Vinyl Record Reviews
Andy Stottは、マンチェスターを拠点に活動する英国の電子音楽プロデューサーです。地元レーベルのModern Loveを軸に、2000年代半ばから作品を発表してきました。ジャンル表記はElectronicですが、実際の音楽はAmbient、Experimental、Techno、Bass Music、Grimeなどの要素をまたいでいます。
2006年の1stアルバム『Merciless』、2008年の『Unknown Exception』では、ダブ・テクノ寄りのサウンドを展開していました。この時期は、音の隙間や低音の響きを軸にした作りが目立ちます。制作の土台にテクノがありつつ、ダブの処理や空間の使い方が前面に出ているのが特徴です。
2011年に出た『Passed Me By』と『We Stay Together』の2作で、作風は大きく変わります。ここでは、重く濁ったベース、ダブステップやジュークの影響を取り入れた、ざらついた質感のサウンドへ進みました。こうした方向性は「knackered house」と呼ばれることもあります。従来のダブ・テクノとは違い、リズムや低音の圧を強く感じる作りです。
この2作をまとめたコンピレーションは、音楽誌The Wireの年間ベスト50にも選ばれています。批評面でも、この転換は大きく受け止められました。
2012年の2ndフルアルバム『Luxury Problems』では、さらに路線を押し進めています。この作品では、かつてのピアノの先生であり、長年の共作者でもあるアリソン・スキッドモアをフィーチャーしました。彼女はオペラ出身のシンガーで、無機質で重たいプロダクションの上に、はっきりした歌声を重ねています。
この対比が作品の軸になり、Resident AdvisorやPitchforkで年間ベストアルバムに選出されました。Andy Stottの名前が広く知られるきっかけになった作品のひとつです。
以降も、実験性と重量感を両立させたアルバムを継続して発表しています。2014年の『Faith in Strangers』、2021年の『Never the Right Time』でも、音の密度や低音の扱い、空間の作り方にこだわった制作が続いています。