Thelma Houston - The Devil In Me (1977)
Thelma Houston 1977

Thelma Houston - The Devil In Me (1977)

Funk / Soul Soul Disco

Thelma Houston『The Devil In Me』レビュー

Thelma Houstonの『The Devil In Me』は、1977年にMotown傘下のTamlaから出たアルバムで、ソウルとディスコが強く結びついていた時代の空気をそのまま閉じ込めた作品だ。Thelma Houstonは、のちに「Don't Leave Me This Way」の大ヒットで広く知られるが、この時期の彼女はすでにR&Bシーンで確かな歌唱力を持つシンガーとして位置づけられていた。『The Devil In Me』は、そのキャリアの中でも、70年代後半のダンス・ミュージック寄りの感覚が前面に出た一枚として聴ける。

レーベル表記はTamla、録音とミックスはMotown Recording Studios, Hollywood, California。クレジットを見ると、Holland-Dozier-Holland系の制作が含まれており、Motownの伝統と70年代ディスコの接続が意識された制作体制がうかがえる。なお、このUS盤はSuperior Record Pressing Corp., Somerdale, NJによるプレスで、ラベルの黒いフォント印刷が特徴になっている。

作品の位置づけ

Thelma Houstonのディスコ期を語るうえで、このアルバムは重要な位置にある。翌1978年には「Don't Leave Me This Way」が大きな成功を収めるが、その前段階として、彼女がダンスフロア向けの楽曲を自分の表現に取り込んでいく流れが見える。単にテンポの速い曲を並べた作品ではなく、ソウルの歌唱を土台にしながら、当時のクラブ文化に対応した構成になっている点が印象的だ。

70年代後半のMotown系作品は、同時代のアーティストでいえばDiana RossやGloria Gaynor、Donna Summerらが開いたディスコの潮流と並べて語られることが多い。『The Devil In Me』もその文脈に置けるが、Thelma Houstonの持ち味は、あくまで声の押し出しとフレーズの明確さにある。華やかな装飾よりも、歌そのものの強度で引っ張るタイプの作品だ。

タイトル曲「The Devil In Me」

アルバムの核となるのはやはりタイトル曲「The Devil In Me」だ。リズムの推進力が前に出ていて、ベースラインと打点のはっきりしたビートが、Thelma Houstonのボーカルを支える。歌い方はソウルの語法を保ちながらも、ディスコの反復感に自然に乗っていく。感情の起伏を大きく見せるというより、一定の熱量を保ったまま押し切るタイプの曲で、70年代後半のダンス・ソウルらしい設計だ。

この曲は、Thelma Houstonが持つ「強い声」がどの方向に使われていたかを示す例でもある。ハイテンション一辺倒ではなく、リズムの上で言葉をしっかり置いていくことで、曲の輪郭がくっきりする。Motownらしい整った録音と、ディスコ寄りのグルーヴが噛み合った1曲として聴ける。

アルバム全体の聴こえ方

収録曲は、ソウルの伝統を残しつつ、70年代後半のクラブ向けサウンドへ寄せた内容になっている。制作クレジットにはStone Diamond Music Corp.、Jobete Music Co., Inc.、Holland-Dozier-Holland Music, Inc.など、Motown周辺の作家・出版の名前が並ぶ。こうした背景からも、単なる流行追従ではなく、Motownの資産をディスコ時代にどう接続するかという意図が見えやすい。

録音場所がMotown Recording Studios, Hollywood, Californiaであることも、この作品の輪郭をはっきりさせている。音の作りは、ラジオ向けの整った仕上がりと、ダンスフロアで機能する推進力の両方を意識したものに感じられる。Thelma Houstonの歌は、その中で埋もれずに前へ出る。大きなビートに対して声が負けない、というより、声がビートをまとめていくような印象だ。

同時代との関係

1977年という年は、ディスコが一気に大衆化していく時期でもある。『The Devil In Me』は、その波の中で作られた作品として、ソウル歌手がディスコへどう向き合ったかを示す一枚といえる。Donna Summerのようなヨーロッパ的なプロダクション主導の作品とも、Diana Rossの洗練されたポップ・ソウルとも少し違い、Thelma Houstonの場合は、R&Bシンガーとしての身体感覚がそのままダンス・ミュージックに接続されている。

結果として、このアルバムは「ディスコ化したソウル」ではなく、「ソウルの歌い手がディスコの形式を使った作品」として聴きやすい。Thelma Houstonのディスコ期を追うなら、ここはその前提を作った作品として押さえやすい一枚だ。

まとめ

『The Devil In Me』は、Thelma Houstonのキャリアの中で、70年代後半のダンス・ソウルへしっかり踏み込んだアルバムだ。タイトル曲を中心に、Motownの制作環境、Holland-Dozier-Holland周辺の作家性、そしてThelma Houstonの力強い歌唱が一体になっている。派手な逸話よりも、当時のソウルとディスコの接点をそのまま記録した作品として見ると、輪郭がつかみやすい。

1977年のUS Tamla盤という点でも、Motownがディスコ時代にどのような音作りをしていたかを知る手がかりになる。Thelma Houstonの大きな転機の直前に置かれたアルバムとして、彼女の歌がどのように時代のビートに乗っていたかを確認できる一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 I'm Here Again 6:31
  2. A2 It's Just Me Feeling Good 4:23
  3. A3 I Can't Go On Living Without Your Love 4:32
  4. A4 Triflin' 4:01
  5. B1 Give Me Something To Believe In 3:59
  6. B2 Memories 4:12
  7. B3 I've Got The Devil In Me 6:26
  8. B4 Baby, I Love You Too Much 2:52
  9. B5 Your Eyes 3:11

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