Vinyl Record Reviews
Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)は、カナダ出身のシンガーソングライター、ミュージシャン、画家。1943年11月7日、アルバータ州フォート・マクロード生まれで、出生名はRoberta Joan Anderson。1960年代半ばに音楽活動を本格化させ、まずは西カナダやトロントの小さなクラブで歌っていた。その後、ニューヨークのフォーク・シーンへ移り、ソングライターとして注目を集めた。
ニューヨークでは、Chelsea Morning、Both Sides Now、Woodstock などの楽曲でまず作家として名を広め、その後、歌い手としても存在感を強めていった。フロリダで演奏していた彼女をDavid Crosbyが見つけ、ロサンゼルスのローレル・キャニオン周辺のフォーク・ロック・シーンへつないだことも、活動の流れを語るうえで重要な出来事だ。
1968年初頭にはRepriseからデビュー作を録音し、3作目のアルバムまでに初のゴールド・アルバムを獲得している。70年代前半には、Big Yellow Taxi、Free Man In Paris、Help Me などのヒット曲も生まれた。
Joni Mitchellの特徴としてよく挙げられるのが、独特のギター・チューニングと、ピアノを使った細かいアレンジだ。70年代に入ると、その作風はさらに複雑になり、ジャズの影響が強く出ていく。ポップ、フォーク、ロックを混ぜながら、実験的なアルバムを作っていった流れがはっきりしている。
特に1976年のHejiraでは、その傾向が強く見える。Pat Metheny、Wayne Shorter、Jaco Pastorius、Herbie Hancockといったジャズの演奏家たちと関わりながら作品を作っており、1979年にはCharles Mingusの死後にリリースされた作品にも参加している。
1971年のBlueは、個人的な感情を強く前面に出した作品として知られている。このアルバムは、Rolling Stone誌の「500 Greatest Albums Of All Time」で2003年に30位へ選ばれている。
そのほかにも、1974年のCourt And Sparkは商業的にも大きな成功を収めた作品として知られ、Free Man In ParisやHelp Meを含む時期の代表作になっている。フォークの枠に収まりきらない展開を見せながら、ポップ・ソングとしても広く届く曲を残している。
1980年代以降は、録音とツアーのペースを落としつつ、シンセサイザーの使用を増やし、歌詞では社会問題や環境問題への直接的な言及も増えていった。恋愛や感情を扱う曲と並んで、政治的なメッセージを含む楽曲が目立つようになる。
長く新作の発表が途切れた時期もあったが、2007年には9年ぶりの新曲アルバムShineをリリースしている。さらに2020年からは、未発表音源をまとめたシリーズやスタジオ・アルバムの बॉックスセットの展開も始まった。
Joni Mitchellは視覚芸術にも取り組んでいる。自作アルバムのジャケット・アートも手がけていて、2000年には自分を「painter derailed by circumstance」と表現している。音楽活動と並行して絵を描き続けてきたことが、作品全体の見え方にもつながっている。
2015年3月31日には、自宅で意識不明の状態で発見され、脳動脈瘤による深刻な後遺症を負った。発話は比較的早く回復した一方で、歩行には長く困難が残ったという。本人は2020年のインタビューで、この後遺症は幼少期に患ったポリオよりも厳しかったと語っている。
その後、長い療養を経て、2022年にはロードアイランド州のニューポート・フォーク・フェスティバルで、公の場でのパフォーマンス「ジョニ・ジャム」を行った。Big Yellow Taxi、Both Sides Now、Summertime などを披露し、大きな反響を呼んだ。この演奏を収めたライブ盤Joni Mitchell at Newportは、グラミー賞最優秀フォーク・アルバム賞にノミネートされている。
2023年には、ワシントンD.C.で開催された式典で議会図書館ガーシュウィン賞(ポピュラーソング部門)を受賞した。
フォークの文脈から出発しながら、ポップ、ロック、ジャズへと広げていった経歴がはっきりしている。作曲家としても歌い手としても評価が高く、さらに画家としても活動してきた点がJoni Mitchellの輪郭を作っている。