Tumblack - Tumblack (1979)
Tumblack『Tumblack』
フランスの電子音楽プロデューサー/アレンジャーであるイヴ・ハイアット(Yves Hayat、後年は現代美術家としても活動)が中心となって結成された短命のスタジオ・プロジェクト、Tumblack(タムブラック)。彼らが1978年にパリのStudios Barclay-Hocheで録音し、翌1979年に名門Barclayからリリースした唯一のフルアルバムが『Tumblack』である。世界的なファッションデザイナーのパコ・ラバンヌ(Paco Rabanne)が深く関与し、パリのモード界とアンダーグラウンドなクラブ・シーンが交差する中で生み出された奇跡的な一枚である。
制作背景・エピソード
本作の成立において最大の推進力となったのが、パコ・ラバンヌであった。ラバンヌの音楽出版社(Editions Paco Rabanne)が出資とバックアップを担い、裏ジャケットの謝辞には「ラバンヌの時間、愛、そして生命エネルギーなしにはタムブラックは生まれ得なかった」と最大限の感謝が記されている。さらに、ル・パレス(Le Palace)やレ・ムーシュ(Les Mouches)、ラ・マン・ブルー(La Main Bleue)といった当時のパリを象徴する伝説的ナイトクラブの名や、カール・ラガーフェルド、ボブ・マーリーらの名前もクレジットに並んでいる。
演奏面には当時のパリ最高峰の精鋭セッション・ミュージシャンが集結した。フレンチ・ディスコの代表格ヴォヤージュ(Voyage)のリズム隊であるソヴール・マリア(ベース)、スリム・ペザン(ギター)、マルク・シャントロー(パーカッション)、ピエール=アラン・ダハン(ドラム)をはじめ、後にコンパス・ポイント・オールスターズ等で活躍する名鍵盤奏者ウォリー・バダルー、さらにフィリップ・セスやコズミック・シンセ・ユニット「ドロイズ(Droids)」のメンバーらが参加。圧倒的なアンサンブルを構築している。
時代の文脈
1970年代後半のパリはディスコ・ブームの爛熟期にあり、先端的なハイモードとナイトクラブのカルチャーが緊密に結びついていた。本作は、フランス領西インド諸島(グアドループやマルティニークなどアンティル諸島)の伝統的な打楽器音楽「グウォカ(Gwo Ka)」に根ざす民族的なパーカッション・ポリリズムと、ヨーロッパ最先端のシンセサイザー/エレクトロニクス、そしてタイトなディスコ・ファンクを大胆に融合。1980年代以降に世界的ブームを巻き起こすカリブ発祥のダンス・ミュージック「ズーク(Zouk)」の黎明を予見した先駆的試みでもあった。
サウンド・聴きどころの評され方
アルバムの骨格をなすのは、グアドループ伝統の「カ・ドラム(Ka Drum)」による怒涛のトライバル・ポリリズムと、ソヴール・マリアによる強靭にうねるファンク・ベースラインのコンビネーションである。フロア・アンセム「Caraïba」では、躍動感あふれるパーカッションの乱打に優美なストリングスとスペーシーなシンセが絡み合い、極上のトロピカル・フュージョンを展開。「Chunga Funk」ではスティール・パン調のトロピカルな響きと太いブギー・グルーヴが交錯し、呪術的なミニマル・パーカッション「Invocation」や「Vaudou」ではルーツのスピリチュアルな深淵を覗かせる。土着的なアフロ・カリビアンの熱気と洗練されたパリのエレクトロニック・サウンドの交差は唯一無二の響きを誇る。
後世への影響
オリジナルLPはプレス枚数の少なさから長年カルト的なレア盤として珍重され、DJハーヴィー(DJ Harvey)、アンタル(Antal)、ヤング・マルコ(Young Marco)といった世界トップクラスのディガー/DJたちの「秘密兵器」としてアンダーグラウンド・ダンスフロアで熱狂的にプレイされ続けた。特にキラー・チューン「Caraïba」はアシュリー・ビートル(Ashley Beedle)らによってリエディットされるなどフロア・クラシックとして定着。海賊盤が横行する事態を経て、2025年にはイギリスのBe With Recordsより初となるオフィシャル・ライセンスのリマスター盤が復刻され、時代を先取りしたアフロ・コズミック/コズミック・ディスコの金字塔として世界的な再評価を決定づけた。
評価・チャート
リリース当時は大規模なコマーシャル・ヒットやメインストリーム・チャートでの上位進出には至らなかったものの、パリのモード界や先進的なクラブ・シーンで強烈なインパクトを残した。今日ではアフロビート、ファンク、ディスコ、アヴァンギャルドが奇跡的なバランスで融合した「ディスコ・ノット・ディスコ」/アフロ・フレンチ・コズミックの最高傑作として、世界中のコレクターやDJからマスターピースと称えられている。
トラックリスト
- A1 Francas 1:36
- A2 Invocation 4:59
- A3 Jubilé 5:54
- A4 Vaudou 4:09
- B1 Parlement 1:40
- B2 Waka 3:10
- B3 Caraïba (Intro) 1:06
- B4 Caraïba 3:47
- B5 Chunga Funk 4:23
- B6 Bateau La Passé 2:11
動画プレイリスト
このアーティストについて
Tumblack(チュンブラック)は、1979年にフランスの名門レーベルBarclayから唯一の同名アルバム『Tumblack』を発表した伝説的スタジオ・プロジェクト...
Tumblack のプロフィール・作品一覧