Ant Trip Ceremony - 24 Hours (1968)
Ant Trip Ceremony 1968

Ant Trip Ceremony - 24 Hours (1968)

Rock Psychedelic Rock

Ant Trip Ceremony『24 Hours』――オハイオの学生バンドが残した1968年のサイケデリック・ドキュメント

Ant Trip Ceremonyの『24 Hours』は、1968年に米国で自主制作されたアルバムである。オハイオ州オーバリンのオーバリン・カレッジで結成されたバンドが、卒業前の学校生活の記録として残した1枚で、のちの大きな活動へつながる作品というより、その時点の空気を封じ込めた作品として位置づけられる。メンバーはJeff Williams、Mark Stein、George Galt、Steve DeTray、Roger Goodman、Gary Rosen。学生バンドらしい身軽さと、60年代後半の米国ロックの熱気がそのまま入った内容である。

音楽性はサイケデリック・ロックを軸にしつつ、いかにも西海岸のサイケ・バンド一辺倒というより、ロックンロールやブルースの土台がはっきり見える。アーティスト資料でも、メンバー各自が以前からロックやブルース系のバンド経験を持っていたことが示されている。そうした背景があるため、曲によってはサイケデリックな音像の中にも、演奏の芯が崩れすぎない。1968年という年を考えると、同時代のSan Francisco系サイケデリアと比較されやすいが、この作品は大学内で録音され、少数プレスで流通したという点も含め、かなりローカルな現場感が強い。

録音はキャンパスで行われ、マスタリングはCleveland Recordingで施された。プレス枚数は300枚で、大学のブックストアや手売りで販売されたという。大規模な流通を前提にしていないため、アルバム全体にも「完成品を市場に出す」というより「今の自分たちを残す」という意識が感じられる。演奏や音作りには、当時の学生バンドらしい勢いがありつつ、曲ごとの手触りは意外に整理されている。

アルバム全体の印象

『24 Hours』は、派手なヒット曲を中心に組み立てられた作品ではない。むしろ、オリジナル曲とカバーを交えながら、バンドの幅を見せる構成である。サイケデリック・ロックの作品として聴くと、音の揺れや展開の読めなさが前に出る場面がある一方で、リズムやコード進行には古いロックンロールの感覚が残る。そこがこの盤の面白さで、単に実験的なだけの作品ではなく、演奏の基礎があるからこそ、サイケデリックな処理にも説得力が出ている。

また、この作品はバンドにとっての最終的な記録に近い性格を持つ。学校が終わる前に録音し、メンバーがそれぞれ別の道へ進む直前にLPとしてまとめたという経緯から、アルバム全体に区切りの感触がある。作品のまとまりというより、当時のバンドの輪郭を残した文書のような存在である。

注目曲について

収録曲の中では、オリジナル曲がこのバンドの個性を見せる部分になっている。特に、演奏が前に進むタイプの曲では、ロックンロール由来の推進力に、サイケデリックな音処理が重なる。ギターのフレーズが単に空間を広げるだけでなく、曲の骨格を押し出す形で機能しているのが特徴的である。学生バンドの自主制作盤でありながら、単なるデモの延長ではなく、1曲ごとの展開をきちんと組み立てている印象が残る。

カバー曲では、バンドがどんな音楽を吸収していたかが見えやすい。オリジナル曲ほど極端な展開に振らず、元の楽曲の輪郭を保ちながら、自分たちの演奏に置き換えている。こうした曲では、当時のロック・バンドが共有していたレパートリー感覚がそのまま出ていて、サイケデリック・ロックの作品でありながら、ライブ感のある演奏記録としても読める。アルバムの中で異なる性格の曲が並ぶことで、バンドの背景がより立体的に見えてくる。

同時代の文脈と位置づけ

1968年の米国ロックは、サイケデリック・ロックが広く浸透しつつ、ブルースやガレージの感触を残したバンドも多かった時期である。Ant Trip Ceremonyもその流れの中に置けるが、メジャー・シーンの洗練より、大学という環境の中で生まれた即時性が強い。オーバリン・カレッジという場所、学生たちによる自主制作、少数プレスという条件が重なって、結果としてかなり限定的な流通の作品になっている。

そのため『24 Hours』は、同時代の有名サイケデリック・バンドと並べて語るより、60年代末のローカルな学生シーン、あるいは自主制作ロックの一例として見ると輪郭がつかみやすい。大きな成功作ではないが、1968年という時代の空気と、若い演奏者たちの手触りがそのまま残った記録として、今でも十分に具体性のある1枚である。

トラックリスト

  1. A1 Locomotive Lamp 3:50
  2. A2 What's The Matter Now 2:45
  3. A3 Violets Of Dawn 4:34
  4. A4 Riverdawn 3:38
  5. A5 Hey Joe 4:20
  6. A6 Outskirts 1:39
  7. A7 Little Baby 3:03
  8. B1 Get Out Of My Life 3:05
  9. B2 Four In The Morning 4:30
  10. B3 Sometimes I Wonder 3:53
  11. B4 Pale Shades Of Gray 4:30
  12. B5 Elaborations 7:20

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