Vinyl Record Reviews
Hareton Salvaniniは、1942年9月25日にサンパウロ州ボールーで生まれたブラジルの音楽家だ。作曲家、ピアニスト、アレンジャー、指揮者として活動し、映画音楽やCMのジングル制作でも知られている。ジャンル表記ではJazz、Folk、World, & Country、Latinが並び、スタイルはMPBに分類されている。
ウェブ上の情報では、父Luwino Salvaniniが音楽家で、Hareton Salvaniniはその影響を強く受けて育ったとされる。3歳のころには、すでにオーディション形式の子供番組に出演していたという記録がある。かなり早い時期から人前で演奏や歌に関わっていたことがわかる。
その後はTV Tupiが主催したポピュラー音楽祭で注目を集め、1970年代にはTV Bandeirantesの番組「Mambembe」でオクテットを率いて演奏していた。テレビ番組や音楽祭を通じて活動の幅を広げていたことがうかがえる。
Salvaniniは演奏家としてだけでなく、作曲や編曲、指揮の分野でも活動した。映画音楽やCMのジングル制作を手がけていた点も特徴的だ。短い尺で印象を残す仕事と、映像作品に合わせて音を組み立てる仕事の両方をこなしていたことになる。
1970年には弟とともにシングル「KM 110」を発表している。この作品は、サイケデリック・ポップ、バロック・ポップ、ジャズ・ファンク、MPBをまたぐ内容として紹介されている。ジャンルの境目をまたぐ構成で、当時としてはかなり先進的な作品として受け取られている。
1973年には、Continental Recordsから初のソロアルバム『S/P - 73』を発表した。収録曲には「Salamandras」「Prelúdio em si bemol menor」「Yelris」など自身の作品が並ぶ。ここではジャズとクラシックをつなぐような作風が評価されている。
このアルバムは、海外のコレクターのあいだで高く評価されてきた稀少盤として知られている。東京では「ベスト外国盤」に選ばれたこともあるという。ブラジル国内で広く流通した作品というより、国外のリスナーや収集家の関心の中で存在感を強めてきたアルバムだ。
1974年には、仏伯合作映画『A Virgem de Saint Tropez』のサウンドトラックをBeto Ruschel、Dudu Françaと共作している。さらに1981年には『Xavana (Uma Ilha do Amor)』の音楽も担当した。映像作品に合わせた音楽制作でも実績を残していたことがわかる。
Salvaniniの名前を追うと、MPBを土台にしながら、ジャズ、ラテン、フォーク、クラシックの要素を行き来する活動が見えてくる。「KM 110」のようにポップ寄りの曲調から、『S/P - 73』のようなジャズとクラシックの接点を探る作品まで、振れ幅のある仕事をしていた。
一方で、映画音楽やジングル制作の実績もあるので、複雑な楽曲だけでなく、短い時間で機能する音作りにも長けていたと見られる。編曲家、指揮者としての肩書きも、そのあたりの仕事ぶりとつながっている。
Hareton Salvaniniは、生前に大衆的な知名度を強く獲得したタイプの音楽家ではなかったようだ。ただ、寡作ながら独自の作家性を持つ人物として、後年になって再評価が進んでいる。特に『S/P - 73』を中心に、海外のレコード愛好家やブラジル音楽の掘り下げを続けるリスナーのあいだで注目されている。
2006年2月28日にサンパウロで63歳で死去している。残された作品数は多くないが、ソロ作、シングル、映画音楽を通して、ブラジル音楽の中でも少し外側から見つかっていくタイプの音楽家として記録されている。