Vinyl Record Reviews
Dr. Alimantadoは、ジャマイカ出身のシンガー、プロデューサー、デジュイです。本名はウィンストン・ジェイムズ・トンプソン。1952年にキングストンで生まれ、若いころからラスタファリの信仰に入りました。ジャンルはレゲエで、スタイルとしてはダブ、レゲエ、トースティングにまたがっています。
活動初期は、コクソン・ドッドの「Downbeat」をはじめとするサウンドシステムで経験を積みました。その後、Winston Price、Winston Cool、Ital Winston、Youth Winstonなど複数の名義で録音を重ねています。若い時期から名前を変えながら作品を残していた点は、ジャマイカの音楽現場らしい動き方でもあります。
プロフィール情報では、本人がItal、Ital Sounds、Vital Foodなどのレーベルや関連プロジェクトを運営していたことも確認できます。演者としてだけでなく、制作や発信の面でも動いていた人物です。
1976年12月26日、Dr. Alimantadoはキングストン市内でバスにひかれて大きなけがを負いました。本人の説明では、ドレッドロックスを伸ばして歩いていたことに運転手が腹を立て、故意に起こされた事件だったとされています。この体験をもとにした曲が「Born For A Purpose」です。
この曲はChannel Oneスタジオでのフリーセッションから録音され、逆境を生き抜く内容の歌として英国で広く知られるようになりました。セックス・ピストルズのジョニー・ロットンが彼を高く評価したことでも知られています。さらに、The Clashの1979年の楽曲「Rudie Can't Fail」では、歌詞の中で「born for a purpose」というフレーズが引用されています。
1978年の『Best Dressed Chicken In Town』は、Dr. Alimantadoを語るうえで外せない作品です。Greensleevesから出たこのアルバムは、1972年から1978年にかけて自主制作した楽曲をまとめたコンピレーションです。
制作面では、リー・“スクラッチ”・ペリー、キング・タビー、サイエンティストらがエンジニアリングを担当しています。収録曲では、ジョン・ホルト、グレゴリー・アイザックス、ジャッキー・エドワーズ、ホレス・アンディといった歌い手の曲に、Dr. Alimantadoがトースティングを重ねる形が中心です。ルーツ・レゲエの歌に、語りを前面に出したスタイルを組み合わせた作品として扱われています。
Dr. Alimantadoは、歌うだけのアーティストというより、サウンドシステムの現場で育った表現者として見ておくと整理しやすいです。録音作品では、既存のリズムや歌に対して言葉をどう置くかが重要になっていて、そのやり方が彼の個性になっています。
「Born For A Purpose」が英国で広く聴かれたことや、パンク周辺のアーティストから評価されたことからも、Dr. Alimantadoの音楽がジャマイカ国内だけにとどまっていないことがわかります。The Clashの楽曲への引用も含めて、レゲエと英国ロックの接点に置かれることが多い人物です。
一方で、彼の中心にあるのはジャマイカのレゲエ文化です。サウンドシステム、トースティング、ダブ、そしてラスタファリ的な視点が、そのまま活動歴に結びついています。レゲエの中でも、言葉の運び方と現場感覚を重視するタイプのアーティストとして押さえておくと理解しやすいです。