Vinyl Record Reviews
Sibylle Baierは、ドイツ出身のフォーク・シンガー/女優だ。活動の中心が長く表舞台ではなかったこともあり、音楽面で広く知られるようになったのはかなり後年のことになる。2006年にアルバム『Colour Green』がリリースされ、1970年代前半に自宅で録音していた楽曲がまとめて世に出た。
Baierは少女時代からギターとピアノに親しんでいた。最初の楽曲「Remember The Day」は、友人とアルプスを越えてシュトラスブールを経由し、ジェノヴァまで向かったロードトリップのあとに書かれたとされている。こうした個人的な体験が、そのまま曲作りにつながっている。
1970年から1973年にかけて録音された楽曲群は、リール・トゥ・リール・テープに残された自宅録音だった。のちにそれらが編集され、『Colour Green』として発売されることになる。
Baierは俳優や歌手としてのキャリアを積極的には追わず、その後アメリカへ移って家族を育てることに力を注いだ。音源が再び注目されたのは約30年後で、息子が家族への贈り物として録音をCDにまとめたことがきっかけになっている。そのコピーがDinosaur Jr.のJ・マスキスに渡り、そこからOrange Twinレーベルへつながった。『Colour Green』は2006年2月にOrange Twinから正式にリリースされた。
音楽だけでなく、Baierは女優としても活動している。ヴィム・ヴェンダース監督の1974年の映画『都会のアリス』に出演し、彼女の音楽はヨッヘン・リヒターの『Umarmungen Und Andere Sachen』(1975年)や、ヴェンダースの『パレルモ・シューティング』(2008年)でも使用されている。
公開されている情報からは、Baierの音楽はフォークを軸にした弾き語りで、ギターと声を中心にした作りが基本になっている。自宅録音の音源が元になっていることもあり、演奏や録音には私的な空気が残っている。後年の紹介文でも、素朴で澄んだ歌声と内省的な弾き語りが特徴として挙げられている。
フォーク・リスナーのあいだでは、ヴァシュティ・バニヤンを思わせるという受け止め方も見られる。とはいえ、Baierの録音はあくまで彼女自身の生活の中で残されたもので、作品の出自そのものが大きな特徴になっている。
プロフィールでは、Baierのセカンド・スタジオ・アルバムが予定されているとされている。『Colour Green』が長い時間を経て発表された経緯も含めて、彼女の作品は今も静かに聴かれ続けている。