Vinyl Record Reviews
A Tribe Called Questは、ニューヨーク州クイーンズで結成されたヒップホップ・グループだ。メンバーはQ-Tip、Ali Shaheed Muhammad、Jarobi White、Phife Dawgで、のちにQ-TipはKamaal Fareedとしても知られるようになる。1988年に高校時代のつながりから始まり、Native Tongues Posseの一員として活動した。
デビューは1989年の「Description Of A Fool」。その後、1990年の「Bonita Applebum」、続く「Can I Kick It?」で広く知られるようになった。初期からジャズのサンプルやファンク、ソウルを取り入れた作りで、当時のヒップホップの中でも輪郭がはっきりしたグループだった。
A Tribe Called Questの名前と一緒に語られることが多いのが、ジャズ寄りのトラック作りだ。ビートは派手に押し出すというより、細かいサンプルの組み合わせで組み立てられている。Ron Carterのようなジャズ奏者の参加もあり、単なる“ジャズっぽいラップ”ではなく、実際のジャズの流れを取り込んだ作品が多い。
「The Low-End Theory」では、ブーン・バップ系のビートにジャズ、ファンク、ソウルの断片を合わせる作りが前面に出た。サンプルの使い方も比較的抑えめで、Lou Reed、Stevie Wonder、Earth, Wind & Fireなどの音源を必要な場所に置くような感覚がある。ラップの内容も、仲間内のやり取りや日常の感覚、社会的な話題まで幅がある。
「Midnight Marauders」では、その路線がさらに整理され、完成度の高いアルバムとして評価された。後期の「Beats, Rhymes and Life」や「The Love Movement」では、言葉の運びやテーマの扱いがより整理され、以前の作品より落ち着いた印象もある。
1990年代前半に代表作を重ねたあと、グループは一度活動の間隔が空く。2000年代には再結成ツアーが行われ、2011年にはドキュメンタリー映画「Beats, Rhymes & Life: The Travels of A Tribe Called Quest」が公開された。この作品では、2008年や2010年の再結成ツアーの様子に加えて、Q-TipとPhife Dawgのあいだにあった確執も映されている。
その後、2016年に「We Got It From Here... Thank You 4 Your Service」を発表した。これは「The Love Movement」から約18年ぶりのアルバムで、Phife Dawgがレコーディング途中の2016年3月22日に亡くなったあとに完成した作品だ。リリース後は批評面でも支持を集めた。
グループはそのほか、Billboard R&B/Hip-Hop AwardsのFounders Award、VH1 Hip-Hop Honorsでの表彰、2017年のBrit Award for International Groupなどを受けている。2024年にはRock & Roll Hall of Fame入りも果たした。
Phife Dawgは、A Tribe Called Questの中でQ-Tipとは別の視点を持ち込む役割が大きかった。ラップの内容にも個人の感情や日常の距離感が出ていて、グループ内の会話のようなやり取りを作っていた。2011年のドキュメンタリーでは、Q-Tipへの不満や、グループの表に立つ存在としての扱いに関する緊張も見える。
また、Phife Dawgは1990年に1型糖尿病と診断され、2000年から透析、2008年には腎移植を受けている。2016年3月22日に糖尿病の合併症で亡くなった。最終作の制作中だったこともあり、「We Got It From Here... Thank You 4 Your Service」は、グループの最後の時期を記録した作品として受け止められている。
A Tribe Called Questは、Conscious Hip HopとJazzy Hip-Hopの両方でよく名前が挙がるグループだ。政治的なメッセージを前面に出すタイプというより、言葉の選び方やビートの組み方で知性や落ち着きを見せる場面が多い。Native Tongues Posseの中でも、De La SoulやJungle Brothers、Queen Latifahらと並んで、90年代ヒップホップの別の流れを形にした存在として見られている。
作品を追うと、初期の遊び心のある作風から、より整理されたアルバム制作、そして再結成後の現実的なテーマへと変化している。ドキュメンタリー映画やPhife Dawgの闘病の経緯まで含めて見ると、音楽だけでなく、グループ内の関係や時間の流れも含めて記録されているアーティストだ。
公式サイトやYouTube、Instagram、X、AllMusic、Genius、WhoSampledなどでも作品情報やサンプルの出典をたどれるので、アルバムごとの作り方を細かく追いたい人には見どころが多い。