Vinyl Record Reviews
Jeff Buckleyは、アメリカ出身のシンガー/ギタリストだ。ロック、特にオルタナティヴ・ロックの文脈で語られることが多く、4オクターブにわたる声域を持つことで知られている。父はシンガーソングライターのTim Buckleyで、Jeffもまた若くして亡くなっている。
本格的に名前が広がるきっかけになったのは、1992年4月のニューヨーク・イーストヴィレッジにあるアイリッシュ・カフェ「Sin-é」での出演だ。ここでの弾き語りが注目を集め、やがて毎週月曜の定例出演枠を得るようになった。
同年10月にはColumbia Recordsと契約している。翌1993年には、Sin-éでのライブを収めたEP『Live at Sin-é』を発表した。この作品には「Lover, You Should've Come Over」の初期ヴァージョンや、Leonard Cohenのカバー「Hallelujah」の初期ヴァージョンも収録されていて、当時の弾き語り中心の活動がそのまま残されている。
Jeff Buckleyの代表作は、1994年に発表された1stアルバム『Grace』だ。制作は1993年夏、プロデューサーのAndy Wallaceのもと、ニューヨーク州ウッドストックのBearsville Studiosで行われた。Gary Lucas、Mick Grondahl、Michael Tighe、Matt Johnsonらが参加している。
発売直後の売上は大きく伸びなかったが、Jimmy Page、Robert Plant、Bob Dylan、Paul McCartneyらの評価を受けて、徐々に広く知られるようになった。ロックを基盤にしながら、ギターのフレーズや歌の運びに弾き語りの要素が入り、スタジオ作品でもライブ感が残る構成になっている。
Jeff Buckleyの特徴としてまず挙がるのは声だ。4オクターブに及ぶ声域を持ち、繊細な歌い回しと強い歌唱を行き来するタイプのシンガーとして知られている。ギタリストとしても活動していて、歌とギターを一体で聴かせる場面が多い。
ライブでは、Sin-éでの演奏に見られるような弾き語りの形が早い段階から重要だった。スタジオ録音の『Grace』でも、そのライブでの感覚が反映されている。
1997年、Jeff Buckleyは次作『My Sweetheart The Drunk』のレコーディング開始を目前に、テネシー州メンフィスのウルフ川で泳いでいる最中に亡くなった。30歳だった。
死後には、未完成だった2作目のデモをまとめた『Sketches For My Sweetheart The Drunk』がリリースされている。さらに、1993年2月に録音された初期セッション音源が2016年と2019年に正式発表されていて、ライブ録音を中心にしたアルバムや、シカゴでのライブ映像を収めたDVDも出ている。
Jeff Buckleyは、短い活動期間の中で強い印象を残したアーティストだ。『Grace』が初動で大きく売れなかった一方で、周囲のミュージシャンからの評価が広がり、その後の再評価につながっている。特に「Hallelujah」の解釈は、彼の名前と一緒に語られることが多い。
父のTim Buckleyも早世しており、親子二代の早すぎる死がしばしば話題になるが、Jeff自身の音楽はそうした背景だけでなく、実際の演奏と録音の中身で聴かれてきた。
公式サイトや各種SNS、YouTubeのVEVOチャンネル、Wikipedia、AllMusicなどでも情報を追える。作品数は多くないが、残された音源をたどるだけでも活動の流れが見えやすいアーティストだ。