Vinyl Record Reviews
Kelli Hand(ケリー・ハンド)は、1965年生まれ、米ミシガン州デトロイト出身のテクノ/ハウスDJ、プロデューサーだ。2021年8月3日に亡くなっている。ジャンル表記はElectronicで、実際の活動内容としてはTechno、Disco、Houseの文脈で語られることが多い。
彼女は自身のレーベルを立ち上げて作品を発表してきた人物で、最初はUK House Recordsという名前で始め、その後、デトロイトで住んでいた通りの名前にちなんでAcacia Recordsへ改称している。レーベル運営と制作を並行して進めた点も、活動の大きな特徴になっている。
ウェブ上の情報によると、Kelli Handは1980年代のニューヨークのクラブシーンに通うなかで電子音楽に強く引かれるようになった。パラダイス・ガレージやクラブ・エリアに足を運び、そこでラリー・レヴァンのプレイに触れながらレコードを集めていったという。
その後は、自室でターンテーブルを使いながらDJプレイと制作を独学で身につけたとされる。デトロイトに戻ってからは、クラブ「Zippers」でレジデントDJを務めた。現場での経験を積みながら、自分の制作とレーベル活動へつなげていった流れが見える。
1990年には自身のレーベルからデビューEP『Think About It』をリリースした。この制作では、マイク・バンクス、ロバート・フッド、ジェフ・ミルズ、マイク“エージェントX”クラークら、後にUnderground Resistanceを結成するメンバーたちが助言を与えたと伝えられている。
また、彼らからUnderground Resistance名義でのリリースを持ちかけられたものの、Kelli Handはそれを断り、自身のレーベルから出す道を選んだとされる。早い段階から、既存の枠組みに乗るよりも、自分の名前とレーベルで動く姿勢を取っていたことがわかる。
Kelli Handはデトロイト出身だが、本人はラリー・レヴァン、マーシャル・ジェファーソン、ラリー・ハードといったシカゴ/ニューヨーク系のハウス・ミュージックから強い影響を受けたと語っている。シカゴ・ハウス特有の“ジャック”感や“スウィング”感を、サンプリングと切れ味のあるドラムに落とし込んだサウンドが特徴とされる。
ここでのポイントは、デトロイト・テクノの文脈だけでなく、ハウスのグルーヴやダンスフロアでの機能性をしっかり持っていることだ。Techno、House、Discoの要素が混ざりながら、DJとしての感覚が制作にも反映されている。
1994年には、英Warp Recordsからシングル「Global Warning」を発表し、これが出世作として扱われている。翌1995年にはStudio !K7からデビュー・アルバム『On A Journey』をリリースした。
レーベルとしてはAcacia Recordsを軸に活動しつつ、外部レーベルからの発表も行っている。自分の拠点を持ちながら、作品ごとに展開を広げていった形だ。
2016年には、ジェフ・ミルズやフアン・アトキンスとともにデトロイト市から「スピリット・オブ・デトロイト賞」を授与されている。さらに2017年には、市から「ファースト・レディ・オブ・デトロイト」の称号も贈られた。
こうした受賞歴を見ると、Kelli Handがデトロイトのダンス・ミュージック史の中で重要な存在として扱われていたことがうかがえる。