The Mops - GS Original Stock 5 (1975)
The Mops『GS Original Stock 5』レビュー
ザ・モップスは、日本のGSを語るうえで外せない存在だ。ベンチャーズ直系のインスト感覚から出発しながら、のちにはサイケデリックやブルース色を強め、同時代のGSバンドの中でも音の振れ幅がはっきりしている。『GS Original Stock 5』は、そうしたモップスの歩みをあらためてまとめて聴かせる編集盤で、1975年に登場した作品として位置づけられる。盤は1977年リリースのエクスプレス盤で、東芝系レーベルのカタログの中に置かれた一枚だ。
GS期の録音をまとめて聴くための編集盤
このアルバムは、モップスの代表的なオリジナル・アルバムというより、GS期から初期の録音やシングル曲を整理して再提示する性格が強い。モップスは1966年結成のバンドで、当初はベンチャーズ系の演奏を軸にしながら、1967年以降はサイケデリック・ムードを前面に出していく。『GS Original Stock 5』は、その流れを後追いで確認する入口として機能する編集内容になっている。
モップスの初期を語るときに外せないのが、洋楽の影響をそのまま吸収した姿勢だ。ジェファーソン・エアプレインやドアーズ、アニマルズなど、当時の英米ロックの要素を日本のGSの文脈に持ち込んだ点が、後年の再評価にもつながっている。派手な装飾よりも、演奏の芯にあるロック感が先に立つバンドで、その点は同世代のGS勢の中でも少し輪郭が違う。
サイケ期からブルースロック期へつながる流れ
モップスは「日本初のサイケデリック・バンド」として語られることが多い。実際には、サイケ色の強い時期だけでなく、その前後の移り変わりに面白さがある。『GS Original Stock 5』のような編集盤で聴くと、単に“サイケなバンド”ではなく、GSの流行に反応しながら、より硬質なロックへ寄っていく過程が見えやすい。
1971年の「月光仮面」は、モップスの代表曲として知られる一曲だ。もともと冗談めいた発想から生まれた曲が、思いがけずヒットにつながったというエピソードもあり、バンドのキャリアの中ではかなり目立つ存在になっている。ほかにも「御意見無用」や「たどりついたらいつも雨ふり」など、GS期のイメージだけでは収まらない楽曲が並ぶ。こうした曲を追うと、モップスが単なる懐古の対象ではなく、70年代前半までしっかり活動を続けたバンドだったことがわかる。
この編集盤の位置づけ
モップスは1974年に解散しているので、『GS Original Stock 5』は活動末期ではなく、むしろその後に過去を整理する形で出てきた編集盤として見るのが自然だ。GSブームの記憶をまとめ、あらためて聴き直すための一枚。オリジナル・アルバムのように時系列でバンドの一時期を閉じ込めるというより、シングルや代表曲を通して、モップスの変化を横断的に見せる構成になっている。
この手の編集盤は、当時の発売時点では“新作”として消費されるというより、過去の楽曲に別の文脈を与える役割を持つことが多い。モップスの場合も、後年になって海外のガレージ/サイケ系コンピレーションで触れられる機会が増え、国内でもGS史の中で改めて見直されていった。その流れの中で、『GS Original Stock 5』はモップスの入口として扱いやすい一枚になっている。
聴こえてくるもの
実際に通して聴くと、曲ごとの温度差がはっきりしている。初期のGSらしい勢い、サイケ期の音像の変化、さらにブルースロック寄りの硬さまで、ひとつのバンドの中に複数の顔がある。録音の雰囲気も時期によって変わり、歌の前にリズム隊やギターの押し出しが先に立つ場面が多い。モップスの魅力は、メロディのわかりやすさだけではなく、演奏の手触りにある。
ザ・モップスという名前をGSの枠だけで覚えていると、この編集盤で見える範囲は少し広くなる。サイケデリックの先駆的な印象、ブルースロックへの接近、そして70年代前半のヒット曲まで、バンドの変遷をひとまとめに眺める感覚。『GS Original Stock 5』は、その変化を無理なくつないでくれる編集盤だ。
トラックリスト
- A1 朝まで待てない
- A2 たどりついたらいつも雨降り
- A3 傘がない
- A4 すずきひろみつの気楽に行こう
- A5 何処へ
- A6 御意見無用
- B1 月光仮面
- B2 大江戸冒険譚
- B3 雨
- B4 あざやかな時代
- B5 迷子列車
- B6 永久運動