Mississippi John Hurt - Worried Blues (1964)
Mississippi John Hurt 1964

Mississippi John Hurt - Worried Blues (1964)

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Mississippi John Hurt『Worried Blues』について

ミシシッピ・ジョン・ハートの『Worried Blues』は、1964年にUSのPiedmontから出た作品で、彼の再評価が本格化した時期をそのまま切り取ったような一枚だ。1920年代録音の伝説的なカントリー・ブルース・シンガーが、1960年代のフォーク/ブルース・リバイバルの中でふたたび記録された、その流れの中にある。派手な編成や大きなアレンジではなく、歌とギターの組み合わせだけで音楽が成立している点が、この作品の核になっている。

1964年の録音としての位置づけ

この盤は、リリース年も録音時期も1964年。バック面のクレジットでは、1964年3月14日、15日、21日にWynwood Recording Studioで録音されたと記されている。カバー面にはThe Ontario Place(Washington, D.C.)で録音された旨の表記もあり、当時の制作情報が盤の表裏で異なるのも興味深い。いずれにせよ、1963年に再発見されたハートが、ワシントンD.C.周辺で録音を重ねていた初期リバイバル期の記録として理解できる。

彼は1893年生まれ、ミシシッピ州テオク出身。1966年に亡くなるまでのわずかな期間に複数のアルバムを残したが、その出発点に近い位置にあるのがこの『Worried Blues』だ。1920年代の録音で知られた人物が、長い空白を経てふたたび作品を残したという事実自体が、この時期の重要性を物語っている。

内容と聴きどころ

収録内容はブルースを中心に、ところどころスピリチュアルも交える構成とされる。演奏は、必要以上に音数を増やさず、歌の節回しとギターの運びで曲を進めていくスタイル。ハートの声は大きく張り上げるタイプではないが、言葉が前に出る。ギターも技巧の誇示より、拍の置き方や音の切り方に特徴がある。

実際に聴くと、いわゆる“再発見された古老”という言い方では収まりにくい、きちんと現在形の演奏として響く。古い録音の再現ではなく、当時の空気の中で自然に鳴っている感じが強い。フレーズの組み立ては簡潔だが、歌の一節ごとに余白があり、その余白が曲全体の落ち着きを作っている。ブルースとしての重さを前面に出すというより、日常の語り口がそのまま音になっている印象だ。

「Worried Blues」という題名の意味合い

タイトル曲の「Worried Blues」は、ハートの持ち味がよく出るタイプの一曲として見られている。彼の代表的な楽曲群と同様、構えすぎない進行の中で、歌詞の内容とリズムの運びが一致していく。ミシシッピ・ジョン・ハートの魅力は、強い主張を前に出すのではなく、淡々とした語りの中で感情がにじむところにあるが、この作品でもその特徴は変わらない。

後年の評価では、ハートの録音が「戦前カントリー・ブルース」の見方を変えた存在として語られることが多い。デルタ・ブルースの豪快さとは別の、より小さな音量で深く届くスタイルが、1960年代のフォーク・リバイバルの文脈で改めて受け止められた形だ。ロバート・ジョンソンやチャーリー・パットンの系譜と並べて語られることはあっても、ハートはその中で特に親しみやすい歌心を持つ人物として扱われることが多い。

Piedmont盤としての意味

US盤のPiedmontリリースという点も、この作品の性格を示している。Piedmontは1960年代のブルース/フォーク系レーベルとして知られ、ワシントンD.C.を拠点にしていた。ミュージック・リサーチ社が手がけたこの系列は、当時の再評価の流れを支える受け皿のひとつだった。大手レーベルの商業的なブルース商品というより、記録性の強い制作物としての色合いが濃い。

オリジナルの1920年代録音と比べると、この1964年盤は音質や録音環境の違いがまず感じられる。とはいえ、楽曲の芯は変わらない。むしろ、年月を経た声の質感や、録音時点の落ち着いた空気が加わることで、歌の内容がより直接的に伝わる。古い曲を懐古的に並べるのではなく、ひとりの演奏者がその時点で持っている手癖と呼吸を残した記録として見たい作品だ。

時代背景の中で

1960年代前半は、アメリカのフォーク・リバイバルが進み、失われていた南部の黒人音楽家たちが次々に再発見されていった時期でもある。ミシシッピ・ジョン・ハートはその象徴的な存在のひとりで、のちの録音活動にもつながった入口にこの『Worried Blues』がある。彼の音楽は、ブルースの中でも語りの明瞭さと旋律の整い方が際立っていて、同時代の多くのデルタ・ブルースとは少し違う輪郭を持つ。

この盤を聴くと、ハートが「過去の人」としてではなく、1964年の現場でなお歌っていた人物として立ち上がってくる。録音は素朴だが、そこにあるのは資料的な価値だけではなく、歌い手としての持続だ。『Worried Blues』は、その持続を確認できる一枚として、ミシシッピ・ジョン・ハートのディスコグラフィーの中でも重要な位置にある。

トラックリスト

  1. A1 Lazy Blues
  2. A2 Farther Along
  3. A3 Sliding Delta
  4. A4 Nobody Cares For Me
  5. A5 Cow Hooking Blues No. 2
  6. B1 Talkin' Casey
  7. B2 Weeping And Wailing
  8. B3 Worried Blues
  9. B4 Oh Mary Don't You Weep
  10. B5 I Been Cryin' Since You Been Gone

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