Vinyl Record Reviews
Larry Fastは、アメリカのシンセサイザー奏者、作曲家、プロデューサーだ。1941年ではなく1951年12月10日生まれで、ソロではSynergy名義のシンセサイザー作品群で知られている。1975年から1987年にかけて展開したSynergyのアルバム・シリーズは、彼の代表的な仕事として扱われている。
活動の幅はソロ作品だけにとどまらない。Peter Gabriel、Foreigner、Nektar、Bonnie Tyler、Hall & Oatesなど、複数の人気アーティストの作品にも参加している。演奏者としてだけでなく、制作現場でも存在感を示してきた人だ。
Fastは1966年ごろから自作の電子回路を作り始め、1968年にはMoogのモジュラー・シンセサイザーに出会っている。かなり早い段階で電子楽器に触れていたことになる。
その後、ペンシルベニア州のラファイエット大学で歴史学の学位を取得している。学問の経歴を経たうえで、電子音楽の制作へ本格的に進んだ流れだ。
1975年の『Electronic Realizations For Rock Orchestra』を皮切りに、FastはSynergy名義でシンセサイザー中心のアルバムを発表していく。Moog、Oberheim、メロトロンなどの機材を使った制作が特徴で、緻密な音作りとロック寄りの構成感を組み合わせた作品として受け止められている。
このアプローチは、Wendy CarlosやTomitaのような先行する電子音楽家の精密なアレンジに、ロックの感覚を重ねたものとして紹介されることがある。とはいえ、単なる模倣ではなく、Fast自身の制作環境と演奏感覚が前に出たシリーズとして見られている。
1976年、Genesisを離れたばかりのPeter Gabrielから声がかかり、Fastはその後およそ10年にわたってGabrielのバンドでキーボーディストを務めた。スタジオ作だけでなく、ライブ盤『Plays Live』や映画『Birdy』のサウンドトラックにも関わっている。
さらに、『Peter Gabriel 1〜4』の各アルバムや、『Shaking the Tree』『So』の一部楽曲制作にも参加している。ソロの電子音楽家として活動しながら、同時に大きなポップ/ロック作品の制作にも深く関わっていた点が目立つ。
Fastは演奏だけでなく、Moog社の開発コンサルタントとしても動いていた。1976年のPolymoog、1982年のMemorymoogの開発に関わっている。
プレイヤーとして機材を使うだけでなく、楽器そのものの設計にも関与していたのは重要なポイントだ。シンセサイザーを「鳴らす側」と「作る側」の両方から見ていた人物として、電子音楽史の中でも少し特殊な立ち位置にいる。
Larry Fastは、Synergy名義のアルバム群と、Peter Gabrielをはじめとする多くの作品への参加歴によって知られている。電子音楽の制作、ロック/ポップ作品での演奏、機材開発の関与が重なっていて、キャリアの中にいくつもの役割がある。
ブログで紹介するなら、シンセサイザー音楽の作曲家というだけでなく、70〜80年代のロック作品の現場にも深く入っていた人として押さえると整理しやすい。電子音楽の歴史をたどるときに、機材と演奏の両面から見えてくるタイプのアーティストだ。