Vinyl Record Reviews
The Mars Voltaは、2001年にロサンゼルスで結成されたバンドだ。中心になったのは、At The Drive-Inで活動していたオマー・ロドリゲス=ロペスとセドリック・ビクスラー=ザヴァラで、At The Drive-Inの活動休止後に新しい形で動き始めた。
前身バンドの「エモーショナルなパンク」寄りの感触からはかなり離れ、ハードコア、サイケデリック・ロック、フリー・ジャズの要素を取り込んだ方向へ進んだのが特徴だ。
2003年にデビュー・アルバム『De-Loused in the Comatorium』を発表した。この作品は、1996年に亡くなった友人フリオ・ヴェネガスに着想を得たコンセプト・アルバムで、昏睡状態に陥った主人公サーピン・タクストの物語を描いている。
2005年の『Frances the Mute』もコンセプト作で、差し押さえられた車の中で見つかった日記から発想を得たとされる。こちらはスパゲッティ・ウェスタンの要素も反映されている。
その後も、作品ごとに構成の強いアルバムを作り続け、ライブでは即興性の高い演奏でも知られるようになった。2008年にはローリング・ストーン誌で「最高のプログレ・ロック・バンド」に選ばれている。
2013年1月にセドリック・ビクスラー=ザヴァラが脱退を表明し、バンドは解散した。その後、2014年にオマーとセドリックはAntemasqueを結成したが、The Mars Voltaは2022年6月に再結成した。
The Mars Voltaの音楽は、プログレッシブ・ロックを軸にしながら、ハードコア、サイケデリック・ロック、フリー・ジャズ、ダブ、ラテン、ポスト・ハードコアの要素が混ざっている。演奏は複雑で、曲の展開も細かく切り替わることが多い。
ウェブ上の情報では、ラッシュ、イエス、キング・クリムゾンといったプログレ勢、マイルス・デイヴィスのフリー・ジャズ、ジェファーソン・エアプレインやピンク・フロイドのサイケデリア、レッド・ツェッペリンのロック感、サンタナに通じるラテン・ファンク/ロックの影響が挙げられている。実際、そうした系譜をまとめて受け取ったような作りになっている。
一方で、ただ要素を並べただけではなく、演奏の精度と構成の細かさが前に出る。長尺曲や組曲的な展開も多く、歌と演奏がどちらも強く主張するタイプのバンドだ。
デビュー作『De-Loused in the Comatorium』は、物語性の強さでまず注目された。続く『Frances the Mute』も、アルバム全体でひとつの流れを作る構成がはっきりしている。
このバンドは、シングル単位で聴くよりも、アルバムを通して聴いたときに情報量が多い。曲ごとのリズムや展開の変化、音数の多さ、突然の静と動の切り替えが特徴として出やすい。
中心人物はオマー・ロドリゲス=ロペスとセドリック・ビクスラー=ザヴァラだ。ほかにも、ジョン・フルシアンテ、ジョン・セオドア、トーマス・プリジェン、ファン・アルデレテ・デ・ラ・ペーニャ、マルセル・ロドリゲス=ロペスなど、多くのミュージシャンが関わっている。固定メンバーだけでなく、作品や時期によって編成が変わる点もこのバンドらしいところだ。
こうした流動的な編成もあって、アルバムごとに音の輪郭が少しずつ変わる。だが、オマーのギターとセドリックのボーカルを軸にした緊張感は、かなり早い段階から一貫している。
The Mars Voltaを聴くときは、曲の流れだけでなく、各パートの切り替わりやリズムの変化にも注目しやすい。メロディを追うというより、演奏がどう展開していくかを追う楽しみがある。
At The Drive-Inの延長線上で聴くと、別の方向に大きく振れたことがわかりやすい。ロックの骨格は残しつつ、ジャズやラテンの要素を組み込み、コンセプト・アルバムとしてまとめる作り方が、このバンドの核になっている。