Vinyl Record Reviews
Instant Orangeは、アメリカ・カリフォルニア州サンバーナーディーノを拠点に活動した、フォーク/サイケデリック・ロック系のバンドだ。活動期間は1968年から1975年ごろまでで、断続的に動いていた。中心にいたのはテリー・ウォルターズとランディ・ラニアーの2人で、そこにメンバーが入れ替わりながら加わる形だった。
確認できる範囲では、1968年のシングルから活動を開始している。1973年にはシングルとアルバムを自主制作し、1974年と1975年には10インチEPも出している。ただし、どれもプレス枚数はおよそ100枚程度と少なく、当時は広く流通した作品ではなかった。
後期にはキーボード奏者のジョー・ビアンキが正式に加わり、編成の幅が広がっている。活動は散発的で、作品発表もすべてセルフリリースに限られていた。
音楽面では、西海岸のフォークロックの影響がはっきり見える。The Byrds、Buffalo Springfield、Love、Sandy Bullといった名前が挙げられていて、そのあたりの流れを受けたバンドとして聴かれている。
サウンドは宅録的で、作り込みすぎない素朴さがある。派手なプロダクションよりも、身近な空気感や演奏の手触りが前に出るタイプだ。後期作品ではキーボードが入ったことで、初期よりも少し広がりのある構成になっている。
Instant Orangeの音源は、当時はほとんど知られていなかった。少量プレスの私家盤だけで終わっていたため、長いあいだ埋もれた存在だった。
その後、ドイツのリイシュー・レーベルShadoks Musicが全音源を編纂盤としてまとめ、再評価のきっかけが作られている。発掘対象として語られることが多いのも、この流通規模の小ささと、残された音源の少なさが関係している。
Instant Orangeは、60年代後半から70年代前半のアメリカ西海岸フォークロック周辺を掘る人にとって気になるバンドだ。大きなヒットや広い知名度よりも、少量自主制作の音源、地元ベースの活動、後年の再発による再発見といった流れに興味がある人に合う。
作品数は多くないが、活動の経緯を追うと、当時のローカルなロック・シーンの動きが見えやすい。サイケデリック・ロックとフォーク・ロックの接点を、かなり身近な距離感で残したバンドとしてチェックしておきたい。