Vinyl Record Reviews
Patrick Adamsは、ハーレム出身のディスコ/ソウル・プロデューサー、アレンジャー、ソングライター、ミュージシャンだ。1950年3月17日生まれ、2022年6月21日に死去した。主な活動の場は、ニューヨークのディスコ/ダンス系レーベルであるP&P Records、Red Greg Records、Salsoul Records、Prelude Records、そしてAtlanticなどだった。
幼少期は聖歌隊で歌い、アポロ・シアターの公演にも通っていた。父親にトランペットを買ってもらい、10代になるとギターを弾きながら曲作りも始めた。ラジオで聴いたレコードの曲構成やアレンジを分解して学び、自分のアレンジ感覚を身につけていった。
10代の頃には、ビートルズの『エド・サリヴァン・ショー』出演を見て音楽の道を志し、16歳でハーレムのバンド「The Sparks」に加入したという経歴がある。その後、若いLeroy Burgessを見出し、R&BグループBlack Ivoryのマネジメントを手がけたことが、プロデューサーとしての本格的な活動につながっていく。
1970年にはPerception Records / Today RecordsのA&R副社長に就任し、Black Ivoryを発掘した。1974年に同レーベルを離れ、Patrick Adams Productions, Inc.を設立する。ここから、Peter BrownのP&P Recordsをはじめとするニューヨークのレーベル向けに、実験的なディスコ作品を次々と制作していく。
この時期は、Cloud One、Bumblebee Unlimited、Inner Life、Musique、Phreek、The Universal Robot Bandといったスタジオ・プロジェクトでも知られる。作品数は多く、クレジットされているリリースは数百にのぼる。
Cloud Oneの1976年作『Atmosphere Strut』は、Patrick Adamsの代表的な仕事のひとつとして挙げられる。後のブギーやハウス・ミュージックの原型として語られることも多い作品だ。
音作りでは、ノイズ感のあるハイハットと、哀愁のあるストリングス・アレンジを組み合わせた手法が特徴として知られている。限られた機材や予算の中で工夫を重ねる制作スタイルも、後のダンス・ミュージックのプロデューサーたちに影響を与えたとされる。
Patrick Adamsは、自身のプロジェクト以外でも多くのアーティストの作品に関わった。代表的な名前を挙げると、Black Ivory、Candi Staton、Debbie Taylor、Eddie Kendricks、Fonda Rae、Gladys Knight、Herbie Mann、Loleatta Holloway、Main Ingredient、Narada Michael Walden、Rick James、The Salsoul Orchestra、Shannon、Sister Sledge、Skipworth & Turner、The Spinnersなどがある。
こうした関わり方を見ると、70年代のニューヨーク・ディスコの制作現場で、かなり幅広く動いていたことがわかる。
1980年代にはPower Play Studiosでエンジニアとしても活動した。ここではEric B. & Rakim、Heavy D. & The Boyz、Keith Sweat、R. Kelly、Salt-N-Pepa、Teddy Rileyといった、初期ヒップホップやニュージャックスウィングのアーティストたちの仕事に関わっている。
ディスコの時代に積み上げた制作経験を、その後のヒップホップやR&Bの現場にも持ち込んでいた形だ。
Chicのナイル・ロジャースは、Patrick Adamsを自身の大きな音楽的影響源のひとりに挙げ、コード進行を参考にしたことも公言している。こうした証言からも、彼のアレンジや和声の組み立てが後続世代に参照されていたことがうかがえる。
また、ASCAP Songwriter of the Year Awardを3度受賞し、ゴールドおよびプラチナ・レコードも32枚獲得している。名前がアルバムの表に大きく出ることは多くなかったものの、制作・編曲・楽曲提供の現場ではかなり重要な存在だった。
Patrick Adamsの名義でフロントに出た作品は多くないが、Atlantic Recordsのディスコ・プロジェクト「Patrick Adams presents」のように、彼の名前が前面に出る例もある。プロデューサー、アレンジャー、エンジニアとして、ディスコからソウル、さらにヒップホップ以降の時代までつながる仕事を残した人物だ。