The Waitresses - Wasn't Tomorrow Wonderful? (1982)
The Waitresses 1982

The Waitresses - Wasn't Tomorrow Wonderful? (1982)

Electronic Rock Pop New Wave

The Waitresses『Wasn't Tomorrow Wonderful?』について

The Waitressesは、オハイオ州アクロンで結成され、その後ニューヨークへ拠点を移した実験的なポストパンク/ニューウェイヴ・バンドだ。中心人物はChris Butlerで、そこにPatty Donahueの歌声が加わることで、皮肉や観察眼のある楽曲が前に出るグループとして知られている。1982年に出た『Wasn't Tomorrow Wonderful?』は、その時点での彼らの方向性をまとめた作品として見やすい一枚で、電子的な要素、ロック、ポップの接点に置かれている。

この日本盤はPolydorからのリリースで、カタログ番号は28MM 0173。1982年のオリジナル盤と同年の盤なので、作品そのものを同時代の空気の中で捉えやすい。Polydorは当時すでに国際的なレーベルとして機能しており、日本盤でもその体裁が整っている。The Waitressesのようなバンドが日本で正規に流通していたこと自体、ニューウェイヴ周辺の音楽が広く受け止められていた時代背景をよく示している。

作品の位置づけ

『Wasn't Tomorrow Wonderful?』は、The Waitressesのアルバムとしては初期の重要作にあたる。彼らは一部のシングルで広く知られるが、この作品ではバンドとしての輪郭がよりはっきり出る。鋭い言葉運び、乾いた演奏、軽く跳ねるリズム、そしてシンセやサックスが入り込む編成が、いかにも80年代初頭のニューウェイヴらしい。とはいえ、単に当時の流行に乗っただけの音ではなく、曲ごとの温度差や視点のずれがはっきりしているところに特徴がある。

同時代のバンドで言えば、Talking Headsのような知性寄りのポップ感、Lounge Lizards周辺に通じるひねり、あるいはB-52'sのような軽妙さを連想する場面もある。ただしThe Waitressesは、より日常の会話や感情のズレを切り取る方向に寄っていて、Patty Donahueの語り口がその核になっている。

注目曲「I Know What Boys Like」

この曲はThe Waitressesを語るうえで外しにくい代表曲だ。シングルとしても知られ、バンドの名前を広げた一曲として扱われることが多い。曲の骨格はシンプルだが、そこに乗るボーカルがかなり個性的で、親しみやすさと距離感が同時にある。歌詞の内容は軽く聞こえる場面もあるが、実際には視線の置き方がかなり計算されていて、単純なガール・ポップには収まらない。

演奏面では、リズムが前に出すぎず、しかし止まらず進む感じがある。ギター、キーボード、ベース、ドラムの配置が整理されていて、音数のわりに見通しがいい。聴き進めると、フックの強さだけでなく、言葉の置き方と間の取り方が曲の印象を決めていることがわかる。The Waitressesの持ち味を一番わかりやすく示す曲のひとつだろう。

注目曲「Christmas Wrapping」

『Wasn't Tomorrow Wonderful?』の文脈で語られることの多い代表曲が「Christmas Wrapping」だ。季節曲でありながら、単なるイベント曲にとどまらず、都市生活の断片やすれ違いをそのまま切り取ったような作りになっている。リリース当時から長く親しまれてきたのも、この曲が持つ具体性によるところが大きい。

楽曲は、クリスマスという題材を使いながら、華やかさ一辺倒には進まない。むしろ日常の延長線上にある気分で進行し、そこにThe Waitressesらしい少し乾いた視点が乗る。バンド全体としても、この曲は代表例として扱われやすく、アルバムの中でも外に開かれた入口になっている。

サウンドの聴きどころ

このアルバムの面白さは、ニューウェイヴの枠内にありながら、演奏がかなり整理されている点にある。派手な技巧で押すのではなく、短いフレーズや反復で場面を作っていく。サックスや鍵盤が入ることで、ギターバンド的な硬さだけに寄らず、少しひねった都会的な空気が生まれている。

Patty Donahueのボーカルも重要だ。感情を大きく盛り上げるというより、言葉を置くことで曲の輪郭を作るタイプで、そのため歌詞の意味が前に出やすい。The Waitressesはこの声によって、同時代のニューウェイヴ・バンドの中でもかなり識別しやすい存在になっている。聴感上の派手さより、語りとリズムの噛み合いで引っ張る作品だ。

日本盤として見ると

1982年の日本盤という点では、作品がほぼ同時期に紹介されているのがポイントだ。後年の再発と違って、当時のニューウェイヴの流れの中で受け止められた盤として見やすい。Polydorの国際的な流通網の中に置かれたことで、The Waitressesのようなバンドがアメリカ本国だけでなく海外でも自然に並ぶ状況があったことがわかる。

『Wasn't Tomorrow Wonderful?』は、The Waitressesのユーモア、観察眼、そして少しだけ冷めた視点がまとまった一枚だ。ヒット曲で耳に入った人にも、アルバム単位で聴くと別の表情が見えやすい作品だと言える。ニューウェイヴの中でも、軽さと計算、親しみやすさと距離感が同居しているところが、この盤の印象として残る。

トラックリスト

  1. A1 No Guilt
  2. A2 Wise Up
  3. A3 Quit
  4. A4 It's My Car
  5. A5 Wasn't Tomorrow Wonderful?
  6. B1 I Know What Boys Like
  7. B2 Heat Night
  8. B3 Redland
  9. B4 Pussy Strut
  10. B5 Go On
  11. B6 Jimmy Tomorrow

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