Vinyl Record Reviews
N.W.A.は、アメリカのヒップホップ・グループだ。ジャンルはHip Hop、スタイルはHardcore Hip-HopとGangstaに分類される。メンバーはAndre Young、O'Shea Jackson、Kim Nazel、Eric Wright、Lorenzo Patterson、Antoine Carrabyで、1986年から1991年にかけて活動し、1999年から2000年にも短期間再集結している。
グループ名のN.W.A.は「Niggaz Wit Attitudes」の略だ。自分たちを「World's Most Dangerous Group」と名乗っていた点も含めて、初期から強い存在感を持っていたグループとして知られている。
N.W.A.の出発点には、Eric WrightことEazy-Eの経歴がある。10代の頃からコンプトンでドラッグの売人として活動していたWrightは、その資金の一部を元手に、1986年から1987年ごろにかけてJerry HellerとともにRuthless Recordsを立ち上げた。最初はレーベル運営から始まり、そこにDr. Dre、Ice Cube、DJ Yella、MC Renらが集まっていく流れでN.W.A.が形になっていった。
ストリートでの実体験に根差した資金源から始まったインディペンデント・レーベルが、後にギャングスタ・ラップの中心になっていく経緯は、N.W.A.を語るときに外せない部分だ。
N.W.A.は1987年にMacola Recordsから「[m=40320]」を発表し、これはコンピレーション「[m=139509]」にも収録された。この時点ではまだ発展途上の段階で、11曲中4曲にしかクレジットされていない。収録曲には、普段のイメージとは少し違うエレクトロ寄りの「Panic Zone」、地下で支持を集めた「Dopeman」などがある。
1988年にはArabian Princeが脱退し、[a100748]が加入。その後、グループはデビュー・アルバム「[m=26117]」を制作した。1989年初頭に発売された「Straight Outta Compton」は、東海岸で広がっていたコンシャス・ラップやニュー・ジャック・スウィングとは違う、よりストリートに寄った内容を前面に出している。Billboard Top 200で37位、Top Soul L.P.sで9位を記録し、ラジオで大きく流れないまま300万枚以上を売り上げた。
「Straight Outta Compton」には「Straight Outta Compton」「Gangsta Gangsta」「Express Yourself」が収録されている。特に「Express Yourself」は自由な表現を掲げた曲として扱われることが多い。一方で、グループの名を広く知らしめたのは「Fuck tha Police」だ。警察への強い抗議を含むこの曲は大きな反応を呼び、FBIがPriority Records宛てに警告の手紙を送ったことでも知られている。
この一件によって、N.W.A.の過激なリリックと社会的な緊張感は、音楽の外側でも注目されるようになった。
1989年12月、Ice Cubeは印税をめぐる問題から脱退した。彼は「Straight Outta Compton」で多くの歌詞を書いていたこともあり、利益配分に不満を持っていたとされる。その後すぐにソロ作品「[m=97462]」(1990年)を制作し、Public EnemyのBomb Squadと組んで活動した。
残ったメンバーは1990年にEP「[m=26111]」を発表し、プラチナ認定を受けている。ここでは前メンバーへのディス・トラックも展開され、Ice Cubeは「No Vaseline」で応酬した。1991年のアルバム「[m=26113]」(「Niggaz4Life」とも表記される)は、ヒップホップのフルレングス作品として初めてBillboard 200で1位を獲得した。その後、N.W.A.は解散した。
N.W.A.の特徴は、ハードコアなビートと、コンプトンの現実を直接書いたようなリリックにある。ギャングスタ・ラップというサブジャンルを押し出す役割を担い、暴力、警察、ストリート、金、仲間内の対立といったテーマを前面に出した。音の面では、Dr. Dreのプロダクションがグループの軸になっている。
初期の作品ではまだ実験的な要素も見えつつ、「Straight Outta Compton」以降は、後のギャングスタ・ラップの型につながる作りがはっきりしてくる。メジャーの後ろ盾が強くない状態で、強い言葉と現場感のある内容をそのまま作品に落とし込んでいる点が印象的だ。
N.W.A.の解散後も、メンバーはそれぞれ音楽活動を続けた。Dr. DreはDeath Row Recordsの立ち上げに関わり、その後はAftermath Entertainmentを設立してEminemや50 Centなどを送り出している。Eazy-EはRuthless Recordsを運営し続けたが、1995年にAIDSで亡くなった。Ice Cubeは映画やビジネスの分野でも活動を広げていく。
2015年には、Ice Cube、Dr. Dre、Eazy-Eの遺産管理側が関わった伝記映画「Straight Outta Compton」が公開され、興行収入は2億ドルを超えた。2016年にはRock and Roll Hall of Fame入りも果たしている。