Vinyl Record Reviews
Vulcanは、ロックを軸に活動したアーティストで、スタイルとしてはPsychedelic Rock、Hard Rock、Lo-Fiが挙げられている。公開されているプロフィール情報は少ないが、ウェブ検索でたどれる来歴を追うと、ギターとジミ・ヘンドリックスへの強い執着を中心にキャリアが組み立てられている。
本名はライル・スティース。1970年、アーカンソー州のラジオでジミ・ヘンドリックスの訃報を耳にしたことが出発点になったという。本人はギターの知識がほとんどない状態だったが、この出来事をきっかけに強い衝撃を受け、以後10年間、独学でギターを学び続けたとされる。
1978年には「The Count」を名乗り、棺桶からマントを翻して飛び出す寸劇を組み込んだステージでR.I.P. Bandを率いて活動していた。ここでは演奏だけでなく、見せ方まで含めて強い演出を加えていたことがわかる。
その後、天文学者が予言したものの実際には起こらなかった惑星直列にちなんで、自らを「Vulcan」と改名した。改名後はシングル「Say Girl」b/w「Drugs Can Kill」を発表し、バイカー相手に3時間に及ぶ轟音ギターの“エクソシズム”ライブを展開したと伝えられている。
この時期の活動からは、ハードなギター演奏と強いパフォーマンス性を前面に出していた様子が見える。演出面も含めて、ライブがかなり特殊な形で行われていたことがうかがえる。
転機になったのは1980年、地下室で恋人と映画『Monterey Pop』を観ていた際に起きたと本人が語る“啓示”体験だ。ここでヘンドリックスの霊が現れ、4曲のセットを演奏したという。しかも、この出来事は1年前に占い師が予言していたとされる。
この体験を経て制作されたのが、1981年作『Lyle "Vulcan" Steece — Hard As Rock (Vol. 1)』だ。後年は『Meet Your Ghost』として正式再発されている。私家盤として流通した作品として語られており、コレクターの間で知られている。
この作品では、エコープレックスを使った轟音ギターが大きな特徴とされる。本人が語るヘンドリックスの霊を“召喚”するような感覚が、そのまま音作りに反映されたような内容として受け取られている。
Vulcanの活動を追うと、ジミ・ヘンドリックスの影響がかなり大きいことが見えてくる。訃報を耳にした瞬間から始まり、のちの“啓示”体験やギター演奏の方向性まで、ヘンドリックスを軸にした物語が続いている。
一方で、単なる模倣ではなく、寸劇を含むステージ、バイカー向けの長時間ライブ、私家盤の制作など、かなり独自の動き方もしている。ロックの文脈の中でも、演奏と伝説性が近い距離にあるアーティストとして整理できる。
公開情報が限られているため、活動の全体像を細かく追うのは難しい。ただ、ウェブ検索で確認できる範囲では、Vulcanはギターへの強いこだわりと、ヘンドリックス由来の影響を前面に出した人物として記録されている。作品数やディスコグラフィの詳細よりも、特異な来歴と録音物が先に語られるタイプのアーティストだ。