Vinyl Record Reviews
Stereo MC'sは、1985年にロンドンで結成されたイギリスのエレクトロニック・グループだ。中心人物は、ヴォーカルのRob Birchと、DJ/プロデューサーのNick Hallam(The Head)。2人はノッティンガムで幼少期をともに過ごした幼なじみで、10代後半にロンドンへ移って音楽活動を始めた。
結成後は、ロック・バンドDogman and Headでの活動を経て、Rob BirchとNick HallamがJon Baker、DJ Richie Richとともにレコーディング・スタジオ兼レーベルGee Streetを立ち上げた。資金の一部には、隣接するアパートの立ち退き条件として不動産開発業者から受け取った14,000ポンドが充てられた、というエピソードも残っている。
Gee Streetは4th & Broadwayの目に留まり、その流れでDJ Cesareを加えた編成でデビュー・アルバム『33-45-78』を制作した。1989年に発表されたこの作品は、低予算で作られた初期作として位置づけられている。
現在のメンバーとしては、設立メンバーの2人に加え、ドラマーのほか、複数のヴォーカル陣がクレジットされている。公開されているメンバー情報では、Cath Coffey、Verona Davis、Owen Rossiter、Nick Hallam、Rob Birch、Cesare Marcherの名前が挙がっている。
Stereo MC'sは、Electronicの枠に入りつつ、Trip Hopの文脈でも語られるグループだ。初期からヒップホップ、エレクトロニック、ライブ演奏を組み合わせた作りが目立つ。
特に3作目の『Connected』(1992年)は、当時のヒップホップ/エレクトロニック作品に多かったサンプリング・ループ中心の作り方とは違い、生演奏を軸にした「サンプル・フリー」な作品として扱われることが多い。実際には一部でJimmy "Bo" Horneらの楽曲サンプルも使われているが、全体としては演奏主体の構成が印象に残る。
この作品では「Step It Up」「Creation」「Ground Level」「Connected」といった曲がヒットし、バンドの名前を広く知られるものにした。
『Connected』の成功で、Stereo MC'sはキャリアの大きな山場を迎えた。Brit Awardで2部門を受賞し、Mercury Prizeにもノミネートされている。さらに、当時のロック系フェスティバルにも出演する数少ないヒップホップ系アクトの一組としてツアーを行っていた点も特徴的だ。
この時期の活動は、クラブ寄りの音楽だけでなく、ロック・フェスの観客にも届く形で展開されていた。ライブ志向の強さと、レコード作品での構成の両方が、Stereo MC'sの持ち味として見えてくる。
Stereo MC'sは、90年代初頭のエレクトロニック・ミュージックとヒップホップの交差点にいたグループとして整理しやすい。ライブ演奏を取り入れた制作、クラブ文化とバンド編成の往復、そして『Connected』での商業的な成功が、彼らの活動歴を追ううえで重要なポイントになる。
ロンドンでの結成から、独立レーベル運営、ヒット作の制作、国際的なツアーまでをたどると、Stereo MC'sは作品単位でも活動史でも見どころの多いグループだ。