム運びにある。初期シングルの段階から、彼らは単純な掛け声や反復だけで押し切るスタイルではなく、語尾の処理や韻の連鎖で聴かせる方向へ進んでいた。後のラップに直結する発想が、すでにこの時期の時点でかなり明確に表れている。

その意味で本作は、単なるアルバムというより、初期ヒップホップの文法がどのように固まっていったかを示す資料性も持つ。Run-D.M.C.のようなラフな硬さとも、Grandmaster Flash & The Furious Fiveの社会性とも少し違い、Treacherous Threeは言葉の運動量そのものを前面に出している印象が強い。Sugar Hill周辺の作品群の中でも、ラップの技術を聴かせる比重が高い部類に入る。

サウンドとアルバムの流れ

ジャンル表記はHip Hop、スタイルはElectro。実際、この時代のSugar Hill作品らしく、リズムボックスやシンセベースを軸にした、軽快で機械的なビート感が土台になっている。生バンド的な厚みよりも、打ち込みの反復と声の勢いで進むタイプで、クラブ向けの推進力がはっきりしている。音の隙間が多いぶん、ラップの細部が前に出やすい作りでもある。

アルバム全体では、派手な展開で押すというより、トラックごとにラップの切れ味を見せる構成。Treacherous Threeの持ち味は、フックの分かりやすさだけでなく、複数MCの掛け合いが生むリズムの揺れにある。声が重なる場面では、単独MCの勢いとは違う、グループならではの密度が出る。聴き進めるほど、その密度がこのグループの核だと分かる。

注目曲「UFO」

収録曲の中でも特に知られているのが「UFO」。一部のコピーには「Also includes hit single UFO」と書かれたヒップステッカーが付いていたという記録があり、この曲が当時の目玉扱いだったことがうかがえる。A3に収録されているが、ジャケット表記には載っていない点も、この盤ならではの小さな特徴になっている。

「UFO」は、タイトルの通りSF的なイメージを持ちながらも、実際には初期ヒップホップらしい言葉遊びと反復の快感で押していくタイプの曲。トラックの作りはシンプルだが、そのぶんラップの切り替えや掛け合いがよく見える。Kool Moe Deeの精密なライム感を軸に、グループとしての勢いをそのままパッケージしたような1曲で、Sugar Hill期の代表的な空気が端的に出ている。

収録曲の聴こえ方

このアルバムを通して聴くと、Treacherous Threeが単なる“速いラップのグループ”ではないことが分かる。テンポの速さだけでなく、間の取り方や語尾の置き方に工夫があり、声を楽器のように扱っている印象がある。Electro寄りのトラックに対して、ラップが前へ出たり、少し引いたりするバランスも面白い。

また、Sugar Hillの同時代作と比べると、華やかなパーティー感だけに寄らず、MCの技量を見せることに重心がある。Grandmaster Flash & The Furious Fiveのようなメッセージ性中心の作品とも、Sugarhill Gangのようなポップな浸透力とも別の方向で、ラップそのものの密度を押し出している。ヒップホップが“曲”としても“技術”としても整っていく途中の感触が、そのまま残っている。

この作品の位置づけ

1984年の『The Treacherous Three』は、グループの初期の評価をまとめ直す意味合いが強い作品として捉えやすい。1980年代初頭のシングル群で築いた名前を、アルバムという形で確認できる1枚でもある。後年にヒップホップがより重く、より街の現実へ寄っていく前の段階で、ラップの語り口そのものを更新していたことが、ここではよく見える。

初期ヒップホップの流れを追ううえで、Sugar Hill Recordsのカタログは外せない。その中でもThe Treacherous Threeは、フロウの進化を語るときに必ず引き合いに出されるグループのひとつで、本作はその輪郭をアルバム単位で確かめられる内容になっている。1984年時点の空気感、Harlem発のMC文化、そしてSugar Hillのエレクトロな質感。その3つが交わる場所にある作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Get Up 6:05
  2. A2 Turning You On 6:10
  3. A3 U.F.O. 6:50
  4. B1 The Body Rock 7:27
  5. B2 Feel The Heartbeat 5:22
  6. B3 At The Party 7:22

動画

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