The xx - xx (2009)
The xx 2009

The xx - xx (2009)

Rock Indie Rock Shoegaze

The xx『xx』レビュー

2009年にUK & Europeで登場したThe xxのデビュー作『xx』は、ロンドン・ワンズワース出身の4人組が最初に提示した作品である。バンド名は常に小文字の「xx」で表記され、当時のインディー・シーンの中でもかなり早い段階で輪郭を持っていた。ギター、ベース、ビート、キーボードを軸にしながら、音数を抑えた編成で曲を組み立てるスタイルが、この時点ですでに明確になっている。

録音は2008年12月から2009年4月にかけてXL Studios, West Londonで行われ、ミックスも同じスタジオで進められた。マスタリングはThe Exchange, Camden。Young Turksからのリリースで、ジャケットはダイカット仕様、折りたたみポスター型の歌詞インサート付き。初期盤らしい作り込みがある一方で、音の設計はきわめて簡潔で、余白の多さがそのまま作品の性格になっている。

作品全体の印象

『xx』は、派手な展開を重ねるタイプのアルバムではない。むしろ、ボーカルの距離感、ベースの低域、ギターの短いフレーズ、ビートの間合いが、曲ごとに静かに配置されていく作り。聴いていると、音が鳴っていない部分の存在感がかなり大きい。男女のツイン・ボーカルが前に出る場面でも、歌い上げるというより、互いに近い距離で言葉を置いていくような印象が残る。

2009年前後のインディー・ロックの流れの中では、The xxはかなり独自の位置にいた。ギターバンドでありながら、リズムの置き方や空間の使い方にR&Bやエレクトロニック・ミュージックの感触がにじむ。シューゲイズやインディー・ロックの文脈に置かれることも多いが、いわゆる轟音の方向ではなく、音を減らして輪郭を立てる側。後年のThe xxの方向性を考えると、このデビュー盤は出発点としての意味がかなり大きい。

「Intro」— アルバムの入口としての機能

冒頭曲「Intro」は、タイトル通り作品全体の入口を示す短いインストゥルメンタルである。ビート、ギター、ベースが少しずつ重なり、すぐに大きくはならないまま、アルバムの温度を決めていく。ここで分かるのは、この作品が“盛り上げる”ことよりも、“引き込む”ことを優先している点だろう。最初の数十秒で、The xxの音の置き方がかなりはっきり伝わる。

この曲は単独で完結するというより、以降の曲の静けさを受け入れるための準備として働く。アルバムを通して聴くと、派手な導入ではないのに、結果的にかなり記憶に残る。デビュー作の冒頭として、バンドの美学を端的に示す役割を果たしている。

「Crystalised」— 代表曲としての強さ

『xx』を語るうえで、「Crystalised」は外せない代表曲の一つである。男女のボーカルが近い距離で交差し、メロディは抑制されているのに、フックはしっかり残る。ベースラインは前に出すぎず、それでも曲の重心を支える。ギターは装飾よりも輪郭づけに近く、全体として非常に整理された印象を受ける。

この曲の強さは、感情を大きく押し出さないまま、関係性の緊張をそのまま音にしているところにあるように思える。歌詞の内容を細かく追わなくても、声の重なりと間の取り方だけで、やり取りの空気が見えてくる。The xxの初期像を最も分かりやすく伝える曲の一つで、アルバムの入口から中核へ自然につながる存在。

「Islands」— 低温のまま残るフック

「Islands」もこの作品を象徴する曲として知られている。リズムは控えめで、音の密度も高くない。それでも、サビに入ったときの抜け方がはっきりしていて、静かなまま引っかかる。The xxの曲は、音数が少ないぶん、ひとつひとつの音の位置がよく見えるが、「Islands」はその特徴が特に分かりやすい。

聴き進めると、曲が大きく変化しなくても、細かな配置の違いで印象が変わることが分かる。ボーカルの距離感、ギターの短い応答、ベースの沈み方。そうした要素が積み重なって、派手ではないのに耳に残る。アルバム全体の中でも、The xxらしさを端的に示す一曲として機能している。

「VCR」— 生活感のある題材とミニマルな設計

「VCR」は、タイトルの時点で日常の物を切り取っていて、曲の作りもそれに沿っている。大きく展開するというより、短いフレーズの反復で空気を保つタイプ。The xxの初期曲に共通する、近い距離で語るような雰囲気がよく出ている。ベースとドラムの関係も明快で、リズムが前へ押し出すというより、一定の速度で曲を進めていく。

この曲を聴くと、The xxが当時のインディー・ロックの中で、かなり生活の近い感覚を持ち込んでいたことが分かる。大きな物語を語るより、部屋の中の空気や、日常の会話の余韻に近いものを音にしているような作り。アルバムの中で、静かな緊張感を保つ役割も担っている。

ボーナス・トラック「Hot Like Fire」

この盤には、Aaliyahの「Hot Like Fire」をカバーしたボーナス・トラックが収録されている。原曲が持つR&B的な流れを、そのまま厚く再現するのではなく、The xxらしい余白の多い設計へ寄せている点が興味深い。バンドの音楽性に、インディー・ロック以外の感触が早い段階から含まれていたことを示す一曲でもある。

アルバム本編と並べて聴くと、このカバーは作品の射程を少し広げている。The xxの音作りが、ギターバンドの枠だけでは収まりきらないことが、ここでかなりはっきり見えてくる。ボーナス収録ながら、単なる付け足しというより、初期像を補強する役割がある。

位置づけとまとめ

『xx』は、The xxの最初のアルバムであると同時に、以後の活動の核になる方法論をほぼ完成形に近いかたちで示した作品でもある。2009年の時点で、ここまで音を削ぎ落として、なおメロディと感情の輪郭を残すギターバンドは、かなり目立つ存在だったはずだ。バンド内ではこの年の11月にBaria Qureshiが脱退しているが、少なくともこのアルバムには4人編成時代の空気が刻まれている。

同時代のインディー・ロックと比べても、『xx』は明快な派手さより、音の間、低い温度、近い声で印象を残すタイプの作品として聴こえる。代表曲の「Crystalised」や「Islands」を軸にしつつ、全編がほぼ同じ設計思想で貫かれているため、アルバム単位でのまとまりも強い。デビュー作としての初々しさと、完成度の高さが同居した一枚、という見方がしやすい。

トラックリスト

  1. A1 Intro
  2. A2 VCR
  3. A3 Crystalised
  4. A4 Islands
  5. A5 Heart Skipped A Beat
  6. A6 Hot Like Fire
  7. B1 Fantasy
  8. B2 Shelter
  9. B3 Basic Space
  10. B4 Infinity
  11. B5 Night Time
  12. B6 Stars

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