Vinyl Record Reviews
Ant Trip Ceremonyは、アメリカ・オハイオ州のオーバリン・カレッジで結成されたサイケデリック・ロック・バンドだ。メンバーはJeff Williams、Mark Stein、George Galt、Steve DeTray、Roger Goodman、Gary Rosenの6人で、1967年から68年の学年のあいだに活動していた。
バンドは、卒業してそれぞれ別の道に進む前の記録として、1968年春にLPを1枚だけ残した。録音はキャンパス内で行われ、マスタリングはCleveland Recordingで実施された。プレス枚数は300枚で、大学の書店などで手売りされた。
「Ant Trip Ceremony」という名前は、地元の英文学教授が現代社会を描いた小説の中で見つけた言葉を提案したことに由来する。ライブでは長時間の即興演奏を行い、観客もその場の流れに参加する形だったと伝えられている。
地域では、グレイトフル・デッドに近い存在として見られていたという話もある。実際、決まった曲を並べるだけでなく、演奏の場で展開を広げていくタイプのバンドだったようだ。
Ant Trip Ceremonyが残した唯一のアルバムは『24 Hours』だ。1968年初頭に300枚のみプレスされたこの作品は、2月のセッションと、Steve DeTrayが大学を去った数か月後のセッションという、2回の録音で構成されている。
プロデュースは、オーバリン大学の学生でバンドと親交のあったDavid Crosbyが担当した。ここでいうDavid Crosbyは、同名の有名ミュージシャンとは別人だ。アルバムにはオリジナル曲に加えてカバー曲も含まれている。
音の軸には、サイケデリック・ロックらしい即興性がある一方で、曲の土台にはロックンロールやブルースの経験が見える。プロフィールにもある通り、メンバーはそれ以前にロックやブルース系のバンドで演奏していたため、サンフランシスコ周辺のサイケ・バンドからの影響を受けつつも、演奏の芯はかなりロック寄りだ。
ライブでの長い即興演奏、キャンパス内での録音、少数プレスの自主的な流通という流れを見ると、当時の学生バンドらしい動き方がはっきりしている。作品としても、完成された商業盤というより、活動の記録としての性格が強い。
『24 Hours』は長く入手困難な作品として扱われ、海賊盤まで出回った。のちにCollectablesレーベルから正規再発され、オリジナル盤とは異なる曲順で聴けるようになった。
オリジナル盤が極端に少ないこともあり、このアルバムはコレクターズ・アイテムとして知られている。再発によって、当時の学生バンドが残した記録を比較的聴きやすい形でたどれるようになった。
Ant Trip Ceremonyは、大学のキャンパスから生まれたサイケデリック・ロック・バンドとして、短い活動期間の中で1枚のアルバムを残した。録音の条件や流通の規模まで含めて、1960年代末の学生バンドの動きをそのまま示す存在だ。