Jasun Martz - The Pillory (1978)
Jasun Martz 1978

Jasun Martz - The Pillory (1978)

Electronic Classical Experimental Modern Classical

Jasun Martz『The Pillory』について

Jasun Martz(ジェイスン・マーツ)は、アメリカの画家・彫刻家・ミュージシャンとして知られる人物で、この『The Pillory』は1978年に発表された作品だ。ジャンル表記ではElectronic、Classical、スタイルではModern Classical、Experimentalに置かれていて、実際にもロックのアルバムというより、現代音楽と実験音楽の領域で聴かれるべき内容になっている。大きな特徴は、メロトロンを多用した重層的な音像と、40人以上の演奏家から成るネオテリック・オーケストラの参加にある。ひとつの長大な作品を、前後半に分けて聴かせる構成も印象的だ。

この盤はUSのNeoteric Musicから1981年にリリースされたもので、録音はカリフォルニア、ロンドン、ロサンゼルスの複数スタジオにまたがって行われている。作曲、譜面作成、リハーサルの場所も複数に及んでおり、ひとりの作曲家の個人作業というより、かなり大規模な制作体制の中で組み上げられた作品と見てよさそうだ。カバー・ドローイングも本作のために描かれたものと記されている。

作品の全体像

『The Pillory』は、静かな立ち上がりから急激に密度を増し、ノイズや不協和、オーケストラのうねりへと進んでいく長尺作品として知られている。メロトロンの使い方が非常に重要で、単なる装飾ではなく、曲全体の質感そのものを形づくっている。現代クラシックの書法、ミニマルな反復、実験的な音響処理が同居していて、時間の流れを細かく区切るというより、ひとつの大きな流れとして聴かせるタイプのアルバムだ。

同時代の文脈で見ると、1970年代後半の前衛的なシンフォニック作品や、アヴァンギャルド寄りの室内楽、さらにプログレッシブ・ロック周辺で評価されるメロトロン作品と接点がある。とはいえ、ロック的なリズムの推進力よりも、音の層と配置、持続と崩壊の対比が前面に出ている。作曲家としてのJasun Martzの性格が、そのまま音の組み立てに表れている印象だ。

Part I

前半の「The Pillory Part I」は、アルバムの入口として機能するパートだ。ここでは、すぐに派手な展開へ飛び込むのではなく、音の土台を少しずつ積み上げていく構成が目立つ。低い持続音、重ねられた鍵盤音、オーケストラの断片が少しずつ輪郭を持ちはじめ、次第に緊張感を増していく流れ。いわゆる“聴きやすい”展開ではないが、音の配置を追っていくと、かなり緻密に設計されていることがわかる。

このパートで重要なのは、静けさが単なる休符ではなく、次に来る音の圧力を際立たせるための空間として使われている点だ。メロトロンの響きも、甘い旋律を支えるためというより、冷たい質感や不穏さを作る役割が強い。現代音楽の聴き方に近い集中が必要になる場面もあるが、そのぶん音が重なった瞬間の密度はかなり強い。

Part II

後半の「The Pillory Part II」は、前半で準備された素材がさらに拡張され、より劇的な展開へ進む。オーケストラの厚みが増し、ノイズ的な成分や混沌としたアンサンブルが前に出てくる場面もある。ここでは、単純に音量や人数が増えるというより、音の方向が複数に分岐していく感じが強い。ひとつの旋律に収束するのではなく、異なる層がぶつかり合いながら進む構造だ。

このパートを聴くと、本作が単なる「メロトロン名盤」として片づけられない理由も見えてくる。確かにメロトロンの存在感は大きいが、それだけで押し切る作品ではなく、オーケストレーション全体の設計が核にある。静かな部分と激しい部分の落差、反復と崩壊の往復、そのあいだに置かれた音の細部が、作品全体の印象を決めている。長尺でありながら、場面転換の感覚がはっきりしているのも特徴だ。

1981年盤としての位置づけ

オリジナルは1978年の作品だが、このUS盤は1981年のリリース。作品そのものは1970年代末の前衛的な空気を持ちながら、盤としては80年代に入ってから流通したことになる。Neoteric Musicという短命なレーベルから出たことも含めて、広く一般流通したヒット作というより、特定の文脈で語り継がれてきたアルバムという位置づけが自然だろう。Jasun Martzのディスコグラフィーの中でも、作曲家としての輪郭を強く示す重要作として扱われている。

まとめ

『The Pillory』は、メロトロンの印象だけで語るには情報量の多い作品だ。現代クラシック、実験音楽、シンフォニックな編成がひとつの長編にまとまり、静寂からノイズ、秩序から混沌へと移る流れを丁寧に組み上げている。1978年の発表作として見ても、1981年盤として見ても、Jasun Martzの作曲家としての姿勢をよく伝える一枚といえる。

トラックリスト

  1. A The Pillory 21:53
  2. B The Pillory 22:27

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