Vinyl Record Reviews
The Blue Nileは、スコットランド・グラスゴー出身の3人を中心に結成されたバンドだ。メンバーは、ボーカル/ソングライター/ギターのPaul Buchanan、ベースのRobert Bell、キーボードのPaul Joseph Moore。活動の中心にあるのは、ElectronicやRockを土台にしたPop Rock、Synth-pop寄りのサウンドだ。
このバンドは、作品数の少なさと入手しにくさもあって、早い段階から独特の存在感を持つようになった。寡作でありながら、発表したアルバムは批評面で高く評価されている。
The Blue Nileの始まりには、少し変わった話がある。彼らはエンジニアのCallum MalcolmのCastlesound Studiosでデモを制作していたが、そのスタジオにはLinn製の機材が導入されていた。1983年、Linnの担当者が新型スピーカーの試聴用音源を探して訪れた際、Malcolmが再生したのがデモ曲「Tinseltown in the Rain」だった。
その音質にLinnが反応し、結果としてバンドと契約するためにレーベルを立ち上げ、1984年にデビュー作『A Walk Across the Rooftops』をリリースする流れになった。オーディオ機器メーカーが、バンドのためにレーベルを作るという経緯はかなり珍しい。
The Blue Nileは、作品を短い間隔で続けて出すタイプではない。デビュー作『A Walk Across the Rooftops』のあと、2作目『Hats』までに5年、さらに『Peace At Last』までには7年かかっている。じっくり時間をかけて制作する姿勢が続いてきた。
この寡作ぶりは、バンドの神秘性を強める要因にもなっている。頻繁に露出するわけではないが、そのぶん作品が出るたびに注目が集まりやすい。
The Blue Nileの音楽は、シンセサイザーを使った冷静な質感と、ロックの骨格をあわせ持つ。ジャンル表記としてはElectronic、Rock、Pop Rock、Synth-popが挙がるが、実際にはPaul Buchananの歌声とメロディの運びが中心にある。
バンドは、派手な展開を重ねるよりも、音数や空間の取り方を大事にしている印象がある。演奏面では、ベースのRobert BellとキーボードのPaul Joseph Mooreが土台を作り、そこにBuchananの歌と曲が乗る形だ。制作にはCallum MalcolmやドラマーのNigel Thomasも継続的に関わっていて、バンドの周辺を支えてきた。
代表曲としてよく挙がるのが、1989年の「The Downtown Lights」だ。この曲は後年Rod Stewartにカバーされていて、他のミュージシャンからも評価されてきたことがわかる。
ほかにも、デビュー時にきっかけになった「Tinseltown in the Rain」は、バンドの出発点を示す曲として知られている。Linn側がこの音源を聴いて契約に動いたというエピソードも、The Blue Nileの初期を語るうえで外せない。
The Blue Nileは、少ない作品数の中で印象を残してきたバンドだ。デビューの経緯も、活動のペースも、楽曲の作りも、かなり独自の歩みを続けている。