The Verve - A Northern Soul (1995)
The Verve 1995

The Verve - A Northern Soul (1995)

Rock Psychedelic Rock Indie Rock Blues Rock Alternative Rock

The Verve『A Northern Soul』について

『A Northern Soul』は、イギリスのロック・バンド、The Verveが1995年に発表した2作目のアルバムである。Wigan出身の4人組として90年代前半に登場した彼らは、初期にはギターの残響や空気感を強く押し出した音で知られたが、この作品ではその輪郭がよりはっきりし、曲の構成や演奏の押し出しも前作より前面に出ている。Hut RecordingsからのUK盤で、銀色のスペキュラー仕様のジャケット、印刷インナー付きという仕様も目を引く一枚だ。

The Verveの位置づけで見ると、このアルバムは後の成功作『Urban Hymns』へ至る前段階にある重要盤といえる。デビュー時の浮遊感あるサウンドから、よりロック・バンドらしい手触りへ向かう途中の作品で、当時のブリットポップ周辺とも距離を保ちながら、オルタナティヴ・ロックやブルース・ロック、サイケデリック・ロックの要素を自分たちの形にまとめている。単に流行に寄った作品ではなく、バンドの演奏力と曲の重さがはっきり残るアルバムという印象が強い。

作品全体の流れ

冒頭から空気を切り裂くような派手さはなく、まずはリフ、ベース、ドラムの粘りで引っ張る曲が続く。音数は多すぎず、しかし隙も少ない。Richard Ashcroftの歌は、後年の大きなメロディを持つ歌唱よりも、まだ内側に熱を溜めたような響きが強い。Nick McCabeのギターは、単なる伴奏ではなく、曲の輪郭を決める役割を担っていて、音が伸びる瞬間にバンド全体の温度が上がる構造になっている。

この時期のThe Verveは、同時代の英国ロックの中でも少し位置がずれている。Oasisのような大合唱型の明快さとも、Blurのような皮肉や都市感とも違い、もっと地面に近い感触がある。Stone Roses以降の流れや、My Bloody Valentine以後のギターの質感を引きずりつつ、楽曲自体はより骨太に組み立てられている。そうした意味で、90年代半ばの英国ロックを横断しながら、独自の重心を保った作品として聴こえる。

注目曲「This Is Music」

『A Northern Soul』を語るうえで外せないのが「This Is Music」である。アルバムの中でも特に前へ出る曲で、タイトル通り音そのものを掲げるような勢いがある。リフの反復とリズムの圧で押し切るタイプの曲だが、単純な直線ではなく、途中で熱が膨らんだり引いたりする。The Verveの持つストイックさと、ライブで鳴らしたときの強さがそのまま閉じ込められているような一曲だ。

ここでのAshcroftの歌は、のちの代表曲に比べるとまだ荒さが残るが、そのぶん言葉の切れ味が直接届く。曲の持つ推進力は、アルバム全体の空気を決める役割も大きい。『A Northern Soul』が単なる内省的な作品ではなく、バンドとして前に出る意思を持った作品であることを示す中心曲といえる。

注目曲「On Your Own」

シングル曲の「On Your Own」も、このアルバムの性格をよく表している。メロディは比較的掴みやすいが、演奏は軽く流れず、どこか張りつめた感じを保っている。サビで一気に開くというより、曲全体の圧力で聴かせるタイプで、The Verveらしい陰影が残る。派手なヒット感よりも、反復の中で少しずつ熱が増していく構成に耳が向く。

この曲を聴くと、バンドが後の時代に見せる大きなスケール感の手前で、すでにメロディと重さの両立を試していたことがわかる。ギターの広がり、リズムの粘着質な動き、歌の持つ切迫感が一体になっていて、アルバム中でも印象に残りやすい一曲だ。

アルバムの聴きどころ

『A Northern Soul』の魅力は、1曲ごとの強さだけでなく、通して聴いたときの緊張感の持続にある。静かに始まっても、どの曲も途中で重心を下げ、音の密度を上げていく。ブルース・ロック由来の粘りと、オルタナティヴ・ロックの硬さが同居していて、サイケデリック・ロック的な広がりはあっても、夢見心地に流れすぎない。あくまでバンドの演奏が軸にある。

オリジナルのUK盤では、印刷インナーと銀色のジャケット仕様が作品の物理的な印象を強めている。音楽そのものも、華美な装飾より、質感と重みで記憶に残るタイプだ。The Verveのディスコグラフィーの中では、初期の実験性と後年の大きな成功のあいだをつなぐ、重要な節目として位置づけられる作品である。

まとめ

『A Northern Soul』は、The Verveが90年代英国ロックの中で独自の存在感を固めていく過程を示すアルバムだ。曲はどれも勢いだけで押し切らず、演奏の重さと構成の粘りで聴かせる。派手な即効性より、アルバム全体でじわじわ輪郭が立ってくるタイプの一枚として、今も存在感を保っている。

トラックリスト

  1. A1 A New Decade 4:12
  2. A2 This Is Music 3:36
  3. A3 On Your Own 3:34
  4. A4 So It Goes 6:11
  5. B1 A Northern Soul 6:32
  6. B2 Brainstorm Interlude 5:11
  7. B3 Drive You Home 6:42
  8. C1 History 5:26
  9. C2 No Knock On My Door 5:12
  10. C3 Life's An Ocean 5:44
  11. D1 Stormy Clouds 5:35
  12. D2 (Reprise) 6:11

動画

Share
記事一覧に戻る
toast