Vinyl Record Reviews
Propagandaは、ドイツ・デュッセルドルフ出身のシンセポップ・グループだ。1982年に、元Die Kruppsのキーボード奏者ラルフ・デルパーとアンドレアス・タインを中心に結成された。メンバーにはクラウディア・ブリュッケン、スザンヌ・フライターク、マイケル・メルテンスらが名を連ね、活動のたびに編成を変えながら作品を残してきた。
1982年夏、エッセンのスタジオで最初の録音が行われた。そこではPPGシンセサイザーが使える環境があったという。デルパーとタインは、スザンヌ・フライタークのボーカルで「Disziplin」と「Sünde」を録音した。前者は政治的、後者は宗教的な内容の楽曲として作られている。
その後、楽曲はNMEのクリス・ボーンに送られ、これがプロデューサーのトレヴァー・ホーンの目に留まった。1983年、Propagandaはホーンの主宰するZTTレーベルと契約する。ZTTはフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドも抱えていたレーベルで、Propagandaも同じく、演劇性のある構成と緻密なサウンド・プロダクションを共有する存在として扱われた。
1985年にリリースされたデビュー・アルバム『A Secret Wish』は、スティーヴン・リプソンのプロデュース、トレヴァー・ホーンの監修のもと制作された。シングル「Duel」と「Dr. Mabuse」は全英チャートでトップ30入りを記録している。
この時期のPropagandaは、シンセサイザーを中心にした硬質な打ち込みと、ボーカルを前面に出した構成が特徴だ。電子音の配置は細かく、ポップ・ソングとしての分かりやすさと、レーベルZTTらしい編集感覚が同居している。後年、80年代のポップ・レコードを語る文脈で『A Secret Wish』が取り上げられることも増えている。
Propagandaは、活動のたびに編成が大きく変わっている。1984年にはクラウディア・ブリュッケン、ラルフ・デルパー、スザンヌ・フライターク、マイケル・メルテンス、アンドレアス・タインの体制で「Dr. Mabuse」を発表した。1985年にはブリュッケン、デルパー、フライターク、メルテンスの編成で「Duel」「A Secret Wish」「p:Machinery」「Wishful Thinking」を発表している。
1986年にクラウディア・ブリュッケンが脱退し、残ったメンバーはZTTとの契約をめぐって訴訟を起こした。その後、1987年から88年にかけて新しいアルバム用のデモが録音された。そこではデレク・フォーブス、ブライアン・マギー、ベッツィ・ミラーが加わっている。1990年にはVirginから「Heaven Give Me Words」「1234」「Only One Word」「Your Wildlife」を発表したが、この編成は1991年に活動を終えた。
1998年ごろには、メルテンスがブリュッケンやフライタークと再び作業を始めている。1999年には新作アルバムの制作がアナウンスされたが、正式なリリースには至っていない。いくつかの音源はインターネット経由で流出し、後にブリュッケンのプロジェクトOnetwoで使われた楽曲もある。
2004年には、メルテンス、フライターク、ブリュッケン、デルパーが再集結し、The Prince's Trust支援とトレヴァー・ホーンの音楽活動25周年を記念して「Dr. Mabuse」を演奏した。2005年以降は、メルテンスとフライタークによる「Valley Of The Machine Gods」がAmontillado Musicから発表されている。
2011年にはブリュッケンがロンドンでライブを行い、デルパーとフライタークがステージに参加した。2014年ごろにはメルテンス、ブリュッケン、フライターク、デルパーが新曲制作を進めていたが、ライブ活動の方針の違いから再結成はまとまらなかったとされている。2015年には、Propaganda名義でホリー・ジョンソンの「Dancing with Fear」のリミックスも手がけている。
2018年には、ブリュッケンとフライタークがPropaganda楽曲を演奏する形で再びライブ活動に登場した。大陸ではDuel名義、英国ではX-Propaganda名義でツアーを行い、同年には『Secret Wish』のライブ盤を発表している。2022年にはスティーヴン・リプソンをプロデューサーに迎えた新作も出している。
さらに2024年には、ブリュッケンとフライタークとは別に、男性側の編成がオリジナル名義のPropagandaとして再始動し、新しい女性シンガーを迎えたシングルを3曲発表した。冬にはアルバムの予定もある。
Propagandaの音楽は、シンセポップを基盤にしながら、ZTTレーベルの制作環境を反映した構成の緻密さが目立つ。ビート、シンセのレイヤー、ボーカルの配置がはっきり分かれていて、曲の中で役割が明確だ。派手な装飾だけに寄らず、リズムやフレーズの反復で進行する曲が多い。
また、初期曲の「Disziplin」「Sünde」のように、政治や宗教を題材にした要素もある。ポップ・ソングの形式に乗せつつ、テーマの取り方にひとひねりあるところが、このバンドの特徴として挙げやすい。クラウディア・ブリュッケンの歌唱を含め、ボーカルの存在感が大きい点も見逃せない。
Propagandaは、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドと同じZTTに所属しながら、やや表舞台に出にくい時期もあった。一方で、『A Secret Wish』や「Duel」「Dr. Mabuse」は、80年代のシンセポップを語る場面でたびたび取り上げられている。シングルのヒットだけでなく、アルバム全体の構成で評価されるタイプのバンドとして扱われることが多い。
活動停止や再結成、名義の違いを含めて経歴は複雑だが、そのぶん各時期の音源を追うと、時代ごとの制作体制やサウンドの変化が分かりやすい。80年代の英国ポップとドイツの電子音楽の接点をたどるうえでも、Propagandaは外せない存在だ。