Vinyl Record Reviews
Tordenskjolds Soldaterは、1969年にコペンハーゲンで結成されたデンマークのジャズ・カルテットだ。メンバーは、ピアノのOle Mathiessen、ベースのHenrik Hove、テナーサックスのJesper Nehammer、ドラムのJon Finsen。編成はシンプルだが、当時のコペンハーゲンのジャズ・シーンでは存在感のあるグループとして扱われていた。
バンドは、コペンハーゲンの伝説的なジャズクラブ「Jazzhouse Montmartre」で、しばらく毎週月曜日に演奏していた。1970年春にクラブ「Reprisen」が閉鎖された後は、そちらのハウスバンドのひとつにもなっている。この時期のコペンハーゲンではフリー・インプロヴィゼーションやジャズの動きが活発で、Tordenskjolds Soldaterもその流れの中にいた。
ウェブ上の情報では、当時ヨーロッパを訪れていたRoscoe Mitchell、Joseph Jarman、Chick Coreaといったミュージシャンと共演した記録がある。こうした顔ぶれを見ると、地元のクラブ・シーンにとどまらず、当時の国際的なジャズの動きとも接点を持っていたことがわかる。
唯一のアルバム『Peace』は1970年にSpectator Recordsからリリースされた。収録曲にはPharoah SandersやYusef Lateefへのオマージュが込められていて、アメリカのスピリチュアル・ジャズの流れと呼応する内容として受け止められている。デンマークのジャズでありながら、当時の米国ジャズの影響をそのまま受け止めるのではなく、自分たちの編成と現場で鳴らしていた点が特徴として挙げられる。
Spectator Recordsは、1972年8月6日のスタジオ火災でマスターテープを含む資産を失い、レーベル活動も終了した。マスターが残っていないため、その後の再発盤は現存するオリジナル盤をもとに作られている。近年はEating StandingやSpectator/SeriE.WOCなどから再発が続いている。
正式なアルバムは1枚だけだが、後年になって未発表だった2作目『Love』も発掘・リリースされた。活動期間そのものは短いものの、残された音源をたどると、当時のコペンハーゲンで何が起きていたのかが見えやすい。
Tordenskjolds Soldaterは、枚数の少ない作品群と短い活動歴で知られる一方、1960年代末から1970年代初頭のデンマーク・ジャズを追ううえで外せないバンドだ。特に『Peace』は、当時のヨーロッパのジャズがどんな形でアメリカの新しい流れを受け止めていたかを知る手がかりになる。