Sade - Promise (1985)
Sade『Promise』——1985年を象徴する洗練されたソウル作品
Sadeの2作目『Promise』は、1985年にリリースされたアルバムで、彼らの名前を世界的に決定づけた重要作のひとつだ。前作『Diamond Life』で示した静かな強さと都会的な感触を、そのまま拡張したような内容で、ソウルを軸にしながらスムーズ・ジャズの質感も自然に溶け込んでいる。ロンドン発のバンドとしての輪郭を保ちながら、80年代半ばの洗練されたポップ・ソウルの中でも、かなり独自の立ち位置にある作品といえる。
本盤はヨーロッパ盤で、Epic(EPC 86318)からの1985年リリース。ジャケット内側には歌詞、写真、クレジットが収められていて、見開き仕様の作りも当時のアルバムらしい丁寧さがある。バックやラベル表記にはCBS/Epicのクレジットが入り、オランダ製であることも確認できる。レコードとしての佇まいも、音楽性と同じく端正な印象だ。
作品の位置づけ
『Promise』は、Sadeにとって2作目にあたるアルバムで、英国では1985年11月4日付でリリースされ、チャート1位を記録している。デビュー作で広く認知されたのち、次の一枚でその評価を確かなものにした形だ。バンドの核であるSade Aduの歌声は、前作以上に落ち着きと余白を伴っていて、演奏も派手さよりも密度を重視している。こうした方向性は、同時代のR&Bやポップの中でも、より抑制の効いた美学として際立っている。
同じ時期のソウル/R&Bがシンセや打ち込みの存在感を強めていく中で、『Promise』は生楽器の感触を残しつつ、音数を絞ったアレンジで勝負している点が特徴的だ。BGM的に流しても崩れない均整がありながら、耳を寄せるとベース、ギター、サックス、キーボードの配置がかなり緻密だとわかる。Sadeというグループ名が、そのまま音の設計図になっているようなアルバムでもある。
代表曲「The Sweetest Taboo」
アルバムからの代表曲としてまず挙がるのが「The Sweetest Taboo」だ。30秒ではなく、ちゃんと曲全体でゆっくり熱を上げていくタイプの楽曲で、1985年9月30日にシングルとして先行した。英国チャートでは31位を記録している。メロディの輪郭ははっきりしているのに、歌い方が押しつけがましくないため、曲の中心にある感情が静かに伝わってくる。
この曲の面白さは、タイトルの言葉に反して、サウンドがまったく大げさではないところだ。リズムは軽やかだが急がず、ギターやキーボードのフレーズも必要以上に主張しない。Sade Aduのボーカルが空間を引っ張ることで、曲全体がひとつの温度で保たれている。ヒット曲でありながら、聴き疲れしにくい作りになっているのが『Promise』らしい。
「Is It a Crime?」とアルバムの深み
2枚目のシングル「Is It a Crime?」は1985年12月30日発表で、英国チャート49位。タイトルの通り感情の揺れを扱いながらも、演奏はあくまで抑制的だ。ここでは低音の支えがかなり重要で、曲の重心を下に置いたまま、Sade Aduの声がその上を滑るように進んでいく。劇的な展開を見せるタイプではないが、曲の長さや間の取り方に余裕があり、アルバム全体の空気を代表する一曲になっている。
『Promise』の中では、この曲がアルバムの芯を作っているように感じられる。恋愛や関係性の機微を、直接的な言葉よりも音の配置で伝える作りで、80年代のソウル作品の中でもかなり品のある部類だ。派手なサビで押し切るのではなく、繰り返し聴くほど細部が立ち上がるタイプの楽曲群が、この作品の持ち味だろう。
アルバム全体の聴きどころ
3枚目のシングル「Never as Good as the First Time」は1986年4月21日発表で、英国チャート89位。タイトルの印象に比べると、音作りはむしろ落ち着いていて、アルバムの中でテンポや空気を整える役割を果たしている。『Promise』はヒット曲だけを並べた作品ではなく、曲順全体で流れを作るアルバムだ。歌詞、写真、クレジットを含めたパッケージの丁寧さも、その設計とよく合っている。
なお、このLP盤とカセット/CDでは収録曲が異なり、後者には「You’re Not The Man」と「Punch Drunk」が追加されている。LPを聴くと、曲間の呼吸や全体のまとまりがよりはっきり見える。音の数を必要最小限に絞ったうえで、ベース、ドラム、サックス、ボーカルの関係を丁寧に組み立てたアルバムで、Sadeというバンドの完成度がかなり高い段階にあることが伝わってくる。
まとめ
『Promise』は、Sadeが1980年代のソウル/スムーズ・ジャズの文脈で独自の存在感を確立した作品だ。前作の延長にありながら、より深く、より落ち着いた方向へ進んでいて、代表曲「The Sweetest Taboo」や「Is It a Crime?」を中心に、静かな強度を持った楽曲が並ぶ。華美ではないが、音の配置と歌の間合いにきちんとした意図がある一枚として、今聴いても輪郭が崩れにくいアルバムだといえる。
トラックリスト
- A1 Is It A Crime 6:18
- A2 The Sweetest Taboo 4:35
- A3 War Of The Hearts 6:47
- A4 Jezebel 5:30
- B1 Mr Wrong 2:50
- B2 Never As Good As The First Time 5:01
- B3 Fear 4:05
- B4 Tar Baby 3:58
- B5 Maureen 4:22
動画
-
War of the Hearts
-
SADE - "PROMISE" - FULL ALBUM - SIDE-A - ORIGINAL VINYL 1985 - REMASTERED HQ AUDIO* - 4K/UHD
-
SADE - "PROMISE" - FULL ALBUM - SIDE-B - ORIGINAL VINYL 1985 - REMASTERED HQ AUDIO* - 4K/UHD