Vinyl Record Reviews
Augustus Pabloは、ジャマイカ出身のレゲエ・ミュージシャン、プロデューサー、レーベルオーナーだ。1954年6月21日にジャマイカのセント・アンドリューに生まれ、1999年5月18日にキングストンで亡くなっている。
鍵盤楽器やメロディカを演奏し、レゲエにおけるメロディカの使用を広く知らしめた人物として紹介されることが多い。ピアノ、オルガン、クラリネット、シロフォンを学んでおり、その楽器経験がそのまま音作りに反映されている。
初期の録音では、Horace Swabyとして活動を始め、のちにAugustus Pabloの名を使うようになった。これは、彼が最初に関わった録音で、B面クレジットに同じ名義が使われていたことに由来する。
その後、この名前をそのまま自身の活動名として使い続けた。ジャマイカのレゲエ史では、こうした名義の使い方も含めて彼のキャリアが語られている。
Augustus Pabloの音楽は、マイナーキーのメロディカと、深いリバーブやエコー処理を組み合わせたサウンドで知られている。通称「Far East(極東)サウンド」と呼ばれるこの音作りは、彼の代表的な特徴として扱われている。
60年代のスカやインストゥルメンタルの演奏者であるDon Drummond、Jackie Mittoo、Dizzy Moore、Tommy McCookらを敬愛し、そこにアフリカやアジアの音楽要素を取り入れて独自の方向性を作っていったとされる。音の設計には、Clive Chin、Leonard Chin、Herman Chin Loyら周辺のプロデューサーも関わっていた。
Augustus Pabloの活動で重要なのが、ダブの発展への関与だ。特にKing Tubbyとの共同名義作「King Tubbys Meets Rockers Uptown」(1976年)はよく知られている。
この作品の表題曲は、Jacob Miller「Baby I Love You So」のダブ・バージョンで、ダブという手法の代表的な例として挙げられることが多い。2024年にはMojo誌の「歴代最高のレゲエ・アルバム50選」で第2位に選ばれている。
Augustus Pabloは演奏だけでなく、プロデューサー、レーベルオーナーとしても活動した。兄のGarth Swabyとともに「Rockers Hi-Fi」サウンドシステムを運営し、複数のレーベルに関わっている。
1974年には、兄と友人のMickoが所有する「Rockers international record shop」を135 Orange Streetに開店した。現場でレコードを扱いながら、自身の制作や流通にも関わっていたことがわかる。
Augustus Pabloは、レゲエにおけるメロディカの定着に加えて、ダブの発展にも大きく関わった人物として見られている。彼の演奏とプロダクションは、ジャマイカ音楽の中でもかなり個性の強い位置を占めている。
「Far East」サウンドや「King Tubbys Meets Rockers Uptown」は、今もレゲエやダブの文脈で参照されている。作品単位で見ても、彼の仕事がジャンルの中で繰り返し取り上げられているのがわかる。
Augustus Pabloの音楽をたどると、演奏家としての個性と、プロデューサーとしての判断がかなり近いところで結びついているのが見えてくる。レゲエの中でも、楽器の音色と録音処理の両方で存在感を残した人物だ。