Vinyl Record Reviews
Johnny Cashは、1932年2月26日にアメリカ・アーカンソー州キングスランドで生まれたシンガーソングライター、ミュージシャン、俳優、作家だ。2003年9月12日にナッシュビルのバプテスト病院で亡くなっている。ジャンル表記では Folk, World, & Country に含まれ、スタイルはカントリーとして整理されている。
本名はJ.R. Cash。黒い衣装でステージに立ち続けたことから、「The Man in Black」の呼び名でも知られている。カントリーを中心に活動しながら、ロックやゴスペルの殿堂にも名を連ねている点からも、活動の幅の広さが見えてくる。
1955年7月30日、メンフィスのサン・レコードで「Folsom Prison Blues」を録音し、同年12月にシングルとして発表した。これはサン・レコード在籍時代の2枚目のシングルだった。
この時期の作品は、のちの代表的な作風につながる土台になっている。曲の題材は刑務所、旅、孤独、信仰、生活の重さなどに向かい、派手さよりも内容を前に出す作りが目立つ。歌い方も、細かく装飾するより、まっすぐに言葉を置いていくタイプだ。
1968年5月、フォルサム州立刑務所での収監者を前にしたライヴを収めた『At Folsom Prison』をコロンビア・レコードから発表した。翌年の『At San Quentin』もよく知られている。これらの成功で、キャッシュの活動の規模は大きく変わった。
それまでの地方の縁日規模の興行から、マディソン・スクエア・ガーデンのような大会場へと活動の場を広げた流れは、彼の人気の広がりを示している。刑務所ライヴという題材そのものも、キャッシュのキャリアを語るうえで外せない要素だ。
Johnny Cashの音楽は、カントリーを軸にしながら、フォークやゴスペルの要素も含んでいる。編成は比較的シンプルで、歌詞の内容が前に出る曲が多い。
特に後期の『American Recordings』シリーズでは、ミニマルなアコースティック編成が中心になった。1993年にプロデューサーのリック・ルービンと出会ったことで転機が訪れ、内面の暗さ、老い、死の気配をそのまま曲に落とし込む方向へ進んでいる。
この時期の作品群では、オリジナル曲だけでなくカバー曲の扱いも重要だ。ナイン・インチ・ネイルズ「Hurt」のカバーは、死の前年に発表され、ミュージックビデオとともに広く知られている。衰えた身体を隠さずに歌う姿が、晩年の代表的なイメージとして残っている。
1970年代から80年代にかけては商業的な低迷期もあった。ただ、1990年代に入ってからの再評価で、過去の代表曲だけでなく、晩年の録音も含めて作品群が見直されている。
キャッシュのキャリアは、初期のカントリー・シンガーとしての成功、刑務所ライヴでの再浮上、そして晩年の内省的な録音という流れで整理しやすい。どの時期にも共通しているのは、歌の言葉を大きく扱う姿勢だ。
複数の殿堂入りをしている点からも、カントリーだけでなく、ロックやゴスペルにも影響を残した人物として扱われている。
Johnny Cashはカントリー歌手のJune Carterと結婚していた。家族には、弟のTommy Cash、妹のJoanne Cash、兄のRoy Cash Sr.、甥のRoy Cash Jr.がいる。娘のRosanne Cashもシンガーソングライターとして知られている。June Carterの娘であるCarlene Carterの継父でもあった。
こうした家族関係も含めて、キャッシュはカントリーの系譜の中で語られることが多い。本人の活動だけでなく、周囲の音楽家との関係も、彼の存在感を支える要素になっている。
Johnny Cashを追うと、カントリーの枠に収まりきらない活動の積み重ねが見えてくる。初期の録音、刑務所ライヴ、晩年の再録音まで、時期ごとに違う表情を持ちながらも、歌の芯は一貫している。