The Trip - Caronte (1971)
The Trip『Caronte』――イタリアン・プログレへ踏み込んだ1971年作
The Tripは、イタリアで活動した英伊混成のロック・バンドで、初期にはリッチー・ブラックモアが在籍していたことでも知られるグループだ。1960年代末から70年代初頭にかけて、英語圏のメンバーとイタリア人メンバーが交わる形で独自の編成を作り、RCAと契約して作品を残していった。その2作目にあたるのが『Caronte』で、1971年のオリジナル・リリースとして位置づけられる。
この作品は、前作で見えていたブルース寄りのロックから、より明確にプログレッシブ・ロックへ寄った内容でまとまっている。中心にいるのはジョー・ヴェスコヴィのオルガンとキーボードで、ギター主導だった初期の印象から一歩進み、鍵盤が曲の骨格を作る場面が増えている。イタリアン・プログレの初期作品として語られることが多いのも、この変化がはっきりしているからだろう。
作品の流れと聴きどころ
アルバムは長尺曲を軸にした構成で、冒頭の「Caronte I」からすでに緊張感のある展開が続く。タイトル通り、ダンテの『神曲』に出てくる冥界渡しのカロンを思わせる題材で、曲の進行にも重い空気と劇的な切り替えがある。単に音を厚くしただけではなく、クラシカルなフレーズを取り込んだことで、バンドの輪郭が前作よりはっきりした印象を受ける。
中盤の「Two Brothers」も重要な曲だ。長い演奏時間の中で、オルガン、ギター、リズム隊が順に前へ出てきて、曲の流れを少しずつ組み立てていく。演奏の熱量に頼りきらず、パートごとの切り替えで場面を動かしていく作りで、当時の英国プログレ、たとえばKing CrimsonやEmerson, Lake & Palmerと比較されることがあるのも納得できる内容だ。
歌ものとして耳に残る小曲で押すタイプではなく、組曲的な構成と展開の積み重ねで聴かせるアルバムである。収録曲ごとの役割がはっきりしていて、全体として一つの流れを作る点にこの時期のプログレらしさが出ている。
The Tripにおける位置づけ
The Tripは、もともと英語圏のメンバーを含みながらイタリアで活動し、デビュー作ではロック・ブルース色の強い演奏を聴かせていた。そこから『Caronte』では、ジョー・ヴェスコヴィの存在感がさらに増し、バンドの方向性がはっきり変わる。後の『Atlantide』ではさらに鍵盤主体のサウンドへ進むが、その前段階として『Caronte』は重要な橋渡しになっている。
メンバー変動の多いバンドだったが、この時期の編成は比較的安定しており、そのまとまりがアルバムの完成度にもつながっている。The Tripの中でも、単なる初期作ではなく、バンドの個性が最初に明確になった作品として見られている。
1971年盤について
ここで扱っているのは1990年プレスのイタリア盤で、レーベルはRCA Italiana、型番はNL 74299。ゲートフォールド仕様で、ラベル表記にはNL 74299とAKAY 26056/7が確認できる。オリジナルの1971年作を後年に再プレスした盤なので、当時の初回盤とは物理的な仕様が異なるが、収録内容そのものは1971年の作品をそのまま伝えるものだ。
イタリアン・プログレの文脈で見ると、『Caronte』は大きな派手さよりも、バンドの編成変化と演奏の整理によってサウンドを前進させた一枚として残る。英伊混成バンドならではの空気感と、イタリア側のロック・シーンの熱が交わった時期の記録でもある。The Tripのキャリアの中では、初期のロックからプログレへの移行点に置かれる作品であり、後続作への流れを作ったアルバムとしても重要だ。
トラックリスト
- A1 Caronte I
- A2 Two Brothers
- B1 Little Janie
- B2 L'Ultima Ora E Ode A J. Hendrix
- B3 Caronte II